相続方法

相続方法

 ■単純承認

 ■限定承認

 ■相続放棄

 ■事実上の相続放棄

 ■熟慮期間の伸長

 ■期間経過後の相続放棄

 ■相続放棄・限定承認後の背信的行為

 相続人廃除

 ■相続欠格

相続財産

 ●貸付信託受益証券の評価

 ③市街地周辺農地

相続方法

相続方法には、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類の方法があります。

相続財産が債務超過にある場合、相続人がその債務を免れるための方法は、①相続はするが相続人の義務は相続によって得た財産の限度で負担し、相続人自身の個人財産で弁済する責任は負わない限定承認という方法と、②相続放棄をして一切の権利義務を承認せず、相続人としての地位から離脱する方法があります。

相続人になったことを知った時から3ヶ月以内(熟慮期間)に限定承認も相続放棄もしなかった場合は、単純承認したものとみなされます(法定単純承認)。

単純承認

 プラスの財産もマイナスの財産も全て引き継ぐものです。マイナス財産の方が多い場合には、相続人は債務を返済していくことになります。

 基本的には何もしなければ単純承認となりますが、以下の行為を行うと単純承認とみなされます。

 1.相続人が、相続財産の全部または一部を処分したとき

  ・被相続人名義の不動産を相続人名義に変更したとき

  ただし、以下の行為は相続財産の処分には当たりません。

  ・葬儀費用を相続財産から支払った場合

 2.相続人が、限定承認、または相続放棄をした後であっても、相続財産の全部、または一部を隠匿したり、消費したり、意図して財産目録に記載しなかったとき

 3.3ヶ月の期間内に限定承認も相続放棄もしなかったとき

●相続財産の処分にはあたらない行為

 ・民法602条に定める期間を超えない賃貸

  1.樹木の彩植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年

  2.前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年

  3.建物の賃貸借 3年

  4.動産の賃貸借 6ヶ月

 ・遺体自体や身の回りの品、僅少な金銭の受領

 ・遺産から葬儀費用や火葬費用、治療費の支払い

 ・墓石、仏壇の購入

 ・相続人が相続財産の全部または一部を処分したときであっても、それが「保存行為」に該当する場合には、法定単純承認の効果を生じさせる「処分行為」には該当しません。また、遺産による相殺や期限到来債務の弁済についても、保存行為であり相続財産の処分には当たらないと判断されることが多いでしょう。

 ・失火や過失で、家屋や美術品を壊してしまった場合

 ・交換価値のない物の形見分け

 ・死亡保険金による被相続人の債務弁済

■限定承認

 相続人が遺産を相続するときに相続財産を責任の限度として相続することです。相続財産で負債を弁済した後、余りがあればそれを相続できます。この方法は、マイナスの財産(負債)の金額がプラスの財産より明らかに多い場合や、負債が残っている可能性がある場合などに有効です。

 限定承認をするには、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に、相続人全員で、被相続人の住所地の家庭裁判所に申し立てる必要があります。

 相続人のうち相続放棄をした人がいても、その人以外の相続人が同意すれば限定承認の申し立てができます。

 相続を承認するか限定承認の手続をとるか判断に困るというときには、あらかじめ家庭裁判所に申し立てて、手続きの期限を延ばしてもらうこともできます。

●限定承認の申し立て手続きの流れ

 家庭裁判所(※1)へ限定承認を申し立てた場合、手続きの流れは次のようになります。

   ※1:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

 ①相続人になったことを知った日から3ヶ月以内に必要書類(申述書、相続人全員の戸籍謄本、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、住民票の除票、財産目録等)を揃えて家庭裁判所に「限定承認」の申し立てを行います。

3ヶ月以内に限定承認をすべきかどうか判断ができそうにないときには、期限内にその旨を家庭裁判所に申し立てることで期限を延長することができます。

 ②共同相続の場合、家庭裁判所は職権で相続人の中から相続財産管理人を選任します。共同相続人が相続財産管理人を選んでいる場合には、選任希望の上申書を申述の段階で提出しておくか、家庭裁判所からの照会に対する回答の段階でその旨を伝えることになります。

 ③限定承認後5日以内にすべての相続債権者に対し、限定承認をしたこと及び2ヶ月を下らない一定の期間内にその請求の申し出をすべき旨の官報公告を行います。相続財産管理人の場合は、10日以内に官報公告をします。官報公告の期間は、2ヶ月以上です。

 ④期間満了後に相続財産をもって、当該期間内に申し出をした相続債権者その他知れている相続債権者に対して配当弁済を行います。

相続財産を売却して現金化する場合は、原則として競売による必要があります。

限定承認をした相続人が相続財産の競売をのぞまずに自分で承継することを希望した場合、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に基づき、相続人がその財産の価額を支払うことで、競売をせずに相続人が自分で引き取ることも可能です。

 ⑤債務の方が多い時には、債権額に比例した割合で債務を弁済し、財産が残った場合には遺産分割協議を行います。

限定承認を行うと、税法上は被相続人から相続人に対する譲渡とみなされ、準確定申告が必要となります。

■相続放棄

被相続人の負債が多い場合や、家業の経営を安定させるために後継者以外のものが相続を辞退するときなどに使われます。

相続の開始前の放棄は、強要等を防止するため、できないことになっています。遺留分については、相続開始前の放棄も可能となっています。

相続の放棄をするには、相続開始を知った日から3ヶ月以内(熟慮期間)に意思を決定し、非相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。裁判所に認められれば、「相続放棄申述受理通知書」が交付されます。

相続を放棄したことを債権者に証明するためには、「相続放棄申述受理証明書」を取得し、その写しを債権者に送付します。

相続人が例え遺産分割協議や、相続人の間で相続放棄すると言ったり、合意していたとしても、法的な効力はなく、その相続人は単純承認したとみなされますので、もしもマイナスの財産が多かった場合は、法定相続分については債務の負担義務が生じますので、財産を一切相続する意思がない場合は、必ず家庭裁判所に相続放棄申述書を提出してください。

相続放棄があった場合には、その放棄をした相続人は最初から相続人でなかったとみなされますので、相続放棄者の子や孫に代襲相続は行われず、遺産は、残った相続人で分割することになります。

先順位のものが放棄したことにより、自己が相続人となった場合の放棄ができる期間は「先順位の者全員が相続放棄したことにより事故が相続人になったことを知ったとき」が3ヶ月の起算日になります。

何らかの手続きをとらずに3ヶ月を過ぎてしまうと、プラス財産とマイナス財産の全てを相続する「単純承認」をしたことになり、マイナス財産がプラス財産よりも多い場合には、債務を返済する義務を引き継ぎます。

葬儀費用を相続財産から支払った場合は、単純承認とはなりません。

相続財産に債務が多い場合には、相続放棄または限定承認(プラスの財産を上限にマイナスの財産を引き継ぐ)を家庭裁判所に申し立てます。

3ヶ月以内に相続放棄をするかどうか決めることができない特別の事情がある場合は、家庭裁判所に、「相続放棄のための申述期間延長」を申請することにより、この3ヶ月の期間を延長してもらえる場合があります。1回の申立により3〜6ヶ月間、期間を延長することができますが、この申し立ては3ヵ月が経過する前に行う必要があります。

●未成年者の相続放棄

 相続人が未成年の場合は、法定代理人(親権者等)がその子に代わって、相続放棄の申述をすることになります。両親がともに健在である場合は、二人揃って法定代理人となり相続放棄手続きもその二人が行うことになります。

 親と未成年の子が相続人で、未成年の子の相続放棄の申述を親が法定代理人として申述する場合、親自身も放棄する場合は問題ありませんが、未成年の子だけが放棄するときは、相続について親と子の利害が対立する(利益相反行為)ことになりますので、家庭裁判所に申し立てて、子の特別代理人を選任してもらう必要があります。選任された特別代理人は、未成年者の利益を考え相続放棄をするかどうかを判断します。

熟慮期間について、未成年者の場合は、法定代理人が相続の開始を知った時からスタートします。

■事実上の相続放棄

 相続人は、相続放棄の手続きをとらなくても、自分に帰属した財産・権利を放棄することは可能です。これを、「事実上の相続放棄」といいます。

1.遺産分割協議において、分割の合意をし、一部の相続人に遺産を集中する。

 遺産分割協議書での取り決めは相続人間では有効ですが、相続債権者はそれに従う必要はありませんので、家庭裁判所での相続放棄手続きをしない限りは、債務の支払い義務から逃れることはできません。

 法定相続分相当の分割債務を免れるためには、債権者の同意が必要です。

2.相続放棄契約

 被相続人が死亡する前に、相続人間で交わす。

3.特別受益証明書(相続分なきことの証明書)の作成

 生前に相続分を超える贈与を受けていた場合に、相続分がないことの証明書を作成する。

 主に相続登記において、共同相続人のうちの1人に不動産を取得させる場合に、他の相続人が署名捺印して提出することが登記実務の上で認められています。

 「相続すべき相続分がないこと」が書かれていれば足り、生前贈与などを受けた財産の内容を書く必要はありません。

 ただし、この証明書は相続放棄を証明するものではありませんので、貰い受けるプラス財産はなくても、マイナス財産は相続しなければならないといったケースも出てくるので、負債は絶対に負いたくないという人は、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行う必要があります。

 特別受益証明書は、被相続人の生前に作成したものでも法律的に有効です。

4.相続分を譲渡する。

■熟慮期間の伸長

 相続財産の状態が複雑で調査に日数が必要な場合には、利害関係人または検察官は相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所に対して「相続の承認・放棄の期間伸長の申し立て」をすることができます。

この申し立ても相続放棄と同じく、相続開始後3ヶ月以内に申し立てをすることが必要です。

相続人が複数いる場合には、熟慮期間は相続人ごとに進行しますので、期間の伸長は相続人ごとに行う必要があります。

 利害関係人には、相続人の他、相続債権者(被相続人に対する債権者)、受遺者、相続人の債権者、次順位の相続人などが含まれています。相続人は、自分自身の熟慮期間の伸長だけでなく、他の相続人の熟慮期間の伸長を求めることもできます。

家庭裁判所は裁量により伸長期間を決定します。状況によっては複数回の伸長も可能です。

●必要書類

 ・相続の承認・放棄の期間伸長審判申立書

 ・申立人の戸籍謄本

 ・被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)

 ・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票

 ・申立人の利害関係を証する資料(親族が申し立てる場合は戸籍謄本など)

 ・収入印紙(期間伸長の申し立てをする相続人1人につき800円)

 ・郵便切手(80円×4枚、10円×8枚)

■期間経過後の相続放棄

 特別な事情がある場合には、相続開始の原因である事実、および自分が法律上の相続人となった事実を知った時から3ヶ月経過した後からでも、相続放棄の申述ができることがあります。

 「特別な事情」の例

 被相続人が借金をしていたり、第三者の借金の保証人になっていた場合で、相続人がその事実を知らず、被相続人の死亡後に債権者から送られてきた督促状などによって、相続人が初めて借金等の存在を知ったとき。

「特別な事情」のポイント

 ・被相続人に相続財産が全く存在しないと信じていたこと

 ・被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて、相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があること

 ・その事実を知ることに正当な理由が相続人にあったこと

特別な事情がある場合は、相続財産の全部または一部の存在を認識した時から熟慮期間が開始します。

債権者から負債に関する通知が届いた場合には、放置せずに、相続放棄の申請をするようにしてください。

■相続放棄・限定承認後の背信的行為

 民法921条(3)で、「相続人が、限定承認または相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときは、相続人は、単純承認をしたものとみなす。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となったものが相続の承認をした後は、この限りでない。」と定めています。

「消費」とは、債権者の利益を害することを承知の上で、相続財産を消費した場合を指します。

■相続人廃除

 被相続人から見てその人に相続させたくないと思うような非行があり、その人に相続させたくない場合に、被相続人の請求によって家庭裁判所が審判または調停によって相続権を剥奪する制度です(民法892条)。

相続人の廃除については、被相続人が生前に、家庭裁判所に対して請求する方法と、遺言書に特定の相続人を廃除したいという意思を記しておくという方法があります。

廃除の対象者は遺留分が認められている被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に限られます

廃除の対象者に子供がいる場合には、その子供に相続権が移行されます

相続人欠如や相続人排除の制度は存在しますが、家庭裁判所にその理由が認められて相続権を剥奪されるケースは少ないようです。

【廃除が認められるための要件】

 廃除が認められるのは、遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待・重大な侮辱を加えたとき、または推定相続人にその他の著しい非行があった時です。

【推定相続人廃除の効果】

 廃除の効果は、被廃排除者の相続権・遺留分権を剥奪することです。

廃除を認容する審判の結果は、戸籍に記載されます。

【廃除の取り消しとその方法】

 廃除が確定した後であっても、被相続人は相続廃除の取り消しをすることができます。

家庭裁判所に請求するか、遺言書によっていつでも廃除を取り消すことができます。

■相続欠格

 推定相続人でも、法に触れる行為があると、相続人にはなれません。

相続欠格になる事由は以下の5つです。

【相続欠格事由】

 ①故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

 ②被相続人が殺害されたのを知って告発や告訴を行わなわなかった者

 ③詐欺・強迫による偽造や遺言の取り消し・変更を妨げたりした者

 ④詐欺または強迫によって、被相続人に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

 ⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

【相続欠格の効果】

 相続の欠格事由に該当する場合、直ちに欠格の効果は発生し、その被相続人との相続資格を失います。

ただし、欠格者に直系卑属である子がいる場合には、その子が欠格者に代わって代襲相続することになります。

父親を殺害したために欠格者となった子は、父母が婚姻している限り母親の相続に関しても欠格者となります。

欠格の効果が発生するためには、他の相続人や受遺者などからの主張、あるいは裁判所での手続きは不要で、法律上当然にその効果を生じます。

相続開始前に欠格事由が生じた場合には、その時に相続資格を失います。相続開始後に欠格事由が発覚した場合には、相続開始の時に遡及して相続資格を失います。

すでに、遺産分割を済ませている場合には、他の相続人はその欠格者に対して相続回復請求をすることになります。

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