当事務所のサポート体制

当事務所のサポート体制

相続手続きを滞りなく進めるためには、専門家にサポートしてもらうほうが無難です。

当事務所は、弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、社会保険労務士などと、パートナーシップを結んでいますので、相続に関するどのような難題があったとしても、より確実に業務を遂行します。ご心配は無用です。

サポートのご案内

■相続人調査

 金融機関の手続きや、不動産の名義変更を行う法務局には、相続人であることを証明できるものを提出しなければ、手続きを行うことはできません。法定相続人が誰になるのかを調査し、公的書類により証明しなくてはなりません。

相続人調査のためには、被相続人の出生から死亡に至るまでの身分関係を網羅する戸籍謄本類及び相続人の戸籍謄本をすべて入手する必要があります。

法定相続人

 配偶者  常に相続人
 子(第1順位)  配偶者と共に相続人
 直系尊属(第2順位)  子がいないときのみ相続人
 兄弟姉妹(第3順位)  子もしくは直系尊属がいないときのみ相続人

子は、実子であっても養子であっても、相続権に差はありません。

■相続財産の調査
 相続が起きたときは、相続財産を調査する必要があります。
相続財産にはプラスのものだけでなく、マイナスの財産もあります。どちらも漏れがないように調査をしなければなりません。

●不動産
 毎年(5月前後)届けられる固定資産税の納税通知書が参考になります。
市町村役場で名寄帳(課税明細書)を取得すれば、所有する不動産の全てが把握できます。
法務局で登記事項証明書を取得すれば、借り入れ関係を調べることができます。

●預貯金
 個人名義の預金通帳をさがします。もしも預金通帳が見つからないような場合は、利用していた可能性
のある金融機関に、被相続人の口座の有無を確認する必要があります。

故人の通帳があれば、当該銀行に預金残高証明と取引履歴を発行してもらいます。
引き落としされている内容から、保険の加入状況、株や債券の保有、借入、ローンなどの内容がわかります。

●株券等の有価証券
 郵便物や預金通帳の入出金記録から取引証券会社を特定します。

●郵便物

相続制度の変遷

相続制度の変遷

1.旧民法
 明治31年7月16日に施行された。
 昭和22年5月2日以前に開始した相続に適用。
 戦前の旧民法では法定家督相続人になるのは被相続人の戸籍にいた男子が優先されました(嫡出長男子単独相続の原則)。そしてその男子のうちでも年長者を優先順位者としました。子供に男子がいない場合は、女子が戸主となりました。

 戸籍の提出をもとに、現戸主が生きている間から次の代へ相続させる、隠居制度も存在しました。
2.日本国憲法の施行に伴う応急措置に関する法律
 太平洋戦争に敗戦した後、昭和22年に旧来の制度は変更されました。
 昭和22年5月3日(現日本国憲法が施行)から昭和22年12月31日の間に開始した相続に適用
 ・家督相続の廃止
3.新民法
 昭和23年1月1日から現行民法が施行されました。
 ・配偶者相続権の強化
 ・長子単独相続制から諸子均分相続制へ
 ・祭祀財産の相続財産からの分離
4.昭和37年7月1日以後に開始の相続(一部改正)
 ・特別失踪の期間短縮(3年から1年へ)
 ・同時死亡の推定の新設
 ・相続放棄を代襲原因から排除
 ・再代襲相続を明記
 ・同時存在の原則の廃止
 ・相続権を直系卑属から子に変更(孫以下は代襲相続)
 ・限定承認・放棄の取り消し方法の明記
 ・特別縁故者制度の新設
5.昭和56年1月1日以後に開始の相続(一部改正)
 ・配偶者の相続分の引き上げ
 ・兄弟姉妹の再代襲相続の制限
 ・寄与分制度の新設(904条の2)
 ・遺産分割基準の明確化
 ・配偶者の遺留分割合の引き上げ

その後も昭和55年、平成11年、平成16年、平成25年に一部改正が行われています。

相続開始の原因

相続開始の原因
 1.自然死亡
 2.認定死亡
  水難、火災その他の事変によって、生死が不明である場合に、その取り調べに当たった官庁又は公署(海上保安庁、警察署長など)が、その旨を死亡地の市町村長に報告をし、戸籍法の定めによって、戸籍に死亡の旨が記載されるもの
  この場合、正確な死亡時刻は分からないため、戸籍には「推定午前○時」などと記載されます。
3.失踪宣告
 失踪宣告とは、一定期間、生死不明の者がいる場合、家庭裁判所に失踪宣告の審判を申し立て、公示催告の手続きを経た後、審判で認容された時に、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
公示催告は、家庭裁判所の掲示板に掲示し、官報に掲載します。公示催告期間は、普通失踪の場合で6ヶ月以上、特別失踪の場合は2ヶ月以上です。
失踪宣告があると相続が開始し、婚姻関係の解消、死亡保険金の受け取りも行われます。
 申立人は、不在者の配偶者・相続人にあたる者・財産管理人・受遺者・保険金の受取人など、失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者です。
 ・普通失踪:7年間の失踪期間の満了の時(7年間の起算時は、不在者の生存が最後に確認された時です)。
  離婚を望む場合は、7年待たなくても行方不明となってから3年が経過すれば、一方的に離婚をする
ことができます。

  失踪より7年経過後が「死亡日」となるので、失踪宣告を受けるまでは契約が失効することがないよう、保険料の払込を続ける必要があります。
 ・特別失踪(危難失踪):戦争、船舶の沈没、震災、火災、洪水などの危難にあった場合で、危難が去って1年間生死が明らかでない場合で、その危難の去った時に遡って死亡したものとみなされます。
 相続人が被相続人の死亡を知らなくても相続は開始し、被相続人が死亡した時に存在している者が相続人となります(同時存在の原則)。

■失踪宣告と認定死亡
 失踪宣告は民法の制度で、認定死亡は戸籍法の制度です。
 失踪宣告も認定死亡も死亡として取り扱うという点では同じですが、失踪宣告の場合には死亡したものと「みなす」ものであるのに対し、認定死亡の場合は死亡を「推認する」ことになります。
「みなす」という場合には、反対の証拠を挙げただけでは覆すことはできませんが、「推定する」という場合には、反対の証拠を挙げれば推定を覆すことができます。つまり、認定死亡の場合は、生存の事実だけで、効果が消滅し、戸籍は訂正されます。
 認定死亡は、取り調べにあたった官公署(警察、消防、海上保安庁等)が、死亡したと認定して死亡地の市町村に報告をし、報告を受けて戸籍簿に死亡の記載がされます。

■失踪宣告の取り消し
 失踪者が、生存していること、または失踪宣告による死亡時とは異なる時に死亡(異時死亡)したことが明らかになった場合、本人または利害関係人が、家庭裁判所に対して失踪宣告の取り消しを申し立てて、取り消しの決定を受ける必要があります。
異時死亡の立証の場合には、失踪宣告で死亡したとみなされた時期とは異なる時期に死亡したことを立証すればたり、実際の死亡時期まで立証する必要はありません。
 ○取り消しの効果(失踪者の死亡に伴う効果は初めから生じなかったことになる:遡及効)
  ・財産関係や身分関係が元通りに復活する(婚姻は解消しなかったことになる)。
  ・失踪宣告を原因として開始した相続により取得した財産は、原則として返還しなければならない。
ただし、失踪宣告の取り消しは宣告後・取り消し前に「善意でした行為」の効力には影響しません。失踪宣告を信じた人が既に財産を消費していた場合などは返還しなくてもよいことになり、失踪宣告により直接的に財産を得た者(相続人、財産を遺贈された者、生命保険金の受取人など)は、失踪宣告の取り消しにより財産を失う場合でも、その利益が残っている限度(現存利益)で失踪者に返還すればよいとされます。
失踪宣告が事実と異なることを知っている取得者(悪意の受益者)については全部の返還義務を負います。
ここでいう善意については、行為の当事者双方が善意であることが要求されます。
再婚している場合は、失踪宣告後に再婚した当事者双方がともに失踪者が生存していることを知らなかったときは、失踪宣告が取り消されても前の婚姻関係は復活しないとされています。 

■失踪宣告の申し立て手続き
 ●申立人の選定
  利害関係人(不在者の配偶者、相続人にあたる者、財産管理人、受遺者など失踪宣告がされることについて法律上の利害関係を有する人)

 ●申立先
  不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所
  申し立てがなされると、家庭裁判所は調査を行った上で、当該不在者について失踪宣告の申し立てがあったこと、不在者及び不在者の生死を知る者は3ヶ月の期間内に申し出ること等を、家庭裁判所の掲示板及び官報に掲載して広告(公示催告)します。

●必要書類等
 ①家事審判申立書(失踪宣告)
 ②不在者の戸籍謄本
 ③不在者の戸籍附票
 ④失踪を証する資料(警察署長の発行する家出人届出受理証明書、返送された不在者宛の手紙など)
 ⑤申立人の利害関係を証する資料(親族の場合には戸籍謄本)

●申し立てに必要な費用
 ①収入印紙800円
 ②郵便切手
 ③官報公告料
  ※費用については、念のため申請前に裁判所に問い合わせて確認してください。
 ・生存の申し出等がないまま公告期間が満了すると、家庭裁判所は不在者について失踪宣告を行います。 
 ・失踪宣告の審判が確定したときは、裁判所書記官は遅滞なくその旨を広告し、失踪者の本籍地の市町村長に対して通知します。
 ・失踪宣告の審判が確定すると、その事実を戸籍に反映させるために、失踪宣告の申立人は審判確定の日から10日以内に失踪届とともに審判書謄本、確定証明書を、不在者の本籍地または申立人住所地の市町村長へ提出しなければなりません。

■失踪宣告と生命保険
 失踪宣告を受けると、法律上は死亡したのと同じ取り扱いになりますので、生命保険の支払事由にあたります。

■高齢者消除
 100歳以上の高齢者について、生存の見込みがなく、既に死亡していると認められる場合に行う死亡の職権記載、すなわち戸籍の職権消除のことを高齢者消除といいます。
管轄法務局の事実調査の結果による許可で、市町村長が職権で死亡の記載をする制度です。
この制度はあくまでも行政上の便宜的措置であるため、相続の開始原因にはなりません。相続手続きを行うには、親族等からの死亡届または失踪宣告が必要です。

遺言

遺言 

■遺言書を残したいケース
遺言書を残すメリット
■公正証書遺言
■自筆証書遺言
自筆証書遺言の保管制度
秘密証書遺言
■法定遺言事項
■エンディングノート

相続手続き代行1−2

■遺言の執行
■遺産分割の方法
遺言書と遺留分

■遺言書を残したいケース
①相続人が一人もいない場合
 相続人が一人もいない場合は、遺産は国庫に帰属します。それを望まないのであれば、遺言者がせわになった人などに与えるなどの遺言書を作成しておく必要があります。
②子供がいない場合
 配偶者に全財産を与えるという遺言を残していなければ、故人の親や兄弟姉妹が相続人になります。「全財産を妻○○に与える」という遺言をしておけば、兄弟姉妹には遺留分がないので、すべての財産は妻のものになります。
③不動産がある場合
 住んでいる家が妻と兄弟の共有になると、売却すれば、妻が住み慣れた家を出なければいけないような事態が発生します。この場合、遺言により妻の持分を多くしたり、親の面倒を見ている長男の相続分を多く与えることで、その後の生活の安定を図ることができます。
④相続人同士が不仲の場合
⑤家業を存続させたい場合
 個人で事業をしている場合、その営業上の財産は法律上も個人の財産です。したがって相続の対象になり、それらが法定相続分により資産が分散してしまい、事業承継が不可能な事態になる恐れがあります。そのような事態に備えて、後継者に事業場の財産を相続させる旨の遺言が有効です。
⑥現在別居中で事実上の離婚状態にある配偶者がいる場合
 離婚成立前に被相続人が他界すれば、離婚係争中の妻が、法定相続分として1/2の相続ができるようになります。遺言で相続分を書き残せば、遺留分だけの相続になります。
⑦法定相続人以外の人に遺産をあげたい場合
 ・遺言者の内縁の妻(又は夫)
  事実婚の場合はどんなに長く一緒に暮らしていても法定相続人になることはできません。相続させるには遺言が必要になります。
 ・家族に内緒で認知した子
 ・未認知の子
  生前に認知できなかった事情があっても、遺言によって認知することができます。
 ・遺言者の看病をしてくれた長男の嫁
 ・お世話になったヘルパーや近所の人
⑧再婚している場合
⑨病気で独身の子供がいる場合
 複数の子供の中に病気や障害者の子供がいる場合は、相続分を他の子供より増やすことによって、その子の将来の生活を支えることになります。
⑩先妻の子と後妻の子がいる場合
 どちらの子も、同等の相続権を持ちます。ただし、後妻の死亡時には、先妻の子には相続権がありません。先妻の子供のことを考えて、遺言で相続分を決めておくことができます。
⑪素行の悪い相続人の相続分を少なくしたい場合
⑫市区町村役場や世話になった福祉施設、宗教団体などに財産を寄付したい場合
⑬相続人に行方不明者がいる場合

遺言書を残すメリット
①遺族が、相続でもめることが少なくなる
②被相続人の考えたように遺産を分割できる
 ただし、遺留分があるので、すべてが自分の希望どおりになるとは限りません。
③分割方法について相続人が悩むことがなくなる
④遺産分割協議を経ずに相続手続きができる
 ただし、相続人全員の意思により遺産分割協議を行うこともできます。
⑤相続の手続きがスムーズになる
 金融機関などの手続きが楽になります。
⑥血縁者以外にも財産を譲ることができる
⑦家族に自分の遺志を伝えることが出来る

■公正証書遺言
 公正証書遺言とは、遺言の中でも遺言書が公証人に対して遺言の内容を伝え、その内容を公証人が文章にまとめて作成する遺言のことです。 
証人が2人必要です。公証役場で紹介してもらうこともできます。
 確実かつ安全に相続手続きを進めたい場合は、公正証書遺言をしたほうがいいです。検認の手続きを省略でき、相続開始とともに相続手続きを行うことができます。 

●公正証書遺言の作成手順
 ①遺言者が遺言内容を考えて原案を作成する
 ②公証役場での公正証書作成の日時を予約する
 ③公証人から求められた必要書類を揃える
 ④予約当日、必要書類を公証役場へ持参し、遺言の内容について公証人へ伝える
 ⑤公正証書遺言を作成するときに立ち会ってもらう証人2人を決める
  以下の人は承認になれません。
  ・未成年者(20歳未満の未婚の者)
   十分な意思能力がないものとして、証人になれません。
  ・推定相続人及び受遺者ならびにこれらの配偶者及び直系血族
   推定相続人は、遺言書作成時における立場であり、遺言書の作成後に、結果的に推定相続人になったとしても問題はないとされます。
  ・公証人の配偶者、四親等内の親族、公証役場の書記及び使用人
  ※証人を立てることができない場合、公証役場に依頼すれば証人を立ててくれます。その場合費用がかかりますので、裁判所にご確認ください。

 ⑥遺言作成日当日、証人2人とともに公証役場へ出向く
  遺言者本人が病気などで外出することが難しい時は、公証人が本人の自宅や病院等へ出張して作成することもできますが、割増料、出張旅費が発生します。
 ⑦公正証書遺言の内容を確認し、間違いがなければ遺言者、証人2名が署名・押印する
 ⑧公証人が、方式に従って作成された旨を付記して署名・押印する
 ⑨公正証書遺言の正本が遺言者に渡され、公証人の手数料を現金で支払う

●公正証書作成に必要な書類
 ①遺言者の実印と印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
  印鑑証明書にかえて運転免許証、住民基本台帳カード(顔写真付き)でも可
 ②戸籍謄本各1通
  遺言者と相続人との続柄を証明(相続人であることが証明できるまで、すべての戸籍謄本が必要)
  相続人以外の人に遺贈する場合は住民票
 ③遺贈される人の住民票
  住所、氏名、生年月日、職業を確認する
 ④不動産を相続・遺贈させるときは土地・建物の登記事項証明書と評価証明書
 ⑤固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税の納税通知書
 ⑥証人の住民票と認印
  自動車運転免許証、保険証のコピーでも可
 ⑦貯金、動産、有価証券等
  通帳のコピー(金融機関名・支店名の分かるもの)
  有価証券等のコピー
  生命保険書のコピー(遺言書で生命保険の受取人を変更することができます)
 ⑧骨董品や美術品などを相続・遺贈させる場合は、その財産を特定できる資料
 ⑨遺言執行者を指定する場合はその人の住所、氏名、生年月日、職業を確認しておく
 ⑩その他公証人から求められた資料

●証人になれない者
 ①未成年者(但し、婚姻による成年擬制があったものを除く)
 ②成年被後見人及び被保佐人
 ③推定相続人、その配偶者、その直系血族
 
④受遺者、その配偶者、その直系血族
 ⑤公証人の配偶者、公証人の四親等以内の親族、書記及び使用人
 ⑥遺言書の内容を読めない、確認できない人

●公正証書遺言のメリット
 ・遺言書の真正性が問題となることがない
 ・不備で遺言が無効になる恐れがない
 ・原本が公証役場に保管されるので、変造・偽造や隠蔽・盗難・紛失・破棄の恐れがない
 ・遺言の実行がスムーズに進められるような文面を考えてもらえる
 ・家庭裁判所での検認の手続を経る必要がないので、相続開始後、速やかに遺言の内容を実行に移すことができる
 ・遺言者が署名できないような状態にある場合、公証人がその旨を付記することによって署名に代えることが可能
 ・口述できない人や耳の聞こえない人も遺言ができる
  口述できない人や、耳の聞こえない人は、手話通訳人が公証人に遺言の内容を伝えたり、公証人との筆談により公正証書遺言をすることができる
 ・病気で家を出られなくても、公証人が家まで出張してくれる

●公正証書のデメリット
 ・作成に手間と時間がかかる
 ・遺言書作成手数料がかかる
 ・証人が2人必要

●原本、正本、謄本
 原本とは、一定の内容を表現する目的で、確定的なものとして作成された文書のことです。原本は、公証役場で保管されます。
正本とは、原本の作成権限があるものによって原本に基づき作成され、原本と同一の効力を有する書面のことであり、謄本の一種です。
正本は、遺言執行に必要となるため、遺言執行者に預けます。登記の申請などに使用します。
謄本とは権限のある公務員が原本と相違ないことを認証した書面で、原本の内容を全部写して作ったものをいいます。
公正証書遺言の検索の依頼・謄本請求は、遺言者が死亡した場合のみ、相続人、受遺者及び遺言執行者などの利害関係者が請求できます。遺言者の存命中は、検索や謄本請求ができるのは本人だけです。たとえ相続人であっても請求できません。
公正証書の正本謄本を紛失・滅失しても、公証役場に原本が保存されている限り、改めて謄本を発行することができます。

公正証書謄本の請求の必要書類
 契約当事者が個人で、本人が請求する場合
 ①当事者本人の身分証明書と印鑑

 相続人等利害関係人が請求する場合
 ①遺言者が死亡したことが分かる資料:除籍謄本・死亡診断書等
 ②相続人等の戸籍謄本等(請求者が法律上の利害関係人であることを証明する)
 ③請求人の身分を証明するもの
  ・運転免許証・パスポートなど公的機関が発行した写真入り証明書と認印
  ・印鑑証明書1通(発行から3ヶ月以内のもの)及び実印

 相続人の代理人が請求する場合
 ①請求人の実印を押捺した委任状
 ②請求人の印鑑証明書1通(発行から3ヶ月以内のもの)
 ③遺言者の除籍謄本(遺言者の死亡確認のため)
 ④相続人の戸籍謄本(請求人が相続人であることが分かるもの)
 ⑤代理人の身分を証明するものと認印

遺言公正証書の検索システム
 平成元年以降に作成されたものであれば、全国どの公正役場でも検索・照会を依頼できます。
 遺言者が生存している場合は、検索の依頼・謄本請求ができるのは、遺言者本人にしかできません。
 遺言者が死亡している場合は、相続人、受遺者及び遺言執行者などの利害関係者が請求できます。

 検索のための必要書類
 ①遺言者本人が死亡したことを証明する書類(除籍謄本・死亡診断書等)
 ②利害関係人であることの証明書類(戸籍謄本等)
 ③請求人の本人確認書類(運転免許証など)

 代理人が請求する場合には、上記に加えて、
 ①相続人の印鑑証明書
 ②相続人から代理人宛の委任状(実印を押印したもの)
 ③代理人の本人確認書類

 費用
  遺言書の検索自体は、費用はかかりません。

●公正証書遺言の保存期間
 公正証書の原本は公証役場に保存されます。
公正証書の原本の保管期間は、原則として20年間と規定されています(公証人法施行規則27条1項1号)が、保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある期間保存しなければならない(公証人法施行規則27条3項)とされています。
遺言は、遺言者の死亡時に効力を生じますから、公正証書遺言は遺言者の死亡時まで保管しておく必要がある文書と言えます。
実務上は、保管期間を定めずに半永久的に保管することが一般的な取り扱いになっているようです。

●公正証書遺言の作成費用
 公証人の手数料は遺言書に書かれた財産の価額に応じて決定されます。

 目的財産の価額  手数料の額
 100万円まで  5,000円
 100万円を超え200万円まで  7,000円
 200万円を超え500万円まで  11,000円
 500万円を超え1,000万円まで  17,000円
 1,000万円を超え3,000万円まで  23,000円
 3,000万円を超え5,000万円まで  29,000円
 5,000万円を超え1億円まで  43,000円
 3億円まで  5,000万円ごとに1万3,000円加算
 10億円まで  5,000万円ごとに1万1,000円加算
 10億円超  5,000万円ごとに8,000円加算

相続人が複数いる場合は、相続人・受遺者ごとに手数料を計算し合算します。

財産の総額が1億円未満の場合は、遺言手数料として11,000円が加算されます(ただし、人数には関係ありません)。

役場外執務の場合、公証人の日当は、1日20,000円(4時間以内は10,000円)、交通費は実費です。

正本または謄本の交付は、250円/1枚です。


■自筆証書遺言 
 ●自筆証書遺言のメリット
  ・費用がかからない
   公正証書遺言のように、公証人や証人に費用やお礼を支払う必要がありません。
  ・いつでもどこでも自由に作れる
  ・誰にも知られずに作成できる
 ●自筆証書遺言のデメリット
  ・遺言書が発見されなかったり、偽造・隠匿されやすいという一面がある
  ・検認が必要になるため、遺言の内容を実行するのに時間がかかる
  ・様式の不備などにより、遺言が無効になることがある

 ●自筆証書遺言の要件
 1.遺言書はすべて自筆で書く
  代筆、ワープロ、パソコンで作成した遺言は、遺産を残す人の意思を反映したものであったとしても無効です。一部でも、他人の代筆やパソコンの部分があれば無効になります。遺言書の偽造を防ぐためです。

自筆かどうかの争いになった場合には、筆跡鑑定が必要になります。

 2.日付(年月日)を書く
  遺言書は何度でも書き直せますので、遺言書が数通見つかることもあります。そんな時に遺言書の優劣を決めるのは遺言書に書かれてある日付です。遺言書は先に書いたものよりも後に書いたものが優先されます。
遺言者が満15歳に達しているか、遺言ができる意思能力があったかどうかを判断する意味もあります。
「吉日」と書くと無効になります。

 3.氏名を書く
  遺言作成者1名だけが署名します。夫婦が一緒に署名をしてしまうと、「共同遺言」と言って遺言が無効になってしまいます。

 4.押印をする

  認印でも有効ですが、実印が望ましいでしょう。

 5.財産の記載は正確性に配慮する

 6.封印
  封印されていなくても無効にはなりませんが、改ざん防止には封印しておくのが望ましいでしょう。

自筆証書遺言の保管制度 

 自筆証書の遺言書は、自宅や銀行の貸金庫などに保管されていることが多いです。

自宅での保管の場合、紛失や改ざんの懸念があり、トラブルの防止や相続を円滑にする主旨で令和2年7月より始まりました。

自筆証書遺言書の保管制度では、法務局が遺言書を保管しますので、偽造・変造のリスクがなく、検認手続きは不要です。

●保管申請の流れ
①自筆証書遺言書を作成する(法務省
 ・用紙はA4サイズ
 ・各ページにページ番号を付すこと
②保管の申請をする遺言書保管所(法務局)を決める
 保管の申請ができる遺言書保管所
 ・遺言者の住所地
 ・遺言者の本籍地
 ・遺言者が所有する不動産の所在地
③住民票(本籍地の記載があるもの)を取得する
④申請書を作成する
 申請書の書式は、法務省のホームページからダウンロードできます。法務局の窓口にも備え付けられています。
⑤予約する
 ・ネット予約
  数日後の法務局から「遺言書保管手続予約」のメールが届く。
 ・電話予約
 ・窓口予約
⑥保管の申請をする
 次のものを持参して、遺言者本人が出向きます。
 必要書類
 ・遺言書
 ・遺言書の保管申請書(3,900円の収入印紙を貼付)
 ・遺言者の住民票(本籍地入り)
 ・本人確認書類(運転免許証など)

⑦保管証の受け取り

●関係遺言書保管通知
 遺言者の死後、相続人、受遺者、遺言執行者が法務局で「遺言書情報証明書」の交付を受けたり、遺言書の閲覧を申請したりすると、法務局から申請人以外のすべての相続人等に対して遺言書が保管されている旨の通知がされます。

ただし、相続人等のいずれかの方が、遺言書情報証明書の交付請求や遺言書の閲覧をしなければ、この通知は実行されません。この点を補うものとして、下記の「死亡時の通知」があります。

死亡時の通知
 「死亡時の通知」は、遺言者本人が死亡したとき、事前に本人が指定しておいた人(1名のみ)に対して、法務局で遺言書が保管されている旨の通知が送られる制度です。

指定できるのは、遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者等のうち1名だけです。

その方に遺言書が保管されている事実が伝われば、その他の相続人等にも確実に伝わると思われるような立場の方や、遺言書が保管されている事実を確実に伝えたい方等を選ぶことになります。

遺言書の保管の申請時に、死亡時通知の申し出をすることができます。

市町村が遺言者の死亡届を受けると法務局に死亡情報が提供される仕組みになっています。

死亡時の通知制度は、公正証書遺言にはない自筆証書遺言保管制度だけの長所です。

通知の内容は、以下の通りです。
・遺言者の氏名
・遺言者の生年月日
・遺言書が保管されている法務局
・保管番号

秘密証書遺言
 秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にしておくことを目的として作成する遺言方式です。

遺言者が遺言証書を作成して、それに署名・押印した上でそれを封書に封じ、この封書を遺言証書に押印したのと同じ印鑑で封印し、この封書を公証人と2人以上の証人に提出して自分の遺言書であることと氏名及び住所を申述し、公証人が、その封書に日付と遺言者の申述を記載した上で、遺言者、公証人、証人がそれぞれ署名押印するという遺言作成の方式です。

相続開始後、検認手続き前に秘密証書遺言書を開封した場合には、秘密証書遺言は無効になります。

秘密証書遺言は、遺言者自身が自分の姓名さえ書くことができればよく、自筆証書遺言のように全文を手書きで作成することまでは要求されていません。

●秘密証書遺言のメリット・デメリット
 【メリット】
 ・自分で遺言書を作成した場合は秘密が完全に保たれる
 ・パソコンやワープロによる作成や、代筆であっても可能(署名と押印は自分で行わなくてはなりません)
 ・誰にも知られることなく作成しますので、遺言書の偽造・改ざんを防げる
 ・公証役場に秘密証書遺言を作成したという事実が記録されますので、「本当に故人が作成した遺言なのか?」などと揉めることがない
 ・証人と公証役場とが関わることで遺言書の存在を明確にできる

 【デメリット】
 ・公証人が内容を確認することができないため、遺言書の内容に法律的な不備があって無効になったり、相続人間の紛争の種になったりするリスクがある
 ・公証人手数料(11,000円)がかかる
 ・証人2人の立会いが必要になる
 ・公証役場へ出向かなければならない
 ・自分で保管するために紛失・未発見の恐れがある(秘密証書を保管するのは、遺言者自身)
 ・相続開始時に家庭裁判所の検認が必要

■法定遺言事項
 法定遺言事項とは、法律上、遺言の内容として法的効力が認められている事項をいいます。
遺言事項には、財産に関する事項・身分関係に関する事項・遺言執行に関する事項があります。
法定遺言事項以外の遺言事項は付言事項(下記)と呼ばれます。

●財産に関する遺言事項
①相続分の指定・指定の委託(民法902条)
 相続分の指定とは、相続人に対して、法定相続分とは異なる割合で遺産配分を決めることです。
 例えば、妻には家屋を、長男には別の土地を相続してもらいたい、といったように、特定の相続人に特定の資産を相続させたい場合には、遺産分割方法の指定をしておくことが望ましいです。
 遺産分割方法の指定は消極財産にも適用できます。
②遺産分割に一定期間の禁止
③特別受益の持ち戻しの免除(民法903条3項)
 生前に受けた特別受益を遺言でその贈与分を差し引かないように言い残すことができます。
④遺贈(民法964条)
⑤信託の設定(信託法3条2項)
⑥生命保険の保険金受取人の変更
⑦相続人相互間の担保責任の指定(民法914条)
⑧遺留分減殺方法の指定(民法1034条ただし書)
 減殺すべき金額を遺贈ごとに指定したり、各遺贈に対する減殺の順番を指定することができます。
⑨一般財団法人の設立・財産の拠出(一般法人法152条2項等)
 財団法人に対する寄付行為は生前でもできますが、遺言でもすることができます。

●相続に関する遺言事項
①祭祀主催者の指定(民法897条1項ただし書)
 祭祀の承継者とは、お墓の管理や法要の主催者のことです。
②認知症の配偶者の面倒や遺されたペットの面倒を見てもらう
③推定相続人の廃除・廃除の取り消し(民法893・894条)
 日頃から遺言者に暴力を振るったり、人前で悪態をつくなどの重大な非行をする相続人がいる場合には、「相続人廃除」の遺言をすることができます。生前に手続きをすることもできます。
 廃除の対象となるのは、遺留分を有する推定相続人に限られます。
④相続欠格の宥恕
⑤婚外子の認知
 婚外子の認知は生前に行うこともできます。
 認知されたこの相続分は嫡出子と同じです。
 認知された時に、既に遺産分割が終わっている場合には、遺産分割のやり直しを求めることはできず、価額のみによる支払いの請求をすることになります。
 価額請求権は5年で消滅時効にかかります。
⑥未成年の子供の後見人・後見監督人の指定(民法839条)
 未成年の子供の世話をする人がいなくなる事態に備えて、子供の財産管理や身上監護をする後見人や後見
監督人を遺言で指定することができます。
 未成年後見人に就任した人、未成年後見人に就任した人は、10日以内に役所に届出が必要です。
 未成年後見監督人は、未成年後見人を監督する役目があります。
 未成年後見監督人を選任するかどうかは任意ですあり、人数制限もありませんが、既に後見人になっている者の配偶者、兄弟姉妹等を後見監督人に選任することはできません。
 後見が終了するのは未成年者が成年になったときです。
⑦遺言の取り消し
⑧遺言執行者の指定及び第三者への指定の委託(民法1006条)
 相続人の廃除や婚外子の認知をする場合には、必ず遺言執行者が必要になります。
⑨遺言執行者の職務内容の指定
 遺言執行者は、相続人の代理人として、相続開始後に、名義変更をはじめ遺言の内容を実現する責務を負う人のことです。
⑩一般社団法人を設立する意志の表示

●付言事項(ふげんじこう)
 死後、相続財産のことで家族が争わないために、遺言をすることが遺言の目指すところです。

付言事項は、法的効力を伴いませんが、遺言に関する被相続人の思いを伝えることで、被相続人の意思が尊重されやすくなります。

付言で、財産を特定の者に相続させることにした理由、遺品の処理の仕方、葬式や法要の方法、献体や納骨の希望、家族の融和や家業の発展を祈念する旨を記載します。

付言事項は、相続に伴うトラブルや衝突の回避を促したり、遺族に強い感動をもたらし、親族の結束をさらに強める力があります。

付言事項には、家族の名前を記して、感謝の気持ちを表します。具体的なエピソードが書かれていると、より温もりが伝わります。

付言事項作成のご相談は、こちら

■エンディングノート
 エンディングノートとは、将来の自分に万が一のことがあった場合に備えて、自分の伝えたいことを書き留めておくノートです。

エンディングノートは遺言書とは異なり、法律上の文書ではないので法的効力はありません。

介護や医療、葬儀やお墓、相続のことなど、自身のエンディングに際して必要なことをノートに書いておけば、周囲の人が判断に迷うことが少なくなります。

エンディングノートは書店でも販売されています。

エンディングノートにはカテゴリーに分けて必要なことを記入しておくことをお勧めします。

●エンディングノートの活用方法
 ①自分に万が一のことがあった場合に備えて、遺族に指示を残す。
 ②公正証書を前提として、その補足的な説明資料として活用する。

●記載項目の例(書けるところから書いてゆきます)
氏名、生年月日、本籍
②住所、過去の住所
③マイナンバー、血液型
 電話番号、携帯電話番号、メールアドレス
④家族の状況
 家系図、住所、電話番号など連絡先
⑤両親の氏名、命日、年齢、戒名
⑥友人、親族、知人に関すること
 自分との関係、連絡先
 葬儀告知の要否
⑦免許や健康保険証などの証書類
 保管場所
⑧財産や遺品に関すること
 貴重品の番号(保険証、運転免許証、パスポート、住民票コード、クレジットカード)
 預貯金の口座、通帳と印鑑の所在
 口座自動引落一覧
 有価証券
 生命保険
 損害保険
 財産管理をお願いしたい人
⑨その他の資産
 不動産
 株式
 書画骨董、宝石、貴金属、貸付金等
 貸金庫、レンタル倉庫等の利用状況
 その他収入の状況
⑩インターネットサービス
 自動更新される有償サービスの名称、IDとパスワード
 ネットバンキングのID
 重要ファイルの所在
 SNSなどネット上の各種アカウント
⑪借金
 借入金の有無と保証人について
⑫公的手続きと取引先への連絡
 健康保険、年金、廃業届など
 連絡すべき取引先、関係者
⑬経理
 法人口座情報
 法人の保有資産
 売掛金、買掛金
 税理士の連絡先
⑭相続のこと
 遺言の有無
⑮後見人契約の有無
⑯経歴
 出生地
 小学校、中学校、高校、大学
 勤務経歴(思い出す範囲で)
 結婚
 出産歴
 資格
⑰ペットに関すること
⑱介護や医療に関すること
 希望する介護の内容
 介護をしてくれる人に伝えておきたいこと
 持病、アレルギー、常備薬
 かかりつけの医師
 告知、延命治療、臓器移植についての希望
⑲思い出
 自分の性格
 趣味
 好きな色、場所、もの
 配偶者との出会い、結婚日、結婚式場
 両親や祖父母等、幼少時代、学生時代、家族
⑳葬儀やお墓に関すること
 宗派
 葬儀の形式
 希望する葬儀社の有無
 遺影として希望する写真
 葬儀に呼んで欲しい友人、知人
家族への希望とメッセージ
メッセージ
 親族、友人など

相続手続き代行1−2

■遺言の執行
 遺言の執行とは、遺言者が死亡し、遺言の効力が生じた後に遺言の内容をその通りに実現することです。
遺言執行者は、遺産の預貯金債権の名義の変更、払い戻しの時などに重要な役割をします。
遺言に遺言執行者の記載がある場合は相続人に代わり遺言執行者が相続の手続き及び遺言の実現に向けた行為をしてゆきます。
遺言執行者が選任されている場合は、相続人は勝手に処分や、遺言の執行を妨害するようなことはできません。
遺言者は遺言により、遺言執行者の職務を特定の事項のみに限定することができます。
遺言執行者は、遺言で指定されている場合と必要に応じて家庭裁判所から選任される場合とがあります。
遺言執行者には、未成年者や破産者を除いて誰でもなることができます。

●遺言執行者を指定する方法
 指定方法は以下の3種類です
 ①遺言により指定する
 ②遺言により遺言執行者の指定を第三者に委託し、その委託を受けた人が遺言執行者を指定する
 ③家庭裁判所に申立をし、遺言執行者を決めてもらう

 【遺言書で遺言執行者が指定されていないとき】
●遺言執行者選任の申立をするケース
 ①遺言によって遺言を執行する人が指定されていない場合
 ②指定されたものが就職を拒絶した場合
 ③指定された遺言執行者が既になくなっている場合
 ④指定された遺言執行者が未成年者や破産者である場合

●遺言執行者の選任手続き
【申立人】
 利害関係人(相続人、受遺者、遺言者の債権者など)

【申立先】
 遺言者の最後の住所地の家庭裁判所

【遺言執行者選任申立書】
 裁判所サイトの記入例

【必要書類】
 ・遺言執行者選任申立書
 ・遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本
 ・遺言執行者候補者の住民票、身分証明書
 ・遺言書の写し、または、遺言書の検認調書謄本の写し
 ・申立人の利害関係を証する資料(親族の場合は戸籍謄本等)

【費用】
 ・遺言書1通につき収入印紙800円
 ・連絡用の郵便切手

●遺言執行者の解任
 【遺言執行者解任の理由】
 ①遺言執行者が任務を怠ったとき
 ・遺言執行者が任務を全く行わない、あるいは一部しか行わない場合
 ・相続財産の保管、管理につき善管注意義務を怠り、相続財産を不完全に管理した場合
 ・正当な理由なく財産目録の交付を怠った場合
 ・相続人から請求があったのに、事務処理状況の報告を怠った場合
 ②その他の正当な事由(長期にわたる病気、業務の急激な多忙、遠隔地移転、対立関係の一方のみの加担など)

利害関係人が家庭裁判所に対し遺言執行者の解任を請求し、家庭裁判所において解任の審判を行った場合に遺言執行者は解任されます。
家庭裁判所は遺言執行者解任の申し立てがあった場合、必要があると認める場合には、遺言執行者の職務の執行を停止し、または職務を代行する者を選任することができます。

●遺言執行者解任審判の申立
【申立先・申立人】
 申立先は、相続を開始地を管轄する家庭裁判所です。申立をすることができる者は、相続人、相続債権者、受遺者などの利害関係人です。

【申立費用】
 ・収入印紙800円
 ・予納郵便切手

【申立に必要な書類】
 ・遺言執行者解任審判申立書
 ・審判前の保全処分申立書
 ・申立人・遺言執行者・遺言者の各戸籍謄本
 ・遺言書の写し、または遺言執行者選任審判書

解任審判の申立を受けた家庭裁判所は、解任の事由の有無を判断しますが、遺言執行者を解任する場合には、当該遺言執行者本人の陳述を聴いた上で解任の可否を判断します。
解任の審判に対しては、遺言執行者は即時抗告をすることができ、解任の申立を却下する審判に対して利害関係人は即時抗告できます。遺言執行者の職務執行停止及び職務代行者選任の審判については即時抗告をすることはできません。
解任の審判がなされた場合、遺言執行者は相続人等に対し、解任により任務が終了した旨を通知しなければ相続人等に対して解任による執行事務の終了を対抗できませんので、その通知は必ず行う必要があります。

●遺言執行者の辞任許可申立て
 遺言執行者は、正当な理由があるときは、家庭裁判所の許可を受けて辞任することができます。
 【正当な理由】
 ・長期の病気
 ・長期の出張
 
・遠隔地への引越し
 ・相続人間での調整に失敗して、公正な遺言執行が期待できない

 ①申立人
  遺言執行者
 ②申立先
  相続開始地の家庭裁判所
 ③作成書類
  遺言執行者辞任許可審判申立書
 ④添付書類
 ・申立人および遺言者の戸籍謄本
 ・遺言書の写し
 ⑤申立費用
  収入印紙800円
  予納郵便切手
 ⑥辞任の通知
  家庭裁判所による辞任の許可の審判がされただけでは不十分です。相続人及び受遺者に対し、辞任の通知をしないと、相続人や受遺者の対して遺言執行事務が終了したことを対抗できません。

●法定相続情報証明制度(仮称)
 2017年5月から相続手続きの簡略化を目的として、法定相続情報証明制度が開始される予定です。
被相続人の戸籍謄本等の書類を法務局に提出しておけば、その後は法務局が証明書を発行する制度のことです。
相続人は被相続人の預貯金、不動産などを管理する銀行や法務局の窓口に対し、この証明書を出せば良いことになります。
遺言執行者の専任を申し立てる際にも、証明書を活用できることが考えられます。

【手続きの流れ】
 ①市区町村の窓口で必要書類を取得
 ②法務局に必要書類を提出
 
③証明書が発行

●遺言執行者の権限及び業務内容
 ①相続財産の引渡し及び管理、相続財産の関係書類の引渡し及び管理
 ②財産目録の作成、預貯金の解約・払戻しや不動産の名義変更
 ③遺言による生命保険金受取人の指定、変更
 ④貸金庫の開扉
 ⑤遺産を売却して金銭で交付する場合は、遺産の売却
 ⑥子の認知(就任してから10日以内に役所へ届け出る)
 ⑦遺言執行の妨害をしている者が居る場合はその者の排除や排除の取り消し
 ⑧遺言による未成年後見人の指定及び未成年後見監督人の指定
 ⑨遺言執行に必要な訴訟行為
 ⑩すべての手続きが終了後、相続人や受遺者全員に業務終了の通知

●遺言執行者の義務
 ①遺言執行者に就任したことを知らせる就任通知書を作成する
 ②善管注意義務
  遺言執行者は通常の相続人よりも相続財産の扱いについてはより大きな責任を負います。
 ③財産目録の作成して相続人に交付する
  相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、または公証人にこれを作成させなければなりません。
 ④直ちに任務を行う義務
 ⑤相続人を漏らさず調べるために、戸籍等の収集
 ⑥相続財産管理・執行
 ⑦相続人から請求された時にいつでも事務処理の状況を報告する義務
  全ての作業が終わった場合にも相続人への報告が必要です
 ⑧受取物等の引渡し義務
  事務を処理した際に受け取った金銭その他の物や収受した果実を相続人に引き渡す義務及び遺言執行者の名をもって取得した権利を相続人に移転する義務
 ⑨補償義務

●執行行為が必要な遺言事項
 【遺言執行者だけが執行できる遺言事項】
 
①推定相続人の廃除又は廃除の取消(民法892条〜894条)
 ②認知

 【遺言執行者以外でも執行できる遺言事項】
 ①遺贈
 ②法定相続分を超える相続分の指定及び特定の相続人に相続させる旨の遺言
 ③一般財団法人の設立
 ④信託の設定
 ⑤祭祀承継者の指定
 ⑥生命保険金の受取人の指定、変更

 【執行行為は不要とされる遺言事項】
 ① 

●遺言執行者指定のメリット
 ①遺言の内容を確実に実現できる
 ②不動産を法定相続人以外に遺贈する場合
 ③預貯金の解約・名義変更等は、遺言書があっても、遺言執行者が指定されていないと金融機関は相続人全員の署名と実印の押印、印鑑証明書の提出を求めることが多いです。
金融機関が預金の支払いに慎重になる理由の一つとして、複数の遺言書がある可能性を警戒するためと言われています。
 ④相続人が複副数人いると、書類の収集や署名押印手続き等が煩雑になりがちですが、遺言執行者を指定
していれば、執行者が相続人代表として手続きを進められるので、大幅に時間の短縮ができます。

 ⑤相続人によって第三者に不当に処分が行われた場合、遺言執行者が選任されている場合には、相続人によって勝手に行われた譲渡は無効となります。

■尊厳死宣言書(リビングウィル)
 病気や事故で意識が回復せずに、延命措置を施さなければ生命が維持できなくなった場合、延命措置を選ぶかどうかの意思を心身ともに元気なうちに、書きとめておく方法です。
本人が寝たきりの植物状態になったとき、延命措置を施すかどうか、看守る家族は悩み苦しみます。
どちらを選んでも、選んだ家族はそれで良かったのかどうかを、思い返しては重い気持ちになります。
高齢社会白書(H26)では、65歳以上の91.1%の人が延命措置はせずに、自然なままに最期を迎えたいと考えている、と報告されています。
もしも、意識が戻らない状態になったときに、延命措置の選択のために家族を苦しめないためには、元気なときに「尊厳死宣言書」を作成しておくことは非常に意味のあることだと思います。

●尊厳死とは
 事故や病気などで脳死状態や植物状態となり、回復する見込みがない末期状態になったとき、死期を引き伸ばすだけに過ぎない生命維持治療をしないで、自然の摂理としての死を、人としての尊厳を保ちながら迎えることをいいます。
尊厳死の良し悪しを考えるのではなく、尊厳死がどういうものかを知って、その上で自分がどう望むかを決めることなのだと思います。

●尊厳死宣言書の作成方法
 日本では、今のところ尊厳死に関する法律がないため、この文書があっても、そのとおりに実現される保証はありませんが、日本尊厳死協会のアンケート結果によれば、「尊厳死宣言書」を示した場合における医師の尊厳死許容率は、平成15年には95.9%に達しているそうです。
尊厳死宣言書の作成は公正証書でする方法と日本尊厳死協会へ加入する方法があります。

①「尊厳死宣言公正証書」は、尊厳死を希望する旨の文書を公正証書で作成するものです。
 公証人に文案を作成してもらう方法と、自分で作成した宣言書を公証役場に持参して、証書の署名・押印について公証人の認証を受ける方法があります。
尊厳死宣言公正証書は公正証書の中でも「事実実験公正証書」という部類に入ります。これは、本人が宣言した不要な延命治療の拒否の意思を事実として公文書で残すという方法です。
②「日本尊厳死協会」は、リビングウィル(尊厳死の宣誓書)を普及する団体です。

●尊厳死宣言公正証書の記載事項
①延命措置拒絶の意思表明
 延命治療を拒否して苦痛を和らげる最小限の治療以外の措置を控えてもらい、安らかな最期を迎えるようにして欲しいという希望を明示します。 
②尊厳死を望む理由
 理由を記載することで、家族や医療関係者への説得力が増します。
③家族の同意
尊厳死宣言書が作成されても、その家族が延命措置を希望した場合には、医師がそれを無視して延命措置の停止を講じることは難しくなります。家族の同意があることを記載しておくことが大切です。
④家族や担当医の免責を求める
 尊厳死宣言の内容の通りに実行された場合に、関係者が法的責任を問われないように、警察、検察等へ配慮を求める意思表示をする。
医療関係者に対しては、刑事責任のみならず、民事責任をも免責する記載をすることが大切です。
⑤尊厳死宣言の有効性について
 尊厳死宣言は、自分の精神が健全な状態の時になされたものであること。また、自分が尊厳死宣言を破棄、取り消さない限りは効力を有する旨を明らかにしておきます。

●延命措置
 延命措置としてつかわれるのは次のものがあります。
①人工呼吸
 人工呼吸器を使って心肺機能を維持します。
②栄養補給
 ・経腸栄養法
  胃や腸に直接、流動食や液状になった栄養食を入れる方法です。
  胃瘻栄養法、経鼻経管栄養法、間欠的口腔食道経管栄養法があります。
 ・非経腸栄養法
  胃や腸を通さず、静脈内に栄養成分を投与します。
  中心静脈栄養法、抹消静脈栄養法、持続皮下注射があります。
③ペースメーカーを使う
 心臓のリズム不整で心不全を起こす場合に植え込まれます。
④人工透析
⑤酸素投与
⑥薬剤投与

●安楽死との違い
 「安楽死」とは、様々な苦痛から解放されるためにまだある生命を積極的に絶つ行為です。尊厳死とは根本的に異なるものです。
人為的な行為によって死を選ぶことが安楽死であり、自然に任せた死を受け入れるのが尊厳死です。
安楽死には、「積極的安楽死」と「消極的安楽死」があります。
「積極的安楽死」は、命を終了させるために薬物を投与するなどをして、死を迎えられるように導くことをいいます。
「消極的安楽死」は、最期を迎えるために治療や薬の投与を一切行わないことをいいます。
「積極的安楽死」は倫理的だけではなく、法律上の問題にもなりえます。

遺産分割の方法
相続財産を分けるには、次の4つの方法があります。
①現物分割
 Aの土地は長男に、Bの土地は長女に、その他の財産は次男にと遺産そのものを現物で分ける方法です。
②換価分割
 相続財産を売り払って金銭に換えて、それを相続人の間で分配する方法です。
 各相続人の法定相続分どおりに遺産を分割したい場合、現物分割をすると価値が下がる場合などにはこの方法をとります。
③代償分割
 特定の財産(現物)を相続する代わりに、他の相続人に金銭を引き渡す方法です。
 代償金がない場合には現実化できません。
④共有
 相続財産を共有のままにしておくという方法です。後にトラブルの元になったりします。

■遺言書と遺留分 
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に最低限保障された遺産取得割合です。この権利は、遺言の内容にかかわらず侵すことはできません。
被相続人が生前贈与や遺言で特定の相続人や第三者へ財産が引き継がれることを防ぐ役割もあります。
遺言者の遺志はできるだけ実現させてあげたいが、遺された家族にも財産を受け取る権利があるとの考え
方です。

あくまでも「遺留分を請求する権利」なので自ら主張しなければ実現されません

遺留分侵害額請求権
 相続人に保証された財産を請求することです。
遺留分には請求方法、請求できる期限、保証される遺留分の額、請求することができる者などが民法に記載されています。
なお、遺産分割協議において遺産分未満の価額の財産しか取得しないことに同意した場合は、遺留分が侵害されたことにはなりません。
遺留分侵害額請求権はあくまでも侵害額に相当する「金銭的な補償」を侵害者に求める権利に過ぎません。請求者は不動産の共有持分を請求することや不動産の処分禁止の仮処分を行うことはできません。
ただし、金銭で精算することが困難な場合、双方の合意があれば試算の移転により精算することも可能です。しかし、この場合は代物弁済によるものとして譲渡所得税が課税されることとなったため、注意が必要です。
遺留分侵害額請求を受けた人が、金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができます。
遺留分侵害額請求権は行使しなくてもかまいません。遺留分を侵害されているからといって相続人は必ず遺留分侵害額請求をしなければならないわけではありません。行使するかしないかは、相続人の自由な判断に任されています。

遺留分
 ・直系尊属のみが相続人の場合は1/3
 ・それ以外の場合は1/2
 ・兄弟姉妹には遺留分がない

遺留分侵害となる行為
①遺贈
 相続人の遺留分を侵害する程度の遺贈が行われていた場合には、遺留分侵害額請求の対象になります。

●遺留分の割合
 直系尊属のみが相続人法定相続分の3分の1で、それ以外の場合は2分の1です。
他の相続人が相続分や遺留分を放棄しても、遺留分が増えることはありません。

請求範囲
 遺留分侵害額請求権の対象となる生前贈与は、相続開始前10年間に行われたものに限定されます。

遺留分が未確定の場合の相続税の申告
 相続税の申告時に遺留分侵害請求の基づく金銭の額が確定していない場合には、遺留分侵害額請求がなかったものとして、各人の相続税の課税価格及び相続税額を計算し申告することになります。

●遺留分の時効と除斥期間
 時効:相続開始及び遺留分侵害の遺言・贈与があったことを知った日から1年以内
 除斥期間:相続開始から10年間

遺産分割の方法


遺産分割の方法
遺産分割協議

遺産分割の方法
相続財産を分けるには、次の4つの方法があります。
①現物分割
 Aの土地は長男に、Bの土地は長女に、その他の財産は次男にと遺産そのものを現物で分ける方法です。
②換価分割
 相続財産を売り払って金銭に換えて、それを相続人の間で分配する方法です。
 各相続人の法定相続分どおりに遺産を分割したい場合、現物分割をすると価値が下がる場合などにはこの方法をとります。
③代償分割
 特定の財産(現物)を相続する代わりに、他の相続人に金銭を引き渡す方法です。
 代償金がない場合には現実化できません。
④共有
 相続財産を共有のままにしておくという方法です。後にトラブルの元になったりします。

遺産分割協議


遺産分割協議
 ●不在者財産管理人
成年後見制度
法定相続

遺産分割協議
 遺言書がなかった場合は、相続人全員が協議をして、「誰が何を相続するのか」を決めます。この協議を遺産分割協議といいます。
 遺産分割協議は相続人全員で行い、最終的に全員の同意を得ることが必要です。相続人が一人でもかけたり、全員が同意していない分割協議は無効となります。
押印には実印を使用し、印鑑証明書を添付します。
相続人が少数で、相続財産もはっきりしていて、誰も配分に異存がない場合は、遺産分割協議書の作成は簡単です。

■遺産分割協議の流れ
 ①遺言書の有無を確認
  被相続人が遺言により遺産の分け方を指定していれば、原則として、その内容に従い遺産を分割します。
 ②相続人の確認
  相続人の調査を行うには、まず被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得し、その中に記載されている相続人を調べます。
 ③相続財産の確認
  プラスもマイナスも全てを含めた財産を洗い出し、不動産に関しては金額に換算します。
 不動産の登記簿謄本、銀行などの預貯金等は通帳や残高証明書、保険金の照会申請など、必要に応じて関係機関へ書類を請求し、それらの書類をもとに相続財産を確定します。
 ④相続財産の評価
 ⑤特別受益寄与分の確認
 ⑥各相続人の具体的な相続分の決定
 ⑦遺産分割方法の決定
 ⑧遺産分割協議書の作成
 ⑨合意後の処理
  相続財産名義変更・登記手続き等

●連絡の取れない相続人への対応
 【連絡先や住所がわからない場合】
 戸籍を追っていくと、該当者の現在の本籍地にたどり着きます。本籍地がわかれば、そこで戸籍の附票を取り寄せます。戸籍の附票には、その方の住民票移動の変遷が記載されており、現在戸籍謄本についての戸籍の附票には、現在の住民票の所在地が記載されていますので、該当者の現住所を知ることができます。
該当者の現住所が特定できれば、手紙を書いたり直接住所地を訪ねたりして可能な限り連絡を取り、遺産分割の交渉を進めます。

【戸籍の附票を調べても連絡が取れない場合】
 家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます。
行方不明の相続人を、家庭裁判所が不在であると認めた場合、不在者財産管理人が選任されます。
「不在者」は、行方不明から1年程度の期間を経過していることが条件になります。
不在者財産管理人とは、あくまでも不在者の財産を管理するための人であるため、遺産分割協議に参加したり、協議に同意するといった行為はできません。協議に同意をしたり、財産を処分したりする行為を行うためには、別に「不在者財産管理人の権限外行為許可」の手続きを行う必要があります。
不在者財産管理人に選任される人は、相続に利害関係のない親族か弁護士が多いようです。
申立てにあたっては、不在者財産管理人選任にかかる管理費用を、家庭裁判所に予納する必要があります。
選任された不在者財産管理人は家庭裁判所に報酬を請求することができ、不在者の財産から支払われます。

●不在者財産管理人
【不在者財産管理人選任申立の手続き】
①申立人:不在者の配偶者、相続人にあたる人、不在者の親族、債権者及び検察官
②申立先:不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所
③必要費用:連絡用の郵便切手、収入印紙800円
④必要書類
 ・申立書(裁判所:記入例
 ・不在者の戸籍謄本
 ・不在者の戸籍附票
 ・申立人の戸籍謄本
 ・不在者財産管理人候補者の住民票もしくは戸籍附票
 ・不在の事実を証する資料(行方不明者届受理証明書など)
 ・利害関係を証明できる資料
 ・不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書や通帳の写しなど)

【手続きの流れ】
 ①必要書類の取得
 ②相続人調査・相続関係説明図の作成
 ③財産の調査
  被相続人の遺産を調査します。
 ④財産目録の作成
 ⑤不在者の調査
  戸籍謄本、戸籍の附票や住民票を取り寄せ、住所を確認し、住所地の現地調査や手紙を送るなどして実際に行方不明かどうかを確認します。
 ⑥申立書の作成と家庭裁判所への提出
  申立書に申立手数料、予納郵券、必要書類を合わせて管轄の家庭裁判所へ提出します。
 ⑦申立人と不在者財産管理人の候補者が家庭裁判所から呼び出し

  事情を説明します。
 ⑧不在者財産管理人選任の審判
  裁判所の調査(運転免許書の照会、雇用保険の照会など)によっても不在者が発見されなければ財産管理人が選任されます。
 ⑨申立人及び不在者財産管理人になる者への告知
 ⑩財産目録の提出
  選任された財産管理人は不在者の財産を調査し、財産目録を作成して裁判所へ提出します。
 ⑪不在者財産管理人の権限外行為の許可の申立
  許可なく遺産分割をしたり同意することはできません。
 ⑫遺産分割協議案の作成
  不在者財産管理人とその他の相続人全員で遺産分割協議案を作成し、遺産分割協議案のとおり遺産分割をすることの許可の申立をします。

【不在者財産管理人の職務が終わる時】
 ①不在者が現れたとき
 ②不在者が死亡したとき(失踪宣告を含む)
 ③管理すべき財産がなくなったとき

●帰来時弁済(きらいじべんさい)型の弁済分割
 不在者が戻らなければ、不在者財産管理人はいつまでも財産管理を続けなければならなくなり大変です。
そこで実務上、利用されているのが帰来時弁済型の遺産分割です。
帰来時弁済型の遺産分割は、不在者に法定相続分を下回る相続分しか相続させないで、代わりに他の相続人が多めに財産を相続し、不在者が戻ってきた場合には、多めに相続した相続人から不在者に対して、預かっていた金銭を支払うというような内容になります。
ただし、行方不明者が戻ってきた時に、預かっていた金銭を使ってしまっていたなどということのないように、金銭を預かる相続人は、家庭裁判所に対して資力が十分あり、かつ不在者に直系卑属がいないことを証明する必要があります。
相続財産が多額で、他の相続人の預かり財産も多額となってしまうケースでは帰来時型弁済は認められない場合もあります。

●認知症の相続人がいる場合
 相続手続きにおいて、認知症の相続人がいる場合、その認知症の方の判断能力の程度にもよりますが、原則的には、成年後見制度を活用することが法律的には正しい方法になります。
認知症に限らず、知的障害や精神障害も同様の趣旨から意思能力がない場合には遺産分割協議に参加できないものと考えられます。
これらの人たちを除外して遺産分割を行っても、それは無効となります。

■遺産分割終了後に遺言書が見つかった場合
 原則として、遺産分割協議で決定した内容が遺言書に優先します。選任された人は該当者に代わって財産の管理を行います。
  後から発見された遺言書の内容を確認した後に、先に行われた遺産分割協議の内容に同意しない相続人が出た場合には、再分割の協議を行う必要があります。

■申告期限までに遺産分割が間に合わなかった場合
 法律上は、いつまでに遺産分割協議をしなければならないという期限はありません。
相続税申告義務者は、その相続があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告書を提出しなければならないと定められています。
遺産分割がまとまらない場合には、期日までに申告・納税することが難しくなります。
分割を確定させないと受けることができない税務上の軽減規定があります(申告期限から3年以内に分割を確定させれば遡って適用可)。

 【分割協議を確定させないと受けることができない制度】
■遺産分割協議書
 遺産分割協議書は、必ず作らなければならないというものではありません、法定相続分と違う割合で相続をする場合には、作成したほうが後々のトラブルを防止するためにも大切なことです。
遺産分割協議書は、「不動産の相続登記」「預貯金や株式、自動車の名義変更手続き」などに必要となることがあります。
遺産分割協議書には、相続放棄をする相続人も含めて、全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付します。

●遺産分割協議書を作らなければならない場合
 ①法定相続分以外の持分で登記をする場合
  遺言書が残されている場合は、法定相続分と異なる持分で登記する場合でも、遺産分割協議書は必要ありません。
 ②不動産を遺産分割によって所有権の移転をする場合
  所有権移転登記の申請に必要となります。
 ③遺言書があるが、遺言書とは異なる分割方法で分割したい場合
 ④遺言書で指定されていない財産がある場合
 ⑤相続税申告をする場合 
  特に、配偶者の税額軽減、小規模宅地の特例、特定事業用資産の特例等の適用を受ける場合には、特例適用の可否を税務署が確認する必要があるため、必ず必要になります。
 ⑥財産を特定して分割したい場合
  配偶者は預貯金を、長男は不動産を、次男は株を、というように財産を特定して相続したい場合は、必要になります。
 ⑦被相続人の銀行口座等を解約する場合
  銀行所定のフォーマットに相続人全員の署名・押印をすることで、手続きが進められることもあります。

●遺産分割協議書作成上の注意点
 ・用紙の大きさ、形に成約はない
  用紙が複数枚になる時は、割印をする
 ・手書き、パソコンのどちらでも作成が可能
 ・相続人全員が署名して、実印を押印する
 ・被相続人や相続人の特定
  相続日、氏名・本籍・住所・生年月日・被相続人との続柄などを記載して明確にする
  住所は、住民票や印鑑証明書の記載のとおりに書く
 ・誰が、どの財産を取得するのかを明確にする
 ・不動産の表示は、登記簿の記載のとおりに書く
 ・預貯金、株式、生命保険解約金等の金融商品は証券や通帳に照らして正確に特定する
 ・相続財産について記入漏れがあると、記入漏れをした財産についてのみ、遺産分割協議をしていないとみなされる 
 ・新たに相続財産が発見された場合の対処方法を記載する
 ・「相続人全員が協議した」という文言を入れておく
 ・相続人の人数分を作成し、各1通ずつ原本を保管する

●海外在住の相続人がいる場合
 海外では台湾・韓国を除いて印鑑を使う習慣がなく、サインが利用されます。
印鑑証明書の代わりにサイン証明書を取得する必要があります。サイン証明書は日本大使館または領事館で取得します。
遺産分割協議書を大使館等に持参し、係官の前でサインをし、サイン証明を発行してもらいます。
ただし、住民票が日本にある場合は、印鑑証明書で処理します。
住民票の代わりに在留証明書も必要になります。在留証明書も日本領事館等で発行してもらいます。
外国に居住する日本人が故人名義の不動産を相続する場合、登記する住所を証明するものとして在留証明書が必要になります。在留証明書の発行には、「日本国籍があること」のほかに、「現地に3ヶ月以上滞在し、現在居住していること」という条件があります。滞在期間を確認できる書類として、賃貸契約書や公共料金の請求書等を申請時に持参してください。
サイン証明と在留証明を同時に申請するとよいでしょう。

【申請時に必要な書類】
・パスポートや日本で発行された運転免許証などの本人確認書類

・現地の居住地の住所を確認できる書類(滞在許可証、現地の運転免許証、納税証明書など)
・滞在開始時期を確認できる書類(賃貸契約書、公共料金の請求書等)

海外在住者で連絡が取れない相続人がいる場合には、行方不明者という扱いになり、不在者財産管理人を選任して、管理人に遺産分割協議に参加してもらいます。
外国に居住する身内がいる場合、相続の手続きをスムーズに進めるためには、遺言を作成しておくことをおすすめします。

■遺産分割調停(審判)
 遺産分割協議で話がまとまらない場合、遺産分割調停か遺産分割審判を申し立てる方法があります。
調停とは、裁判所における話し合いの手続きのことです。
遺産分割調停を経ずに審判申し立てをした場合、裁判所は職権でその事件を調停に付すこともできます。
相続人の一人、あるいは数人が申立人となって、遺産分割調定申立書を家裁に提出します。
調停を申し立てる家庭裁判所は、調停の相手方となる相続人の住所地を管轄する家庭裁判所もしくは、当事者間で合意した管轄の家庭裁判所です。
遺産分割の話し合いがまとまらない場合に、相続人、包括受遺者、相続分譲受人、遺言執行者のうちいずれかが、管轄の家庭裁判所に申し立てをすることによって、遺産分割調停の手続きは開始されます。
調停委員会は、1名の裁判官と2名以上の調停委員で構成されています。
調停では、申立人側、相手方それぞれが交互に、調停室に入り、双方の言い分を話し、調停委員がこれを調整していくことになります。
遺産分割調停はあくまで話し合いであり、裁判ではありません。
本人の同意なしに、調停で何かが決められることはありません。
合意した場合に作成される調停調書には判決と同一の効力があります。
平成25年に、家事審判法が改正されて、家事事件手続き法が施行されたとき、家事調停に電話会議とテレビ会議のシステムが導入されました。
調停で双方の合意が成立しなかった場合には、調停が不成立となった場合は自動的に審判という手続きへ移行し、裁判官が職権で遺産分割の内容を判断することになります。
審判とは、裁判官が、当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官の調査の結果等の資料に基づき判断を下す手続きです。
遺産分割審判では、家庭裁判所の家事審判官が各人の主張や年齢、職業、生活状況など一切の事情を考慮して法定相続分を元として審判を下します。
審判には即時抗告ができますが、確定すればこれに従います。

●申立先:不同意者の住所地または当事者の合意で定める家庭裁判所
●手数料等:被相続人1人につき収入印紙1200円と郵便切手
●遺産分割調停に必要な書類
 ①遺産分割調停申立書1通及び、その写しを相手方の人数分
 ②相続関係図
 ③遺産目録と当事者目録
 ④戸籍転写産物の相TUデュ人(元戸籍の写しベン忠治正しい転写物)
 ⑤相続人全員の戸籍謄本、住民票等
 ⑥遺言書がある場合はその写し、遺産分割協議書の写し
 ⑦遺産に不動産がある場合には不動産登記事項証明書
 ⑧固定資産評価証明書
 ⑨預貯金の残高証明書や通帳の写し
 ⑩事情説明書1通
 ⑪進行に関する紹介回答書1通
 ⑫印鑑

●調停の申し立てをする場合の費用
 ①被相続人1人につき1200円分の収入印紙
 ②事務連絡用切手(裁判所に確認してください)

 ③戸籍・住民票の取得費用

●遺産分割調停の流れ
 指定された期日に、当事者が家裁に出頭し、それぞれ別の待合室で待ちます。

成年後見制度

成年後見制度
 成年後見制度とは、認知症や知的障害・精神障害などによって物事を判断する能力が不十分な人を法律面や生活面で保護し支援するために設けられた制度です。
成年後見制度は本人の保護を図りつつ自己決定権の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーション(障害のある人も家庭や地域で通常の生活をすることができるような社会を作るという理念)の理念をその趣旨としています。
家庭裁判所が選定した成年後見人が本人に代わって、契約を行ったり財産の管理などを行います。
後見人には、同居の親族や弁護士、行政書士、司法書士、社会福祉士などの専門家が選任されることが多いです。
成年後見制度には2つの種類があります。
「法定後見制度」と「任意後見制度」です。

【法定後見制度】
 法定後見制度とは、本人の判断能力の程度や各々の事情に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの制度を選べるようになっており、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をする時に同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。

●法定後見制度のメリットとデメリット
 【メリット】
 ①本人や家族の意思で信頼できる人を成年後見人、保佐人、補助人に選任することができる。
  家庭裁判所に申し立てて認めてもらう必要はあります。
 ②判断能力が低下した人の財産管理と身上看護をすることができる。
 ③裁判所の監督機能がある。
 ④成年後見制度を適用していることが登記されるので、成年後見人等の地位が公的に証明される。
 ⑤不利益になる契約を締結してしまうリスクがなくなる。
 ⑥成年後見人等には取消権があるので詐欺に遭っても契約の取り消しができる。

 【デメリット】
 ①職業の制限に該当する場合がある。
  会社の取締役や各種士業など責任ある立場につけなくなる(補助は除く)。
 ②被後見人は選挙権を失う。
 ③後見人を簡単に変更できない。
 ④手続きに時間がかかる。
 ⑤後見人等の業務は、長期間に及ぶ。
 ⑥資格者等に成年後見人等の依頼をした場合には、月額2〜3万円くらいの報酬が必要になる。
 ⑦相続税対策ができなくなる。
  相続税対策とは、本人のためではなく相続人のために行うものなので、本人保護を趣旨とする後見人制度において、行えなくなるのは致し方ありません。

【任意後見制度】
 本人の判断能力があるうちに、将来的に判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ、自分が選んだ代理人(任意後見人)に財産管理などについての代理権を与える契約を公正証書で結んでおき、必要が生じた時に家庭裁判所の選任する後見監督人のもとで、必要な支援・保護を行う制度です。
任意後見人を誰にするか、どこまでの後見業務を委任するかは自由に決めることができます。ただし、一身専属権は任意後見契約の内容にすることはできないとされています。

●任意後見制度のメリットとデメリット
 【メリット】
 ①本人の判断能力が低下する前に契約するので、本人が後見人を自由に選べる。
 ②契約内容を自由に決めることが出来る。
  「生活」「財産管理」「医療看護」などの希望する内容を任意後見人契約内に盛り込んでおく。
 ③死後事務の委任契約を行うこともできる。
 ④契約内容が登記されるので任意後見人の地位が公的に証明される。
 ④家庭裁判所で任意後見監督人が選出されるので、任意後見人の仕事がチェックできる。

 【デメリット】
 ①死後の事務や財産管理を委任することはできない。
  任意後見制度の契約は、本人が亡くなると同時に終了します。そのため、親族のいない人がなくなった場合、葬儀、墓の手配、財産管理等を行ってもらえません。
 ②本人の判断能力が低下してしまった後には任意後見契約をすることはできない。
 ③法定後見制度のような取消権がない。
 ④本人に代わって契約はできるが管理はできない。
 ⑤任意後見制度を利用し始めるタイミングが難しい。
  任意後見人が同居の親族でないような場合には、本人の判断能力が減退したかどうかの把握が不十分になる可能性がある。
 ⑥財産管理委任契約に比べて迅速性に欠ける。

●成年後見人の選任と手続き
 成年後見人の選任手続きは家庭裁判所に申し立てを行いますが、その手続きは、およそ3〜10ヶ月かかります。
①主治医に診断書を書いてもらう
 主治医によっては、作成した診断書が財産権などに大きな影響を与えることになるため、診断書を作成することに慎重になる方もおられます。
②必要書類の収集
③申立書の作成
 本人、配偶者、四親等内の親族のうちの誰かを申立人とします。
家族、親族がおらず、申し立て手続きができない人については市町村長などが申し立てを行います。
④申し立て書及び関係書類一式を家庭裁判所に提出
 申し立てには事前の予約が必要です。
⑤家庭裁判所の調査官による事実の調査
 申立人、本人、成年後見人候補者が家庭裁判所に呼ばれて、事情を聞かれます。
先天性の障害などが明らかな場合を除いては、必要に応じて、本人の精神状況について医師等の鑑定が行われます。
後見人候補者が不適格な場合や親族間に争いがある場合は、第三者後見人が選任されることもあります。
審判に不服申し立てがなければ、審判書を受領してから2週間後に確定します。
⑥審判
 申し立て受付から審判確定までは、通常1〜2ヶ月かかります。

●成年後見人の仕事内容
 成年後見人の仕事は大きく分けて、「療養看護」と「財産管理」です。

 【療養看護】
 ①本人の診療・療養介護・福祉サービスなどの利用契約の締結
 ②本人の診療・療養介護・福祉サービスにかかる費用の支払い
 ③本人の安否確認、健康状態の観察などの見守り

 【財産管理】
 ①預貯金、印鑑、現金、株式、有価証券、車、不動産など本人の資産の管理
  例え本人であろうと、後見人の承諾なしに預金通帳から現金を引き出したり、解約したりすることはできません。
 ②年金や給与などの収入、公共料金や税金を始め、経費を金銭出納帳に記録し、被後見人の生活にかかった経費の領収書を保管します。
 ③税金の申告や納税をします。
 ④業務内容を、家庭裁判所に報告します。

 【特別な仕事】
 ①必要であれば、不動産を売却(居住用の不動産であれば、裁判所に対し処分許可申し立ても行う)
 ②遺産分割協議、調停、示談、施設への入所契約、病院への入院契約
 ③不動産の管理
  家の修繕などが必要な場合は施工業者などへ手配します。
 ④税務申告、訴訟等(専門家への依頼も可)

 【居住用不動産の処分】
 本人の入院費や施設入所費に充てるため、本人所有の不動産の売却が必要になる場合があります。
居住用不動産の処分には、家庭裁判所の許可が必要です。許可を得ずに処分すれば、その処分は無効となります。
「居住用」とは、
①本人の生活本拠として現に居住している建物またはその敷地
②現在居住していないが過去に生活の本拠となっていた建物とその敷地
③将来住む可能性がある建物

必要書類 ・申立書
・不動産の登記事項証明書
・固定資産評価証明書
・不動産の査定書
・売買契約書(案)
手続きに必要な書類  収入印紙800円、郵便切手(82円×1枚、10円×1枚)

居住用不動産については、売却のほか、賃貸借契約の締結、解除、抵当権の設定やこれらに準ずる処分をする場合にも、家庭裁判所の許可が必要です。
不動産の売却をきっかけとして成年後見制度を利用した場合でも、後見人の役割は、不動産の売却手続きで終了するのではなく、被後見人の死亡まで続きます。
事業用の不動産、農地、山林、賃貸住宅などは居住用不動産には該当しませんので、家庭裁判所の許可を受けなくても、後見人の判断で処分が可能です。

●利益相反行為の禁止
 成年後見人と本人との間で利害が対立する場合には、後見監督人や特別代理人の選任が必要になります。利益相反行為にも関わらず、行った行為は、無権代理行為となり、無効になります。
●成年後見人の仕事の流れ
 ①成年後見の申し立て
 ②審判確定
 ③財産関係の書類や印鑑の引渡し
 ④財産の調査
  後見監督人が選任されている時には、監督人の立会いのもとに調査を行います。
 ⑤銀行、保険会社、各官庁への届出
 ⑥登記事項証明書の取得
  成年後見人であることを証明するために、法務局で発行してもらいます。1通の取得に当たり550円の収入印紙が必要です。
 ⑦財産目録の作成等
  被後見人の財産調査を行い1ヶ月以内に財産目録を作成して家庭裁判所に提出しなければなりません。
 ⑧年間支出額の予定
  1年間に支出する金額を予定し、収入とのバランスを明らかにします。
 ⑨被後見人の身上監護
 ⑩被後見人が所有する不動産を売却する場合は、その手続きを行います。その際に、居住用の不動産の売却に関しては家庭裁判所に処分許可の申し立てをします。
 ⑪日常の財産管理や身上監護の状況などの後見事務の内容を定期的に家庭裁判所に報告します。
  日常生活の見守り、必要な福祉サービスの利用や病院や施設との契約等、被後見人の生活環境の整備や療養看護に関する手続きを行います。
  施設費・入院費や税金などの費用を支払ったり、年金などを受け取ります。
 ⑫家庭裁判所への成年後見終了報告

●成年後見人の仕事の終了
 ①本人の死亡
 ②成年後見人の死亡
 
③成年後見人の解任
 ④成年後見人の辞任(正当事由と家庭裁判所の許可が必要)
 ⑤被後見人の能力の回復

●終了後の業務
 【死亡届の提出】
 死亡した成年被後見人について、死亡届を提出します。

 【財産目録の作成】
 後見終了後2ヶ月以内に財産目録を作成します。

 【管理の計算】
 後見の任務が終了したとき、2ヶ月以内にその管理の計算をし、その結果を家庭裁判所に報告しなければなりません。
民法第870条(後見の計算)
後見人の任務が終了したときは、後見人又はその相続人は、二箇月以内にその管理の計算(以下「後見の計算」という。)をしなければならない。ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。

 【登記】
 後見人が辞任した場合などは、終了の登記は裁判所の嘱託でなされますが、本人の死亡で後見が終了した場合は、「終了の登記」の申請をしなければなりません。
登記申請書(終了の登記)を東京法務局にある後見登録課へ送ります。
後日、家庭裁判所に報告する際に必要になるので、終了事項が記載された後見登記証明書を取得しておきます。

 【財産の引渡し】
 成年後見人の財産を承継した相続人に対して、速やかに財産を引き渡す必要があります。

 【家庭裁判所への報告】
 成年被後見人が死亡した事実を家庭裁判所に報告します。
報告する内容は、主な業務内容、活動記録、財産の管理状況等などです。
後見等事務報告書、財産目録、通帳のコピー等の証拠資料を提出します。

●成年後見人の辞任
 成年後見人が意味もなく辞任をすると、被後見人等の利益を害する恐れがあります。
被後見人の利益が安定して守られるように、後見人の辞任には「正当な事由」がある場合に限られ、「家庭裁判所の許可」が必要になります。
【正当な事由】
 ①法定後見事務を遂行できえない遠隔地への住居の移転をした場合
 ②老齢・疾病・身体障害などにより職務の遂行に支障が生じた場合
 ③本人またはその親族との不和が生じた場合
 ④成年後見人等の職務が長期間になった場合
 ⑤本人(被後見人等)の死亡
正当な事由がある場合には、家庭裁判所へ、「成年後見人辞任許可審判申立」をします。
辞任した成年後見人は遅滞なく新たな成年後見人を家庭裁判所に請求しなければなりません。通常は、「成年後見人の辞任」の申し立てと同時に「成年後見人選任」の申し立てをすることになります。

●成年後見人の解任
 成年後見人は財産を不当に使い込んだり、家庭裁判所に適切な報告をしないような場合には、成年後見人を解任されます。
民法846条 後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人もしくはその親族もしくは検察官の請求によってまたは職権で、これを解任することができる。

【不正な行為】
 違法な行為または社会的に非難されるべき行為を意味し、主として成年後見人が本人の財産を横領したり、私的に流用するなどの財産管理に関する不正のことです。

【著しい不行跡】
 品行ないし素行が甚だしく悪いことを意味し、その行状が「本人」の財産管理に危険を生じさせるなど、成年後見人としての適確性の欠如を推認させる場合のことです。

【後見人の任務に適しない事由】
 職務怠慢、善管注意義務違反、家庭裁判所の命令違反、被後見人との関係の破綻、後見人の犯罪などがその例になります。

 解任の手続きは、成年後見監督人等、本人、その親族、検察官が、家庭裁判所に対して上記のような行為を理由に成年後見人等の解任を請求する審判の申立を行うか、家庭裁判所が職権によって行います。

●成年後見人の欠格事由
 ①未成年者
 ②家庭裁判所で解任などをされた法定代理人
 ③破産者
 ④被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
  ※原告として訴訟提起した場合のみならず、被告として訴訟をされた場合を含みます。
 ⑤行方の知れない者

選任時には欠格事由がなかったとしても、選任後に、上記の欠格事由が生じた場合も、その時点で後見人としての地位を失います。

●成年後見登記制度
 後見に関する情報をコンピュータシステムにより法務局で登記して、登記事項証明書を発行する制度です。
登記の事務は東京法務局が取り扱います。

●成年後見人の平均報酬相場
 任意後見制度では当事者間の契約で報酬金額が決まります。
親族の後見人における平均報酬額は約2万5千円で、専門職の後見人は約3万円です。
成年後見人の報酬については、決められているわけではありませんので、個々の事案により、家庭裁判所が審判で決定します。2〜6万円程度のなることが多いようです。(参考:東京家庭裁判所大阪家庭裁判所
通常は、1年間に1度か2度、「報酬付与の申立」を家庭裁判所に行います。
 親族の後見人における報酬は家族同士なので、控える方が多いようです。

●成年後見人の付加報酬
 不動産の売却や身上監護等で特別の業務を行った場合や、本人が財産的利益を得た場合には、その分、報酬に反映されます。
成年後見等の報酬付与審判申立てにあたっては、「報酬付与審判申立事情説明書」という書類を添付します。

【付加報酬が認められる例】
・身上監護等に特別困難な事情があった場合
・遺産分割協議
・特別な財産管理行為を行った場合
・居住用財産を売却して療養看護費用を捻出した場合
・保険金請求

【特別代理人】
●登記事項証明書
 登記事項証明書によって、成年被後見人等の住所・氏名、成年後見人等の権限、任意後見契約の内容などが証明されます。
成年後見人等が本人に代わって財産の売買や、介護サービスの契約、銀行などの金融機関で手続きを行う場合など、登記事項証明書を取引先等に提示することにより、その取引相手に確認してもらうことができます。
登記事項証明書の交付を請求できるのは、次の範囲の人です。
 ①本人
 ②本人の配偶者
 ③本人の4親等内の親族
 ④成年後見人等、成年後見監督人等、任意後見人、任意後見監督人
 ⑤職務上必要とする場合、国または地方公共団体の職員

【登記事項証明書の交付申請】
 登記事項証明申請書によって申請を行います。
 登記印紙550円/1通

●登記されていないことの証明書
 後見制度を利用していないことの証明書です。
「登記されていないことの証明書」は、様々な資格申請の際に要求されることがあります。
 登記印紙300円/1通

【交付申請手続き】
 ①郵送による申請方法
 
 宛先
  東京法務局民事行政部後見登録課
  〒102−8226
  東京都千代田区九段南1−1−15 九段第2合同庁舎
  TEL 03−5213−1360(代)
 ②窓口で申請する方法
  各都道府県の法務局本局では窓口で交付申請と証明書の交付を受けることもできます。
 ③インターネットのオンライン申請による方法

 証明書の発行手続きは、東京法務局民事行政部後見登録課、全国の法務局・地方法務局の戸籍課の窓口で行っていますので、直接窓口にて請求するか、郵送の場合は申請書に記載し、必要な登記印紙を添付の上、東京法務局民事行政部後見登録課宛に請求します。

●後見制度支援信託
 被後見人の財産を保護し、将来にわたる生活の安定に資するための信託です。
通常使用しない預貯金について、信託銀行等に預け、特別な支出が必要になった場合は、家庭裁判所の指示があある場合に限定して金銭の交付を受けることとした制度です。
信託契約締結行為自体は、本人ではなく、家庭裁判所が選任した後見人が本人の代理で行います。
契約締結後に状況が変化し、当初の契約を変更したい場合や、解約をする必要がある場合は、後見人は家庭裁判所へ報告し、指示書を得て、信託銀行等との信託契約等を変更・解約することができます。
この制度で信託できる財産は、金銭に限られます。
信託期間中、信託銀行は本人に対して、定期的に報告書を送付します。

法定相続

法定相続

 被相続人が遺言をしておらず、遺産分割協議がまとまらない場合、民法に従って遺産を相続する方法です。

 法定相続人になれるのは、被相続人の「子」「直系尊属」「兄弟姉妹」および「配偶者」です。こらら以外の人は、親族であっても法定相続人とはなりません。

■法定相続分の割合

相続人の構成 相続人 法定相続分 備 考
 配偶者と子   配偶者  1/2  配偶者は常に相続人です。
 子  1/2  さらに子の数で均等割します。
 配偶者と 直系尊属  配偶者  2/3  配偶者は常に相続人です。
 直系尊属  1/3  両親がともに健在であればそれぞれ1/6づつ
 配偶者と 兄弟姉妹  配偶者  3/4  配偶者は常に相続人です。
 兄弟姉妹  1/4  さらに兄弟の数で均等割します。

 ・戸籍上の配偶者は常に相続人になります。

 ・同順位の相続人が複数人いる場合には、その複数人に対して平等の割合で相続分が決められます。

 ・子に関しては、実子、養子、非嫡出子ともに相続分は同じです。

 ・被相続人の子供が既に死亡している場合は、その子供の卑属(子供や孫など)が相続人となります。

 ・相続人が兄弟姉妹のみの場合、半血兄弟姉妹(異父兄弟や異母兄弟)の法定相続分は、全血兄弟の1/2です。

 ・相続放棄があった場合は、初めから相続人でなかったものとみなされます。

 ・配偶者がいない場合は、血族相続人の優先順位の高い順により100%の割合で相続します。

■代襲相続

 被相続人の死亡前に相続人が死亡していたり、相続欠格や相続人の排除があった場合は、そのものの子や孫が代わって相続できます。このことを「代襲相続」といいます。

被相続人の「孫」が代襲相続する立場にいる場合で、その「孫」も先に亡くなっている場合は「ひ孫」が代襲相続します。被相続人から見て直系卑属にあたる方の代襲相続は、どこまでも下の世代が代襲相続することになっています。

相続人が兄弟姉妹の場合は、代襲者はその子供に限られます。

配偶者や直系尊属については、代襲相続は発生しません。

■養子の子

 代襲相続について、被相続人の「直系卑属」でないものは相続人にならないと、民法に定められています。養子の場合は注意が必要です。

被相続人と養子縁組した子が代襲相続できるかは、子がいつ生まれたかで判断します。

 ・養子の子が養子縁組成立以前に生まれていた場合は、養子の子は養親の直系卑属とはならず、養親の遺産を代襲相続できません。

 ・養子の子が養子縁組成立後に生まれた場合は、養親の直系卑属となり、養親の遺産を代襲相続できます。

■嫡出子とは

 ・婚姻中に妊娠をした子供

 ・婚姻中に生まれた子供

 ・婚姻後201日以後に生まれた子供

 ・婚姻中に妊娠し、父親が死亡した後に生まれた子供

 ・離婚後300日以内に生まれた子供

 ・未婚時に出生し父親に認知された子供で、後に父と母が婚姻したとき

 ・未婚時に生まれてから、父母が婚姻し、父親が認知をした子供

 ・養子

 【推定される嫡出子】(民法772条)

 ・妻が婚姻中に懐胎した子

 ・婚姻の成立の日から200日を経過した後に生まれた子(200日目は含まない)

 ・婚姻の解消・取り消しから300日以内に生まれた子(300日目を含む)

 あくまでも推定なので、夫は、子が嫡出子であることを否認することもできます。夫は子の出生を知った時から1年以内であれば、嫡出否認の訴えを起こすことができます。

●離婚または婚姻取り消し後300日以内に生まれた子供について

 民法722条で次のように規定されています。

  1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

  2項 婚姻成立の日から200日を経過したあと、または婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

【推定を覆す場合】

 父と推定されても、実際には遺伝的な父でないものは、嫡出否認の訴えを提起することができます。また、親子関係不存在確認の訴えを起こすことにより、前夫と子のあいだに親子関係がないことを裁判によって確定させることが可能です。

法務省民事局通達では、離婚または取消後300日以内に生まれた子の出生の届出の扱いが、以下のようになっています。

法務省民一第1007号 平成19年5月7日
法務局長 殿
地方法務局長 殿

              法務省民事局長


 婚姻の解消又は取消し後300日以内に生まれた子の出生の届出の取り扱いについて(通達)

婚姻の解消又は取消後300日以内に生まれた子のうち、医師の作成した証明書の提出をすることにより、婚姻の解消または取消後の懐胎であることを証明することができる事案につき、下記のとおり、民法(明治29年法律第89号)第772条の推定が及ばないものとして、出生の届出を受理することとしますので、これを了知の上、貴管課下支局長及び管内市区町村長に周知方取り計らい願います。
なお、本通達に反する当職通達又は回答は、本通達によって変更し、又は廃止するので、念のため申し添えます。


                

1 「懐胎時期に関する証明書」が添付された出生の届出について
(1)届書等の審査
 市区町村長は、出生の届書及び医師が作成した「懐胎時期に関する証明書」(様式は、別紙のとおりとする。)によって、子の解体時期が婚姻の解消または取消後であるかどうかを審査するものとする。
 懐胎時期が婚姻の解消または取消後であるかどうかは、同証明書記載の「懐胎の時期」の最も早い日が婚姻の解消または取消後であるかどうかによって判断する。すなわち、その最も早い日が婚姻の解消または取消の日より後の日である場合に限り、婚姻の解消または取消後に懐胎したと認めるものとし、その最も早い日が婚姻の解消または取消の日以前の日である場合は、婚姻の解消または取消後に懐胎したと認められないものとする。

(2)届出の受理
 市区町村長は、(1)の審査によって婚姻の解消または取消後に懐胎したと認める場合には、民法第772条の推定が及ばないものとして、婚姻の解消または取消時の夫を父としない出生の届出(嫡出でない子または後婚の夫を父とする嫡出子としての出生の届出)を受理するものとする。

(3)戸籍の記載
 子の身分事項欄の記載は、以下の例による。
ア 紙戸籍の場合
 「平成19年6月25日東京都千代田区で出生同年7月2日母届出
 (民法第772条の推定が及ばない)入籍」

イ コンピュータ戸籍の場合
  身分事項
 出生【出生日】平成19年6月25日
  【出生地】東京都千代田区
  【届出日】平成19年7月2日
  【届出人】母
  【特記事項】民法第772条の推定が及ばない


2「懐胎時期に関する証明書」が添付されない出生の届出について
 従前のとおり、民法第772条の推定が及ぶものとして取り扱う。

3 取り扱いの開始について
(1)この取り扱いは、平成19年5月21日以後に出生の届出がされたものについて実施する。
(2)既に婚姻の解消または取消時の夫の子として記載されている戸籍の訂正については、従前のとおり、裁判所の手続を経る取り扱いとする。


4 その他
 本取扱いの実施に当たっては、その目的及び方法について、十分に周知するよう配慮するものとする。

■準正嫡出子

 準正とは、嫡出でない子に嫡出子としての地位を与えることをいい、婚姻準正と認知準正があります。

 ●婚姻準正

  父によって認知された後に父母が婚姻をすることによって嫡出子となることをいいます。

 ●認知準正

  父母の婚姻前に生まれ、父に認知されていなかった子を、婚姻後に父が認知することによって嫡出子となることをいいます。

■非嫡出子とは

 婚姻関係にない男女の間に生まれた子供

■非嫡出子の相続分

 非嫡出子というのは、正式な婚姻をしていない男女の間に生まれた子供のことです。

平成25年9月4日の最高裁判決により、それまで嫡出子の1/2とされていた非嫡出子の相続分の規定は違憲とされ同年12月の民法の改正により、嫡出子と非嫡出子の相続分は同一となりました。

非嫡出子は2パターンに分かれます。

 ・認知されている場合:相続権があります

 ・認知されていない場合:相続権はありません

■半血の兄弟姉妹の相続分

 半血の兄弟姉妹の相続分は、全血の兄弟姉妹の半分とされています。

■認知

 認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、法律上の親子関係を認める意思表示をいいます。

認知をするには、「認知届」を子供の本籍地または住所地の市役所に提出します。

認知の方法には、任意認知、裁判認知、遺言認知の3種類があります。

 ①任意認知

 父親が自発的に自分の子であることを認める認知です。一般的な認知はこの方法によります。

  ・胎児認知:父が母の胎内にある子を自分の子であると認める場合です。

 ②裁判認知

 裁判認知は、子、その直系卑属またはこれらの法定代理人が原告となって、裁判により父親を決定することです。

裁判で父子関係に争いがある場合には、血液検査やDNA鑑定などが行われることがあります。

手続きとして①調停を経る必要がある。②それでも父が認知をしない場合には、裁判を提起する必要があるという特徴があります。

認知の裁判が確定した場合には、提訴したものが確定日より10日以内に裁判の謄本を添えて届出します。

 ③遺言認知

 遺言認知とは、遺言で認知をすることです。

 遺言執行者が就任の日より10日以内に届出を行います。

■胎児も相続人となる

 胎児はまだ人ではありませんが、相続においては法律上、「既に生まれたものとみなす」とされていているため、胎児にも相続権はあります。

ただし、死産だった場合には権利を失います。

このような法律があるため、胎児が出生するまでは、相続放棄または遺産分割協議をすることはできないことになります。

■内縁(事実婚)の妻(夫)の法定相続分

 内縁(事実婚)の妻(夫)の法定相続分はありません。

内縁とは、婚姻届出をせずに事実上の夫婦として暮らす男女の関係をいいます。

婚姻届を提出しないと、法律上の夫婦関係とみなされません。

内縁関係が成立するためには、内縁の夫、妻の両者に婚姻の意思があること、また、夫婦としての婚姻生活の有無や期間、家計を同一にしているか、子の存在などの事情が総合的に考慮されます。

■特別縁故者

 被相続人に法定相続人がいない場合、もしくは相続人はいるが、その全員が相続放棄をしている場合には、被相続人と特別の縁故関係にあったものは、家庭裁判所の申立をして、相続財産の全部または一部を請求することができます。

以下の場合は、特別縁故者として、財産、権利を承継できる可能性があります。

①被相続人と生計を同じくしていたもの

 内縁の妻や夫、事実上の養親子、子の妻など

②被相続人の療養看護に務めた者

 基本的に報酬を受けて療養看護に努めていた看護師や家政婦、付き添い人などは除きますが、対価以上の療養看護を尽くしていた場合には、特別縁故者として認められるケースもあります。

③その他被相続人と特別の縁故があった者

 ①、②に準ずる程度に密接な縁故関係があるものとされており、生前、死後に縁故があった人です。

特別縁故者に対する財産分与は、家庭裁判所の裁量に委ねられています。

また、相続人捜索広告の期間満了後、3ヶ月以内の申立手続きをしなければ、特別縁故者として財産分与請求をすることはできなくなってしまう点にも注意が必要です。

家庭裁判所が一定期間を条件として相続人としての権利を主張できる広告を出し、その猶予期間内に相続人の権利を主張する者が現れなかった場合に、特別縁故者は家庭裁判所に申し立てをすることができます。

内縁関係の相手方へ財産を残すための手段は限られていますので、遺言を残しておくことが有効です。

■生命保険金・死亡退職金

 保険金受け取り請求権は、遺産ではなく、保険金受取人の固有の財産とされています。しかし、不公平とみなされるほどに高額の場合は、特別受益とみなされる場合があります。

死亡退職金についても、一般的には、受給者の固有の権利とされていますが、特別受益とされることもあります。

■血族相続人の優先順位

 第1優先順位  被相続人の直系卑属(子・孫など)
 第2優先順位  被相続人の直系尊属(父母)
 第3優先順位  被相続人の兄弟姉妹

■相続財産法人

 相続人が存在が明らかでない場合、または相続人全員が相続放棄をした場合は、亡くなった方の財産は民法の規定により、「相続財産法人」という一つのまとまりになって、管理され清算されていくことになります。

この相続財産法人に関する手続きは、利害関係人等の請求により家庭裁判所が選任した相続財産管理人によって行われます。

相続財産法人が選任されると、その旨が官報で広告されます。

■相続欠格

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死亡後の手続き

死亡後の手続き

 ■死亡後の手続き一覧表

手続き項目 期 限 手続き先 必要なもの 備 考
死亡届  死亡の事実を知った日から7日以内(国外3ヶ月以内) 死亡地、本籍地、住所地のいずれかの市区町村窓口 死亡診断書届出人の印鑑 届出をすると火葬認可証を発行
死体火葬許可申請書 死亡届と一緒に行う 市区町村窓口 死体火葬許可証申請書 世帯主が死亡したとき
埋葬許可証   市区町村窓口   納骨の時に寺院または墓地管理者に提出する
国民年金 2週間以内 市区町村窓口 印鑑、年金証書 老齢年金死亡届、通算老齢年金死亡届、障害年金死亡届、寡婦年金死亡届、老齢基礎年金死亡届、障害基礎年金死亡届、遺族基礎年金死亡届
厚生年金 10日以内 社会保険事務所 印鑑、年金証書 老齢年金死亡届、通算老齢年金死亡届、障害年金死亡届、遺族年金死亡届、通算遺族年金死亡届、特例老齢基礎年金死亡届、特例遺族年金死亡届、老齢厚生年金死亡届、障害厚生年金死亡届、遺族厚生年金死亡届
世帯主変更届 14日以内 市区町村窓口   故人の子供が世帯主になる場合
国民健康保険証 すみやかに 市区町村窓口 死亡者の国民健康保険被保険者証  
健康保険証 すみやかに 故人の勤務先 被保険者証  
遺族基礎年金請求 5年以内 市区町村の国民年金課、社会保険事務所 請求書、印鑑、世帯全員の住民票の写し、戸籍謄本、除籍謄本、死亡診断書、死亡者の年金手帳 死亡者、受取人により遺族給付が変わります
寡婦年金請求 5年以内 市区町村の国民年金課、社会保険事務所 請求書、印鑑、世帯全員の住民票の写し、戸籍謄本、除籍謄本、死亡診断書、死亡者の年金手帳 死亡者、受取人により遺族給付が変わります
死亡一時金請求 2年以内 市区町村の国民年金課 印鑑、住民票、戸籍謄本、除籍謄本、死亡者の年金手帳 加入者が死亡し何の年金も受けられない時
遺族厚生年金
 
5年以内 社会保険事務所 印鑑、世帯全員の住民票の写し、戸籍謄本、除籍謄本、死亡診断書、死亡者の年金手帳  厚生年金加入者が在職中に亡くなったとき
遺族共済年金
健康保険の埋葬料 2年以内 健康保険組合又は社会保険事務所 印鑑、健康保険証、死亡診断書、振込先口座番号  
船員保険の葬祭料・家族葬祭料請求 葬儀から2年以内 健康保険組合又は社会保険事務所 印鑑、請求書、船員保険証、死亡診断書、振込先口座番号 船員保険に加入していた場合
国民健康保険の葬祭費 2年以内 市区町村の窓口 印鑑、保険証、振込口座番号、葬儀社の領収書 国民健康保険や後期高齢者医療の被保険者が死亡したとき
健康保険証の返却・変更 すみやかに     高齢受給者証、介護保険被保険者証など
被扶養者の国民健康保険加入 すみやかに     家族が故人の健康保険の被扶養者だったとき
厚生年金受給権者死亡届 10日以内 社会保険事務所    
高額医療費の申請 2年以内 健康保険組合又は社会保険事務所市区町村の国民健康保健課 申請書、印鑑、健康保険証、自己負担した医療費の領収書、振込先口座番号 70歳以上の人は申請手続きをしなくても、公費負担分が差し引かれた自己負担限度額のみが請求されます
社会保険の埋葬料 2年以内 社会保険事務所 印鑑、保険証  
労災保険の葬祭料 2年以内 労働基準監督署 印鑑、死亡診断書 業務上の死亡事故
労災保険の遺族補償年金 5年以内 労働基準監督署 請求書、印鑑、住民票、戸籍謄本、除籍謄本、死亡診断書、源泉徴収票等 業務上の死亡事故または通勤途上事故
簡易保険金 5年以内 郵便局 印鑑、戸籍謄本、除籍謄本、死亡診断書、保険証書、最終支払保険料領収書  
失業保険   公共職業安定所    
生命保険金 3年以内 生命保険会社 死亡保険金請求書、印鑑、保険金受取人の印鑑証明証、戸籍謄本、死亡診断書、保険証書、最終支払いの保険料領収書  
入院保険金の請求   保険会社 入院証明書、入院保険請求書  
銀行預金の解約・名義変更 すみやかに 銀行 依頼書、印鑑、戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、遺産分割協議書、通帳 金融機関が死亡事実を知ったときは相続手続き完了までは支払い手続きは停止される
郵便貯金の解約・名義変更 すみやかに 郵便局 印鑑、戸籍謄本または相続したことを証明する書類、通帳  
不動産の名義変更 すみやかに 法務局 印鑑、登記申請書、住民票、戸籍謄本、除籍謄本、遺産分割協議書 固定資産評価証明書に基づいて相続税がかかります
株券、社債、国債 すみやかに 証券会社・信託銀行など 名義書換請求書、印鑑、印鑑証、明書、戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本、株券等 無記名債権でもマル優扱い等所有者の名義が関係している場合があります
自動車所有権移転 15日以内 陸運局事務所 申請書、車検証、被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、遺産分割協議書、相続人の委任状、自動車税申告書、手数料納付書  
運転免許証の返却   公安委員会 届出人の身分証明書、死亡届、戸籍謄本  
印鑑登録カード・無料バス権の返却   市区町村窓口    
ゴルフ会員権の名義変更   ゴルフ場   名義書換料がいる場合もある
年金受給停止 10日以内 社会保険事務所または市区町村の国民年金課 年金受給権者死亡届、年金証書または除籍謄本等 保険会社によって必要書類が違う
未支給年金請求 すみやかに 市区町村窓口     
特別障害者手当
障害児福祉手当
経過的福祉手当
すみやかに 市区町村窓口 印鑑  
自立支援医療 すみやかに 市区町村の福祉課   受給者証を持っている人
身体障害者手帳 すみやかに 市区町村の福祉課 印鑑、身体障害者手帳  
精神障害者保健福祉手帳 すみやかに 市区町村の福祉課 精神障害者保健福祉手帳  
療育手帳     印鑑、療育手帳 療育手帳を持っている人
介護保険資格喪失届 14日以内 市区町村の福祉課 印鑑、被保険者証 介護保険料を再計算して過不足を精算します
雇用保険受給者資格者証の返還 1ヶ月以内 受給していたハローワーク 受給者資格証、死亡診断書、住民票など 雇用保険を受給していた場合
犬の登録事項変更 新しい所有者が決まった時 市区町村の窓口 犬鑑札  
印鑑登録証の返還 すみやかに 市区町村の窓口 印鑑登録証  
住民基本台帳カードの返還 すみやかに 市区町村の窓口 住民基本台帳カード  
死亡退職届
身分証の返却
退職金や給与の受け取り
健康保険証の返却
      個人が在職中であった場合
児童扶養手当認定請求書 世帯主変更届と同じタイミング 市区町村窓口 印鑑、戸籍謄本 母子家庭や父子家庭に支給される手当
遺言書の検認 すみやかに 家庭裁判所 遺言書原本、遺言者の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、受遺者の戸籍謄本 自筆証書遺言があるとき
相続の放棄 相続の開始を知った時から3ヶ月以内 家庭裁判所 相続放棄申述書  
所得税の準確定申告 4ヶ月以内 税務署 申告書、印鑑 源泉徴収している場合は必要がない
相続税の申告 10ヶ月以内 税務署 申告書、印鑑、印鑑証明書、住民票、戸籍謄本  
医療費控除による税金の還付請求 5年以内 税務署 印鑑、相続人の戸籍謄本、支出を証明する領収書  
会社役員の変更登記 2週間以内 法務局 新代表者の印鑑及び印鑑証明証、除籍抄本、取締役会議事録、株主総会議事録  
上下水道変更届 すみやかに 市区町村窓口 印鑑、印鑑証明書、除籍抄本 口座登録がある場合は、口座の変更
電気、ガス  すみやかに 最寄りの各営業所 印鑑、住民票、戸籍謄本 契約名義変更、支払い方法の変更
借地・借家の契約書の書き換え   地主・家主    
NHK受信料 すみやかに NHK   契約名義変更、支払い方法の変更
上下水道・電気・ガス・NHK等の引落し口座の変更   銀行・郵便局    
購読新聞 すみやかに 最寄りの営業所   契約名義変更、支払い方法の変更
固定電話 すみやかに NTT 印鑑、電話加入権承継届、戸籍謄本 契約名義変更、支払い方法の変更
携帯電話の解約 すみやかに 携帯電話会社 電話加入承継届等  
クレジットカードの解約 すみやかに クレジットカード会社    
インターネットや携帯電話        
同居者異動明渡し手続き すみやかに 市区町村窓口    
パスポートの返却   都道府県庁の旅券課    

人の死後、遺族がしなければならない手続きは多くあります。

1.葬儀関係

2.届出関係

 ■「死亡届」の提出

  死亡届は火葬(または埋葬)許可証を受け取るために提出する必要があります。正当な理由なく届出が遅れた場合、戸籍法によって3万円以下の過料を徴収されます。この届出が受理されて初めて住民票に死亡が記載されます。

死亡届は、交付された死亡診断書(死体検案書)の左頁にあり、一枚の用紙になっています。

 期限:届出義務者が、死亡の事実を知った日から7日以内(国外にいる場合は3ヶ月以内)

 届出義務者

  1.親族

  2.その他の同居者

  3.家主、地主または家屋もしくは土地の管理人、後見人

  4.同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人及び任意後見人

   の順番です。 

手続き先:死亡した場所、死亡者の本籍地、届出人の住所地のいずれかの市区町村役場。

必要なもの:医師による死亡診断書(警察による死体検案書)、死亡届、届出人の印鑑(認印可)、国民健康保険被保険者証(加入している場合のみ)

手数料:提出は無料。死亡診断書の作成は有料。

備考:市区町村役場では、365日24時間受け付けられます。葬儀社による代理届けもできます。ただし、夜間や土日祝日などで窓口がしまっている場合は、「提出」のみで「受付」はしていない自治体もあります。その場合は、火葬に必要な火葬許可証の発行をしてもらうために、開庁後に再訪する必要があります。

■埋火葬許可申請

 埋火葬許可及び斎場利用許可の申請は、死亡届と一緒に受け付けられます。

火葬が終了した後、埋葬許可証となって遺族の手元に戻ってきます。

死亡後24時間以内は火葬してはならないことになっています。

●死亡診断書

 死亡の届出に添付される書類の一つです。

診療継続中の患者が当該診療に係る傷病で死亡した場合に、病院の医師が死亡を確認した後、その証明書として発行するのが「死亡診断書」です。死亡診断書には、死亡者の氏名・性別・生年月日や、死亡時刻・死亡場所・死因・手術の有無、診断年月日、医師の署名等が書かれています。

自宅で亡くなった場合は、かかりつけの医師に連絡して自宅に来てもらうか、119番通報をして病院へ運んでもらった後、死亡を確認した医師に死亡診断書を書いてもらいます。

 用紙は多くの場合、医師や葬儀会社が持っています。もし無い場合は、役所の戸籍係の窓口に死亡届と合わせて一枚になった用紙(全国共通です)が置いてあります。

死亡診断書の用紙の左半分は「死亡届」用紙となっています。

死因が「自然死」「死因が明確な死」の場合は死亡診断書になります。例えば、自宅療養中や入院中の死亡、老衰死などがそれにあたります。

 死亡診断書(死体検案書)は、医師や歯科医だけが作成できる書類です。有料です。

 被相続人が生命保険の被保険者になっていた場合は、受取人は「死亡保険金」を請求することになりますが、その際には死亡診断書のコピー等が必要になります。

●死体検案書

 死亡の届出に添付される書類の一つです。

死因が、事故死、転落死、中毒死、溺死、突然死、自殺、他殺、他因死、原因不明の死の場合、発見時や病院到着時に死亡していた人や診療中の人でも診療中の疾病・傷害以外で死亡した場合に死体を改めて検案した後、医師(監察医や警察医)が死亡診断書の代わりに死体検案書を作成します。

司法解剖や行政解剖が行われた時も検案書です。

●検視

 医者が死体を異常死と判断し、警察署に届け出た後に、警察官あるいは検察官によって行われる。届出のあった死体とその周囲の状況を捜査し、犯罪性の有無の判断を行います。犯罪性が認められれば司法検視が行われ、犯罪性がないと判断されれば行政検視が行われます。ちなみに、司法検視は、捜査ではないので令状はいりません。

これらを経て、「非犯罪死体」であるとされれば、遺族へ死体の引渡しがなされます。

一方、検視を通じて犯罪による死亡が明らかになった、またはそれが疑われる場合や、犯罪によるものかが判断できない場合には、捜査が開始され鑑定処分がなされます。

解剖部位には制限がなく、執刀医の判断でどこでも検査をすることができます。不十分な検索のみで終わってしまった場合、執刀医が批判を受けることもあり、執刀医の責任は重いものになります。

●行政解剖

 各種の事情でかかりつけの医師がいない場合や死因の判明しない犯罪性のない異状死体に対して、死因の究明を目的として、監察医もしくは警察の指定する医師により行われる解剖を、行政解剖といいます。

犯罪性の疑いがある場合は司法解剖になります。

行政解剖は検案の当日か翌日には終わり、遺体は遺族に引き渡され、死体検案書も発行されますが、これは役所に提出するためのもので、死因の特定には2ヶ月程度を有するると言われています。

●司法解剖

 検視または検案によって犯罪性があると認められた場合は、刑事訴訟法に基づいて司法解剖が行われます。

法律上は、裁判所から「鑑定処分許可状」の発行を受ければ、遺族の同意が得られなくても強制的に行うことが可能ですが、ほとんどが遺族への心情的配慮から、遺族の了承を得た上で解剖が行われています。

●病理解剖(剖検)

 病院で患者が死亡した場合、死因の特定、病態の解明、病態の進行状況、治療効果などを確かめるために病理医が行う解剖。医学の発展のための解剖なので、遺族の承諾が必要です。

■年金受給停止の手続き

 故人が国民年金や厚生年金を受給していた場合は、「年金受給権者死亡届」を提出して、受給を停止する手続きをとらなければいけません。

この手続きをしないままでいると、年金は支払い続けられますが、本人の死亡の事実が分かった時点で、全額を一括して返却しなければならなくなります。

 ・期限:死亡後速やかに(国民年金は14日以内)

■公的年金の受け取り

 Ⅰ 遺族年金

  遺族年金とは、年金に加入中の人や加入していた人が亡くなった時、残された遺族に対して支給される公的年金のことです。

厚生年金や共済年金は国民年金に上乗せしている「2階建て」の年金制度なので、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給されます。

遺族基礎年金を受け取ることができる遺族は、「子のある配偶者」又は「子」となっており、子がいない妻には遺族年金が支払われないということになってしまいます。その救済策として支給されるのが「寡婦年金」と「死亡一時金」です。

「遺族基礎年金」と「寡婦年金」と「死亡一時金」のうち受け取ることができるのはどれか1つだけです。どれを受け取るのがよいかは、個々の状況によって違ってきます。

 ■遺族年金の受給要件 

  ●被保険者の要件

   ①国民年金被保険者である人(保険料免除期間を含みます)

   ②国民年金被保険者であった人で、日本国内に住所を有し、かつ60歳以上65歳未満の人

   ③老齢基礎年金の受給権者

   ④老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている人

    ※①②の場合は、さらに次の保険料納付要件を満たすことが必要です。

   「亡くなった日の前々月までの被保険者機関のうち、保険料納付済み期間(保険料免除期間を含みます)が加入期間の2/3以上あるか、亡くなった日の前々月までの1年間に保険料の滞納がない(保険料免除期間を含む)こと」

国民年金の滞納分については、後納することができます。平成30年9月までは、過去5年間さかのぼって納付することができます。

■支給を受ける者の要件

 遺族年金を受けることが出来るのは、死亡したものによって生計を維持されていた、「子のある配偶者」または「18歳に到達する年度の末日(3月31日)を経過していない子、20歳未満で障害者等級1級又は2級の子、かつ現に婚姻をしていないこと」です。

なお、被保険者または被保険者であった者の死亡当時に胎児であった者は、死亡した者によって生計を維持されていた者とみなし、配偶者はその胎児と生計を同じくしていた者とみなし、胎児の出生後は、当配偶者および子に遺族基礎年金の受給対象とされています。

18歳未満でも結婚している子は、「子」とみなしません。

「配偶者」(事実婚を含む)については、次の要件に該当する「子」(死亡したものの法律上の子のみで、配偶者の連れ子など事実上の子は含まない)と生計を同じくすること。配偶者の年齢は問いません。配偶者は、戸籍上の配偶者だけでなく、内縁関係にあるものも含まれます。

遺族厚生年金のみを受給している妻が再婚をすると、遺族厚生年金の受給権は消滅します。

※「生計維持」の認定については、亡くなった人と生計を同じくしており、年収850万円未満の収入要件を満たす必要があります。なお、受給権取得後に当該収入を有するに至っても失権することはありません。

■遺族基礎年金の支給額

 遺族基礎年金の金額は、支給要件を満たしていれば被保険者支払った掛金の総額に関係なく、一定の金額が支給されます。

 ●子のある妻に支給される額

  基本額:780,100円

  子の加算額:(1人目と2人目):224,500円

  子の加算額:(3人目以降、1人につき):74,800円

 ●残されたのが子のみの場合

  1人の場合:780,100円

  2人の場合:加算額224,500円→1,004,600円

  3人の場合:加算額299,300円→1,079,400円

  以降、子1人につき,74,800円加算。

●遺族年金の請求

 ①年金請求書の提出先

  年金事務所または市区町村の国民年金担当窓口

  ・亡くなった人が国民年金だけに加入していた場合は市区町村窓口

  ・亡くなった人が厚生年金保険へ加入していた場合は年金事務所

  ・亡くなった人が第3号被保険者だった場合は年金事務所


 ②遺族年金の請求手続きに必要な書類

  ・遺族給付裁定請求書

  ・年金手帳・基礎年金番号通知書

  ・年金証書・恩給証書(受給権がある物すべて)

  ・死亡診断書、死体検案書等(コピー可)

  ・印鑑(認印可)

  ・戸籍抄本、戸籍謄本、戸籍全部事項証明書(亡くなった人と請求者との関係を見る)

  ・住民票(生計維持証明)

  ・住民票の除票

  ・年金加入期間確認通知書

  ・所得証明書・課税(非課税)証明書・源泉徴収票等

  ・未支給年金・保険給付請求書

  ・預金通帳(請求者名義のもの)

  ・在学証明書・学生証

  ・健康保険被保険者証・共済組合員証

  ・亡くなった人の死亡原因が第三者行為による場合は、証明書類

  ・委任状(代理人が手続きをするとき)

■前払一時金

 死亡直後の様々な出費を援助するため、遺族補償年金には前払い制度があります。

 ・遺族補償年金は、毎年各支払い期月ごとに支給されるのを原則としますが、給付基礎日額の1000日分を限度とする一時金を年金の前払金として受けることもできます。

■年金額の減額改定

 2人以上いる子の内の1人を除いた他の子が次のいずれかに該当したときは、翌月から減額される。

 ①死亡したとき

■支給期間:子が18歳になるまで

■請求期限:5年以内

■請求に必要なもの:年金手帳

■養子縁組

 遺族年金の受給権がある子は養子になった時には失権となりますが、例外的に直系血族もしくは直系姻族との養子縁組の場合は例外的に失権しません。従がって、親の再婚相手の養子となっても遺族年金を受給できます。

■離婚後の遺族年金

 離婚後に死亡した場合は、元配偶者に遺族年金の受給権は発生しません。しかし、子の受給権は両親の離婚に影響されることはありません。死亡した父または母によって死亡時に「生計維持関係」があれば、離婚後であっても受給権はあります。

「生計維持関係」を証明するためには、養育費などが確認できる通帳や領収書が必要になります。

元夫が第二号被保険者で再婚をしていない、または再婚をしていても子供がいなくて、実子が18歳未満(障害者は20歳未満)の場合では、元妻は元夫の遺族厚生年金を受給できる可能性があります。

遺族年金を受給している間は児童扶養手当を受け取ることはできません。平均報酬月額が32万円未満の場合は児童扶養手当の方が多く貰えます。

■生計維持認定対象者と生計同一認定対象者

 社会保険の給付要件として、生計維持関係の認定が必要な場合と単に生計同一の認定で足りる場合に分けられます。

 ●生計維持関係の認定が必要な場合

  ①老齢基礎年金の振替加算等の対象となる者

  ②障害基礎年金(国民年金法等の一部を改正する法律による改正前の国民年金法による障害年金を含む)の加算額の対象となる子

  ③障害厚生年金の配偶者加給年金の対象となる配偶者

  ④昭和60年改正法による改正前の厚生年金保険法による障害年金の加給年金額の対象となる配偶者及び子

  ⑤遺族基礎年金の受給権者

  ⑥昭和60年改正法による改正後の国民年金法による寡婦年金の受給権者

  ⑦老齢厚生年金の加給年金の支給対象となる配偶者及び子

  ⑧遺族厚生年金(昭和60年改正法による改正後の厚生年金保険法による特例遺族年金を含む)の受給権者

  ⑨昭和60年改正法による改正前の船員保険法による障害年金の加給年金額の対象となる配偶者及び子

 ●生計同一認定で足りる場合

  ①遺族基礎年金の支給要件及び加算額の対象となる子

  ②死亡一時金の支給対象者

  ③未支給年金及び未支給の保険給付の支給対象者

Ⅱ 遺族基礎年金

 国民年金加入中に死亡または老齢基礎年金の受給資格を満たしていた人が亡くなった場合に、亡くなった人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取ることができます。

生計が維持されていたことを証明するためには、原則として遺族の年収が850万円未満であることが収入の要件になります。

公的年金の「子」の定義は、18歳年度末までで、婚姻をしていないことです。

死亡した人については、保険料納付済みの期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あることが条件となっています。


 ●受給資格  

  ①国民年金の被保険者が亡くなったこと  

  ②被保険者であった人で日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人が亡くなったとき  

  ③死亡日の2ヶ月前までの加入期間の3分の2以上、保険料が納付済みであること。死亡した月の2か月前までの1年間に保険料の未納がないこと(厚生年金や共済年金については、滞納期間はありません)    

  ④25年以上保険料を収めていること  

  ⑤老齢基礎年金や障害年金の受給権者が亡くなったこと

●支給額

 遺族基礎年金の支給額は、支給条件を満たしていれば被保険者が支払った掛金の総額や保険料納付済み期間等にかかわらず、老齢基礎年金の満額と同じ額が支給されます。

平成28年度は、780,100円です。

子の加算額

 1人の場合:224,500円

 2人の場合:449,000円

 3人の場合:523,000円(3人目以降は、1人につき74,800円加算)

受給権者に変化が生じた場合は、その翌月から増額・減額の改定が行われます。

●請求期限:5年以内

●請求に必要なもの

●遺族基礎年金の支給停止

 ①死亡により、労働基準法の規定による遺族保障を受けられるときは、死亡の日から6年間停止となります。

 ②労災保険の遺族(補償)年金が支給されるときは、遺族基礎年金は全額支給され、支給の調整は労災保険側で行われます。

 ③遺族基礎年金の受給権者の所在が1年以上明らかでないときは、他の受給権者の申請により、その所在が明らかでなくなった時にさかのぼって、その支給が停止されます。

 ④遺族基礎年金の受給権を有する子供が2人以上ある場合において、そのうち1人以上の子供の所在が1年以上明らかでないときは、その子供に対する遺族基礎年金は、他の子供の申請によって、その所在が明らかでなくなった時にさかのぼって支給停止されます。

 ⑤子供の母が遺族基礎年金の受給権を有する時、またはその子供と生計を同じくする父または母が居る場合(親が再婚した時など)に支給は停止されます。

■遺族基礎年金の失権

 ●妻の失権事由

  ①受給者の死亡

  ②受給者の婚姻(事実婚を含みます、この後、離婚したとしても受給権は復活しません)

  ③養子(事実上の養子を含む)となったとき(祖父母など、直系血族、直系姻族の養子になる場合を除く)

 ●妻のすべての子が以下のいずれかに該当すると妻も失権する事由

  ①死亡したとき

  ②婚姻した場合

  ③養子(事実上の養子を含む)となったとき(祖父母など、直系血族、直系姻族の養子になる場合を除く)

  ④離縁により亡くなった者の養子ではなくなった場合

  ⑤18歳に達した日以後の3月31日が終了したとき

Ⅲ 寡婦年金

 子がいない妻には遺族年金が支払われないことになっています。夫自身が老齢年金を受け取ることなく死亡し、妻にも遺族年金が支給されないという、いわゆる「掛け捨て」の状況の救済策として支給されるのが「死亡一時金」と「寡婦年金」です。

 寡婦年金は、自営業者が保険料を収めた期間が25年(300月)以上あり、被保険者と婚姻期間が10年以上ある妻に対して、60歳から65歳になるまでの5年間に、夫が受け取れたであろう老齢基礎年金額の4分の3(付加年金は含まれません)が支給されます。

仮に、保険料を30年間(360月)納付していたとすると、44万円になります。

妻が死亡し、夫が生存している場合には、寡婦年金は支給されません。

妻が再婚した場合には支給は終了します。

妻自身の老齢厚生年金を60歳から受け取ることができる場合は、自身の老齢厚生年金か寡婦年金のどちらかを選択することになります。

■受給要件

 ・死亡した夫は、第1号被保険者としての保険料納付済み期間と保険料免除期間を合わせて25年以上の年金期間があること。

 ・夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受給したことがないこと。

 ・10年以上結婚していた妻であること。

 ・妻が、妻自身の老齢基礎年金を繰り上げ受給していないこと。(繰り上げ受給をした場合でも死亡一時金を受け取る要件には影響を与えません)

 ・妻が、夫によって生計を維持されていたこと。

 ・夫の死亡時に、妻は65歳未満であること。

■請求期間 5年以内 

■失権

 ・65歳に達したとき

 ・死亡したとき

 ・婚姻(事実婚を含む)をしたとき

 ・直系血族・直系姻族以外の養子(事実上の養子を含む)になったとき

 ・繰上げ支給の老齢基礎年金を受給したとき

■支給停止

 ①夫が死亡した時、妻がまだ60歳前である場合

  妻が60歳に達した月の翌月から寡婦年金が支給されますが、それまでは支給が停止されます。

 ②労働基準法の遺族補償を受けることが出来る場合

  労働基準法による遺族補償が行われるときは、死亡日から6年間、寡婦年金の支給を停止される。

Ⅳ 死亡一時金

 国民年金の保険料を「3年以上納めた人」が、老齢基礎年金・障害基礎年金の両方とも受給しないまま亡くなった時に、生計を共にしていた遺族(家族)へ支払われます。保険料の掛け捨てを防止する意味合いがあります。

死亡一時金の額は、保険料を収めた月数に応じて120,000円〜320,000円です。

なお、毎月の保険料と付加保険料(毎月400円を別納)を3年以上納めた人が死亡した場合は、上記の金額に8,000円がプラスされます。

死亡一時金を受けることのできる権利の時効は、死亡日の翌日から2年です。

 ●受給順位:①配偶者 ②子 ③父母 ④孫 ⑤祖父母 ⑥兄弟姉妹

 ●請求期限:2年以内

 ●支給要件

 【死亡した者の要件】

  ①死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者(任意加入被保険者・特例任意加入被保険者を含む)期間にかかる保険料納付期間の月数と保険料半額免除期間の月数の2分の1に相当する月数とを合算した月数が36月以上あること  

  ②死亡したものが老齢基礎年金、障害基礎年金を受給したことがないこと

 【遺族の要件】

  ①遺族基礎年金を受け取ることができる遺族がいないこと

  ②死亡した者の死亡当時に、そのものと生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹であること

●死亡一時金の額(平成28年度)

保険料を納付した月数 一時金額
 36月以上180月未満  12万円
 180月以上240月未満  14.5万円
 240月以上300月未満  17万円
 300月以上360月未満  22万円
 360月以上420月未満  27万円
 420月以上  32万円

※付加保険料納付済み期間が3年以上ある場合は、上記金額に8,500円が加算されます。

●死亡一時金と寡婦年金

 国民年金の死亡一時金が支給される時に、死亡した者の妻に対して寡婦年金の受給権も発生することがあります。この場合は、いずれか一方を選択することになります。通常は寡婦年金を選択します。

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死亡後の手続き2

Ⅴ 遺族厚生年金

 遺族厚生年金は、厚生年金加入者の遺族に支給される遺族年金です。

再婚等の失権理由に該当しなければ、一生受け取れる年金です。

亡くなった時点で厚生年金に加入し、尚且つ未納がない場合に、遺族厚生年金を受けることができます。子供がいる場合、全員の子供が高校を卒業するまで遺族年金も上乗せされます。

厚生年金の被保険者は、1階部分の国民年金と2階部分の厚生年金の両方に加入していることになります。自営業者など、国民年金のみに加入している人の遺族は遺族基礎年金だけを受け取りますが、遺族厚生年金受給者は遺族基礎年金の要件に該当すれば遺族基礎年金も併せて受給できます。

遺族厚生年金は、遺族基礎年金と同じように、保険料納付期間が、国民年金加入期間の3分の2以上あること、もしくは、死亡日の2か月前までの1年間に、保険料の滞納がないことがが必要です。

老齢厚生年金、障害厚生年金を受給している方が亡くなった場合、保険料納付要件はありません。

死亡一時金と遺族厚生年金は両方受け取りが可能です。

■亡くなった人の要件

 ①厚生年金の被保険者が死亡した。

 ②被保険者だった人が、被保険者期間中、初診日のある疾病が原因で、初診日から5年以内に死亡した。

 ③1級または2級の障害厚生年金または障害共済年金を受給(①から③を短期要件といいます)していた人が死亡した。

 ④老齢厚生年金を受給していたり、受給資格期間を満たした者または退職共済年金の受給権者が死亡した。

 ⑤保険料納付済み期間と保険料免除期間を合算した期間が25年以上あるものが死亡した。

  これらのいずれかを満たしていることが必要です。

 上記④⑤に該当する場合は「長期要件」といいます。

■遺族厚生年金を受給できる遺族

 被保険者が死亡した時に生計維持されていた配偶者、子、父母、18歳未満の孫、祖父母の順です。なお、夫、父母及び祖父母については、被保険者の死亡時に55歳以上であることが必要(支給は60歳から)です。

これらのうち、最も先順位者に該当する者のみを遺族として認定します。遺族基礎年金よりも、遺族厚生年金の方が遺族の範囲が広くなっています。

 ●「生計を維持されていた」とは、以下の2点の両方を満たすことが必要です。

  ①死亡したものと死亡時に生計を共にしていた

  ②恒常的な収入が将来にわたって年額850万円以上にならないと認められる場合

■遺族厚生年金の年齢要件(被保険者の死亡時点の年齢)

 1.妻は年齢に関わらず受給できます

  ただし、夫の死亡時に妻が30歳未満で、遺族基礎年金の受給権の対象となる子供のいない妻に対する遺族厚生年金は5年間の有期給付です。

 2.子、孫は18歳の年度末まで(障害等級1級または2級の場合は20歳まで)受給できます。

 3.夫、父母、祖父母については被保険者が死亡時に55歳以上であること

■再婚

 遺族となった妻または夫が再婚(事実婚を含む)したときは、遺族年金は失権しますが、親の離婚が原因で子が失権することはありません(遺族基礎年金の受給は停止されますが、18歳到達年度の末日を経過するまでは遺族厚生年金を受給できます)。

事実婚や内縁の関係による不正受給のまま放置してそれが発覚すれば、多額の返還を求められます。

死別して旧姓に戻すだけであれば、遺族年金の受給対象者から外れません。

復籍も遺族年金の権利はなくなりません。

受給権の失権は支給停止と異なり、失権事由がなくなっても(再婚相手との婚姻関係が終了しても)、年金の権利が復活することはありません。

遺族年金の受給権がある子は養子になった時に失権となりますが、直系姻族との養子縁組の場合は例外的に失権しません。

■遺族厚生年金の年金額

  遺族基礎年金は受け取る金額が定額ですが、遺族厚生年金は、報酬比例という月収ごとの計算をするため、人により金額が異なります。さらに中高年寡婦加算などの加算金が付く場合も有り、手厚い保護が受けられます。

遺族厚生年金は、加入後すぐに亡くなっても、25年加入していたものとみなされます。

遺族厚生年金がいくらもらえるのかについては、日本年金機構:遺族厚生年金を参考にしてください。

 遺族厚生年金には、被保険者期間の月数を最低300月として年金額を計算する場合(短期の遺族厚生年金)と、実際の被保険者期間の月数で計算する場合(長期の遺族厚生年金)とがあります。

■受給期間

 制限がありません。ただし、子がいない30歳未満の妻の場合は、5年間のみという制限はあります。

■請求期限:5年以内

■手続き窓口:年金事務所または年金相談センター

■遺族厚生年金の支給停止

 遺族厚生年金の支給が停止されるのは以下の場合です。

 ①労働基準法による遺族保障を受けられるときは、死亡の日から6年間、支給停止されます。

 ②受給者が夫、父母または祖父母である場合は、60歳に達するまで支給停止となります。

 ③短期要件の遺族厚生年金の受給権者が、同一の事由による遺族共済年金の支給を受けることができるとき。

 ④受給者が配偶者および子である場合は、子に対する支給は停止し、配偶者に支給します。

 ⑤妻に遺族厚生年金の受給権がなく、子に受給権があるときは、その間支給停止されます。

 ⑥夫に対する遺族厚生年金は、子に受給権がある間、支給停止されます。

 ⑦配偶者または子に対する遺族厚生年金は、その配偶者または子の所在が1年以上明らかでないときは、遺族厚生年金の受給権を有する子または配偶者の申請によって、その所在が明らかでなくなった時にさかのぼって、その支給が停止されます。

■遺族厚生年金の失権 

 ●妻の失権事由  

  ①受給者の死亡  

  ②受給者の婚姻(事実婚を含みます、この後、離婚したとしても受給権は復活しません)  

  ③養子(事実上の養子を含む)となったとき(祖父母など、直系血族、直系姻族の養子になる場合を除く)   

  ④子のいない30歳未満の妻が遺族となり、5年が経過したとき

 ●妻のすべての子が以下のいずれかに該当すると妻も失権する事由  

  ①死亡したとき  

  ②婚姻(事実婚を含む)した場合

  ③養子(事実上の養子を含む)となったとき(祖父母など、直系血族、直系姻族の養子になる場合を除く)

  ④妻と生計を同じくしなくなったとき

  ⑤離縁により亡くなった者の親族ではなくなった場合

  ⑥18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき(子に障害等級の1級または2級に該当する障害がある場合には、20歳になったとき)

  ⑥障害等級に該当する障害状態にあった者が、その事情が止んだ時

 ●父母、孫、または祖父母について

  被保険者または被保険者であった者の死亡の当時胎児であった子が出生したとき

■中高齢の寡婦加算

 子のいない妻か、子がいても年齢制限を超えている場合には、妻は遺族厚生年金を受給することはできますが、遺族基礎年金を受給することができません。遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給している妻との公平性を保つため、遺族厚生年金のみを受給している妻には一定の要件を満たす場合に限り、中高齢寡婦加算が支給されます。

子のいない妻が40歳以上である場合に、65歳になるまでの間、受け取ることのできる遺族厚生年金が中高齢寡婦加算です。また、遺族厚生年金の権利取得時に40歳未満である妻は、40歳になっても中高齢加算はなされません。

妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるため、支給は打ち切られます。

【支給要件】

1.在職中の死亡。

2.在職中の初診日から5年以内の死亡。

3.厚生年金加入者である夫が亡くなったとき、妻が40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいないため、遺族基礎年金が支給されない妻であること。

3.死亡した夫が長期要件による遺族厚生年金の場合は、夫の厚生年金被保険者期間が20年以上であったこと。

3.40歳になった時、子がいるため遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されている妻が、生計を同じくしている子が18歳到達年度の末日に達した(障害等級1級又は2級で20歳に達した)ため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。

4.40歳未満で同時に遺族基礎年金の権利を取得した妻。

中高齢寡婦加算が支給されないケース

 ①

【支給期間と加算額】

中高齢寡婦加算は妻が40歳から65歳になるまでの間、支給されますが、遺族基礎年金が支給されている間は支給停止になります。

支給金額は、遺族基礎年金の額に3/4を乗じて得た金額(年額585,100円=平成28年4月〜)です。

夫が国民年金のみに加入している場合には、中高年の加算はされません。

妻が死亡したときの夫には支給されません。

遺族厚生年金の受給権は、本人の死亡の他、再婚(事実婚も含む)や養子縁組によって死亡した被保険者との親族関係が終了した場合にも終了します。

■経過的寡婦加算

 「中高齢の寡婦加算」は40歳から65歳までの間支給されることになります。それは65歳から妻自身の「老齢基礎年金」が支給できるからです。しかし、旧法(昭和61年3月以前)では、サラリーマンの妻は今のように第3号被保険者ではなく、任意加入でした。したがって、任意加入していなかった妻は、65歳以降の年金受給額が極端に少なくなります。そのような状況を補うために、経過的に加算されるものです。

死亡した夫が、原則20年以上厚生年金の加入していたことが必要です。

対象となるのは昭和31年4月1日以前に生まれた妻です。

■30歳未満の妻に対する遺族厚生年金

 以下の場合は、5年間の有期年金となります。

 ①夫の死亡当時30歳未満の妻で、遺族基礎年金の受給権(子供がいる場合)がない場合。

 ②夫の死亡時には遺族基礎年金の受給権があったが、妻が30歳に達する前に遺族基礎年金の受給権が消滅した場合。

■老齢年金と遺族年金

 公的年金は、1人1年金が原則です。

65歳になる前に、2つ以上の年金の受給権が発生した場合、どちらか一方の年金を選択します。

遺族厚生年金の受給権者が65歳以上の場合は、老齢基礎年金と遺族厚生年金を合わせて受けることもできます。

 ①妻自身の老齢厚生年金は全額支給されます。

 ②遺族厚生年金の額と老齢厚生年金の年金額との差額が遺族厚生年金として支給されます。

 ※平成19年4月1日前に遺族厚生年金の受給権を有し、かつ、既に65歳以上の人は、この仕組みの対象とはなりません。

■65歳以上の人の障害基礎年金と遺族厚生年金の併給

 1階部分に障害基礎年金、2階部分に遺族厚生年金という形で年金受給が可能です。

Ⅵ 遺族共済年金

 遺族共済年金は、遺族厚生年金と支給金額が異なるのみで、支給条件等は一緒です。 

Ⅶ 労災保険の遺族補償年金 

 遺族補償年金とは、仕事中の事故や通勤途中の事故などで死亡した場合に受け取れる年金です。

 労災保険から給付を受ける前提として、「仕事中の事故」「通勤途中の事故」と認定してもらう必要があります。

 ●受給資格者

 ・労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた「配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹」です。妻以外は労働者の死亡当時、一定の年齢にあるかまたは一定の障害状態(障害等級5級以上かこれと同等以上に労働が制限されている状態)にあることが必要とされています。

 ・労働者の死亡当時胎児であった子が出生したときは、その子は、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子とみなされます。

 ●受給権者となる順位

  遺族補償年金は、すべての受給資格者に支給されるのではなく、受給権者のうちで最先順位者にだけ支給されます。その順位は以下のとおりです。

 ①妻、60歳以上または一定の障害の状態にある夫

 ②18歳年度末までの間にある子、または一定の障害の状態にある子

 ③60歳以上または一定の障害の状態にある父母

 ④18歳年度末までの間にある孫、または一定の障害の状態にある孫

 ⑤60歳以上または一定の障害の状態にある祖父母

 ⑥18歳年度末までの間にある兄弟姉妹、もしくは60歳以上または一定の障害の状態にある兄弟姉妹孫

 ⑦55歳以上60歳未満の夫

 ⑧55歳以上60歳未満の父母

 ⑨55歳以上60歳未満の祖父母

 ⑩55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

 ①の配偶者には、事実婚関係にある者を含みます。

 受給権者が2人以上あるときは、その額を等分した額がそれぞれの受給権者が受ける額となります。

 ●遺族補償年金の支給額

 遺族補償年金の支給額
 遺族数 遺族補償年金(給付基礎日額の) 遺族特別支給金(一時金) 遺族特別年金(算定基礎日額の)
 1人 153日分  300万円 153日分
 55歳以上または 障害のある妻の場合 175日分 175日分
 2人 201日分 201日分
 3人 223日分 223日分
 4人以上 245日分 245日分

遺族の数は、年金の受給権者および受給権者と生計を同じくしている受給資格者の人数の合計です。

●前払一時金

 死後直後の様々な出費を援助するため、遺族補償年金・遺族年金には前払制度があります。

 請求は、遺族補償年金の請求と同時に行うのが原則ですが、死亡日の翌日から1年以内であれば、後からでも請求できます。

 遺族補償年金前払一時金を請求できるのは、1回のみです。ただし、先順位者が前払い一時金の支給を請求していない場合には、請求することができます。

 ・遺族補償年金・遺族年金は、給付基礎日額の1000日分(800日分、600日分、400日分、200日分の選択可)を限度とする一時金を年金の前払い金として受けることができます。

 ・前払一時金の支給を受けた場合には、受給者全員に対して支給されるべき年金は、その合計額が前払い一時金相当額に達するまで支給が停止され、2年目からは年5%の金利に見合う額を割り引く計算をします。

転給で受給権者となった場合、前の受給権者が前払いを請求した場合は、その支給停止は引き継がれます。

 ・55歳以上60歳未満の夫、父母、祖父母、兄弟姉妹に対する遺族補償年金の支給は60歳に達するまで停止されますが、この前払一時金は、これらの者に対しても請求があれば支給されます。

●遺族補償一時金

 遺族補償一時金は、次のいずれかの場合に、給付基礎日額の1000日分が支給されます。

通勤災害の場合は、遺族一時金といいます。

遺族保障一時金の支給を受けようとするときは、死亡日の翌日から起算して5年以内に、「遺族補償一時金支給請求書」を労働基準監督署長に提出します。

遺族(補償)年金、遺族(補償)一時金とも、同順位の受給権者が2人以上いる場合は、世帯を異にしている等やむを得ない事情がある場合を除き、そのうちの1人を年金の請求、受領についての代表者として選任しなければならず、支給は代表者が行うことになっています。

遺族補償一時金は、次のいずれかの場合に支給されます。

 ①労働者の死亡の当時、遺族補償年金の受給資格がいない場合(死亡労働者の収入によって生計を維持していた遺族がいないか、生計を維持していた遺族はいるが年齢条件を満たさない等)

 ②遺族補償年金を受ける権利を有する者の権利が消滅した場合において、他に遺族補償年金を受けることができる遺族がなく、かつ、当該労働者の死亡に関し支給された遺族年金の額の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たない場合

【受給権者】

遺族補償一時金は、遺族のうち以下に掲げる最先順位者に支給されることになります。

 ① 配偶者
 ② 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
 ③ その他の子・父母・孫・祖父母
 ④ 兄弟姉妹

※②③の場合は、子・父母・孫・祖父母の順になります。

国民年金にも「死亡一時金」という一時金がありますが、支給額は最高でも32万円ですから、かなり手厚く補償されていることがわかります。

●遺族特別支給金(支給金則5条)

 業務上または通勤途上で労働者が死亡した場合に、遺族補償給付(遺族給付)の受給権者である遺族に対し、その申請に基づいて支給されます。

特別支給金は労災保険の保険給付に付加して給付されます。

遺族特別支給金は、転給により遺族補償年金の受給権者となった者や全員失権により遺族保障一時金の受給権者となった者には支給されません。

遺族特別支給金を受けることのできる遺族は、労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹で、これらの遺族特別支給金を受ける順位は、遺族補償給付の場合と同様です。遺族特別支給金は必ずしも生計維持要件を満たしている必要はありません。

遺族特別給付金は、保険給付に加え遺族の数にかかわらず、一律300万円が一時金で支給されます。

遺族特別支給金を受ける遺族が2人以上ある場合は300万円をその人数で除して得た額となります。

支給申請は、遺族補償給付または遺族給付の支給請求と同時にしなければなりません。

●遺族補償年金の請求手続き

 様式第12号「遺族補償年金支給請求書、遺族特別支給金請求書、遺族特別年金支給請求書」に所定の事項を記入し、次の書類を添付して、所轄労働基準監督署長に提出します。

受給権者が2人以上あるときは、原則として1人を代表者に選任します。

死亡から5年を過ぎると時効になります。

必要書類

 ・死亡診断書、死体検案書、検視調書の写し、または市町村長が証明する死亡届書記載事項証明書

 ・受給権者および受給資格者と死亡労働者との身分関係を証明しうる戸籍の謄本または抄本

 ・受給権者または受給資格者が死亡労働者の収入によって生計を維持していたことを証明できる書類

 ・受給権者または受給資格者が死亡労働者と内縁関係にあった場合には、その事実を証明できる書類

 ・受給権者および受給資格者が死亡労働者の収入によって生計を維持していた事実が認められる資料:住民票、所得証明書、民生委員の証明書

 ・受給権者および受給資格者のうち、障害の状態にあることにより遺族補償年金を受けることとなった者については、その者が労働者の死亡当時から引き続き、障害の状態にあることを証明する医師の診断書その他の資料

 ・受給権者が死亡労働者の妻で、障害の状態にある場合は、障害の状態にあることを証明する医師の診断書その他の資料

 ・受給権者が2人以上あるため、代表者を選任した場合は、代表者選任届

 ・同一の事由により遺族厚生年金、遺族基礎年金、寡婦年金等が支給される場合には、その支給額を証明することができる書類

●遺族補償年金と社会保険との調整

 同一の事由により、遺族補償年金と厚生年金保険の遺族厚生年金等が併給される場合には、遺族補償年金の額に年金の種類別に定められた調整率をかけた額が支給額となります。

併給される年金の種類 遺族厚生年金 遺族基礎年金又は寡婦年金 遺族厚生年金及び遺族基礎年金又は寡婦年金
 調整率  0.84  0.88  0.80

同一の事由により共済組合等から障害年金または遺族共済年金が支給される場合は、労災保険の側からの併給調整は行われない。

一時金たる保険給付および特別支給金については併給調整は行われない。

●失権と失格(法16条の4、法22条の4,3項、40法附43条1項)

 遺族補償年金の受給権は、受給権者が次のいずれかに該当するに至った場合には、その者については失権し、他の受給権者がいない時には、次順位の受給資格者が新たに受給権者となります(転給制度)。資格を失うと、再び資格を得ることはありません。

 ①死亡したとき

 ②婚姻したとき(事実婚も含む)

 ③直系血族または直径姻族以外の者の養子(事実上の養子縁組関係を含む)となったとき

 ④離縁によって死亡労働者との親族関係が終了したとき

 ⑤子、孫または兄弟姉妹については、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき(労働者の死亡時から引き続き障害の状態にあるときをのぞく)

 ⑥障害状態のため受給資格者となっていた者の障害の状態がなくなったとき(夫、父母または祖父母については、労働者の死亡の当時60歳以上であったとき、子または孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるとき、兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるかまたは労働者の死亡の当時60歳以上であったときを除く。)

受給資格者が減ると、遺族補償年金の金額は、その翌月から改定されます。

●労災の葬祭料(葬祭給付)

 葬祭料または葬祭給付は、労働者が業務上または通勤中に死亡した場合に、葬祭を行う者に対して支給されるものです。

葬祭料の請求に際して、葬祭に要した費用の証明書は必要ありません。

 ・葬祭を行う者

  必ずしも、実際に葬祭を行った者である必要はなく、葬祭を行うと認められればよいとされています。遺族がいない場合で会社や友人が葬祭を行った場合、葬祭を行った会社や友人に葬祭料が支給されます。

 ・葬祭料の額

葬祭料の額 315,000円に給付日基礎額の30日分を加算した額
上記の額が給付基礎日額の60日分に満たない場合には給付基礎日額の60日分

 ・請求の手続き

 故人の勤務先を管轄する労働基準監督署に、葬祭料請求書(様式16号)または葬祭給付請求書を提出します。

 添付書類

 死亡診断書、死体検案書または検視調書の写しなど、労働者の死亡の事実及び死亡の年月日を証明する書類(あわせて遺族(補償)給付の請求書を提出する際に当該請求書に添付してある場合には、必要ありません)

●未支給の保険給付

保険給付を受ける権利を有するものが死亡した場合において、その死亡したものに支給すべき保険給付で、まだ支給されていないものがあるときは、一定の遺族は自己の名でその未支給の支給を請求できます。

未支給の保険給付の規定は、労働保険法以外にも、雇用保険法、国民年金法、厚生年金保険法にもあります。

遺族補償年金を除く未支給の保険については、死亡した受給権者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、受給権者の死亡の当時、そのものと生計を同じくしていた者のうち、最先順位者が請求権者となります。

■年金受給停止の手続き

 期限:死亡後速やかに(国民年金は死亡日から14日以内、厚生年金は10日以内)。もしもこの期間内に手続きを行わず、年金が受給されていると、後日「過払い」として一括返納しなければならなくなります。

 申請先:受けていた年金が国民年金の場合は市区町村役場。厚生年金や国民年金の老齢基礎年金の場合は個人の住所地を管轄する社会保険事務所。共済年金の場合は、各共済組合。

 提出書類:年金証書、年金受給権者死亡届(日本年金機構に住民票コードを登録している人は、原則として死亡届の提出は省略できます)、死亡を証明する書類(死亡診断書の写しや除籍謄本など)

・介護保険資格喪失届

 個人が65歳以上の場合や、40〜64歳の医療保険加入者のうち、国の定める特定疾病により要介護(要支援)認定を受けていた場合、介護保険被保険者証が交付されています。

死亡から14日以内に、市区町村の福祉課などの窓口に、介護保険資格喪失届を提出し、介護保険被保険者証及び他に交付を受けている介護保険負担限度額認定証を返納します。

同時に、介護保険を月割りで再計算し、不足分は相続人が支払い、納め過ぎの分は還付されます。

保険料については、資格喪失月の前月まで保険料が賦課されます。

資格喪失日は死亡日の翌日になります。

・世帯主の変更届

 世帯主が亡くなった場合、世帯員の誰かに世帯主を変更する手続きが必要になります。

新しく世帯主になる人が14日以内に市町村役場の住人登録窓口に届け出る必要があります。

ただし、世帯主の死亡により、その世帯が一人世帯になった場合や15歳以上の世帯員が1人となる場合は、手続きの必要がありません。

一般的に世帯主変更届は「住民異動届」と同じ用紙になっています。

届出に必要なもの:届出人の印鑑、本人確認できる証明書類(免許証、パスポート等、顔写真付きでないものは2点)

■健康保険の資格喪失届

 健康保険に加入していた被保険者である世帯主が死亡した場合、健康保険証は死亡した翌日より使えなくなってしまいます。

健康保険は、会社員などが加入する「被用者健康保険」と、「国民健康保険」に区分されます。

健康保険証は、死亡日より14日以内に、国民健康保険の場合は市町村に、被用者健康保険の場合は事業主を通じて返還しなければなりません。

事業主は死亡の翌日から5日以内に社会保険事務所または健康保険組合に資格喪失届を提出しますので、健康保険証などを速やかに返還してください。

葬祭費の請求、世帯主の変更と同時に健康保険の資格喪失届をするとよいでしょう。

故人の被扶養者になっていた人は、新たに国民健康保険に加入する必要があります。

75歳以上で後期高齢者医療費制度に加入していた場合は、市町村役場に「後期高齢者医療資格喪失届」を提出し、「後期高齢者医療費保険者証」を返却します。

「高齢受給者証」を持たれていた場合も返却が必要です。 

■埋葬料

 故人が健康保険の被保険者であった場合、埋葬料もしくは埋葬費として、遺族に5万円が支給されます。

ただし、仕事中の事故などが原因で亡くなった場合は、原則、労災保険からの給付となります。

死亡した日の翌日、または埋葬を行った日の翌日から2年間で時効になり請求できなくなります。

健康保険被扶養者(家族)の場合は、家族埋葬料の請求になります。

 【埋葬料と埋葬費の違い】

 ①被保険者によって生計を維持していた遺族に支払われるのが、埋葬料です。

 ②被保険者に近親者がいないときなどで、埋葬を行った人に支給されるのが埋葬費です。

 【申請方法】

●国民健康保険に加入していた場合

 ・申請先:被保険者の住所地の市区町村役場

 ・申請書:国民健康保険葬祭費支給申請書

 ・申請人:葬儀を行った人

 ・必要なもの

  ①国民健康保険証

  ②死亡診断書

  ③葬儀費用の領収書(領収書がない場合は、葬儀社の電話番号、案内状、挨拶状など、喪主が確認できる書類)

  ④葬祭費の振込先金融機関名・口座番号等がわかるもの

  ⑤喪主の印鑑

  ⑥葬儀を行った人以外が申請をする場合は、申請をする人の本人確認書類

 ・支給額:周南市の場合は5万円(市町村によって異なります)

 ・請求期限:死亡日から2年

●全国健康保険協会の場合

 ・申請先:全国健康保険協会(協会けんぽ)、社会保険事務所

 ・申請書:健康保険埋葬料(費)支給申請書(協会けんぽHP

 ・申請人:葬儀を行った人

 ・給付金の受取を委任する場合

  申請書の受け取り代理人の欄に被保険者と受け取り代理人の署名と押印、代理人名義の口座が必要。

 ・必要なもの

  ①健康保険証

  ②死亡証明書(死亡診断書など。ただし、申請書内に事業主の証明を受けている場合は、死亡証明書は不要です)

  ③葬儀費用の領収書(領収書がない場合は、葬儀社の電話番号、案内状、挨拶状など、喪主が確認できる書類)

  ④葬祭費の振込先金融機関名・口座番号等がわかるもの

  ⑤喪主の印鑑

  ⑥葬儀を行った人以外が申請をする場合は、申請をする人の本人確認書類

  ⑦第三者行為が死因の場合は、「第三者の行為による傷病届」

  ・支給額:一律5万円

  ・請求期限:死亡日の翌日から2年以内

■住宅ローンの手続き

 住宅ローンや借り入れなどの債務が残されていた場合、相続人は住宅ローンの支払い義務を引き継ぐことになります。相続人が複数いる場合には、定められた相続分の割合で債務を相続することになります。

住宅ローンを組むときには、基本的に団体信用生命保険(団信)に加入することになっています。

住宅ローンの引継ぎには、次のような書類が必要になります。

 ・住宅ローン名義書換依頼書

■遺言書検認の申し立て(遺言書が公正証書遺言でない場合)

 遺言書の検認とは、遺言書が確かにあったということを家庭裁判所に確認してもらうことです。

遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造、変造を防止するための手続きです。遺言書の効力を証明する手続きではありません。

家庭裁判所は遺言書の内容を確認してから検認調書を作成します。

相続人は、裁判所に検認調書の謄本の交付を申請することができます。

公正証書以外の遺言書に基づいて遺言の執行行為を行うためには、検認を受けたことを証明する「検認済証明書」が必要です。

検認の手続きを経て開封しても、その遺言書自体が無効な遺言書であれば、結果的には遺言書としての効力を有しません。

遺言書を保管している者または発見した者は、その遺言書が公正証書以外の自筆証書遺言と秘密証書遺言に関しては、裁判所による兼任を受けない限り、開封してはいけません(たとえ相続人全員の同意があっても)。誤って開封しても、遺言書自体は無効にはなりませんので、必ず検認を受けてください。

封印されていないものであっても、検認は必要です。

「覚書」とか「重要書類」というような表題になっているものであっても、遺言者の意思が記載されている文書であれば、検認の申し立てが必要です。

公正証書遺言は公証役場の公証人が立ち会って作成する遺言形式ですので、偽造や変造の可能性がなく、検認作業は省略されています。

遺言書を家庭裁判所に提出することをしなかったり、検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外において開封した場合は、5万円以下の過料が課せられます。

遺言書に不動産に関する記載があった場合、検認を経ていない遺言書では登記手続きはできません。遺言書による預貯金の名義変更も同様です。

●検認を申し立てる裁判所

 被相続人(遺言者)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

●検認の申立人

 遺言書の保管者、遺言を発見した人

●検認の申立に必要な書類

 ①遺言書検認申立書(裁判所のホームページに記載例があります

 ②遺言書原本(開封していないもの)

 ③当事者目録

 ④遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)

 ⑤遺言者の住民票除票

 ⑥申立人、相続人全員の戸籍謄本および住民票各1通

 ⑦受遺者の戸籍謄本

 ⑧遺言者の子で亡くなっている人がいる場合は、その子の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍謄本・改正原戸籍謄本)

 ⑨遺言書の写し(遺言書が開封されている場合)

●申立書の必要記載事項

 ①申立人の、署名押印

 ②申立人の本籍、住所、連絡先、職業、生年月日等

 ③遺言者の本籍地、最後の住所、氏名、生年月日、死亡年月日

 ④検認を求める旨

 ⑤申立の趣旨

 ⑥申立の理由

 ⑦申立の実情(封印等の状況、遺言書の保管・発見状況、相続人等の表示)

 ⑧相続人等目録

 ⑨申立年月日

 ⑩添付書類の別・通数

 ⑪申立人または申立代理人の署名・押印

●検認の申し立てに必要な費用

 遺言書1通につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です。

●検認手続きの流れ

 ①遺言書検認申立書に必要事項を記載する

 ②必要書類の収集

 ③遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行う。

 ④期日の決定と通知

  申し立て後、家庭裁判所から相続人全員に検認期日の通知が届きます。

 ⑤期日に遺言書の保管者が遺言書の原本と印鑑を持参し、裁判官、裁判所書記官、相続人の立会いのもと、遺言書の開封し、加除訂正、日付、筆跡、署名、本文の確認後、検認調書が作成されます。相続手続きをする場合は、検認済証明書の発行の申請をします。

認手続きが終了すると、裁判所は遺言書に検認済みの印を押して申立人に返却します。この検認済証明書がその後の相続手続きで必要になります。

検認当日に全員が集まらなくても検認は行われます。但し、申立人は欠席できません。

 ⑥検認当日に立ち会うことができなかった相続人や利害関係者に対しては、後日、検認の結果についての通知が郵送されます。

 ⑦預金の払い戻しや登記名義の書き換えなど、各種の相続手続きが可能となります。

■特別代理人

 相続人の中で、未成年の子とその親とが同時に相続人となる場合、両当事者の利益相反を是正し、公平な相続手続きを実現するために、未成年の子供の特別代理人を選任することになります。

親子が一緒に相続放棄をする場合は、特別代理人の選任は必要ありません。

特別代理人の選任は、未成年者と親権者の場合のみならず、認知症等で判断能力がなくなった成年被後見人と成年後見人の間で利益相反行為がある場合も特別代理人の選任が必要です。

共同相続人の子は複数の場合は、それぞれ別々の特別代理人を選任する必要があります。

家庭裁判所が第三者を子の特別代理人を選任し、特別代理人が遺産分割協議書に署名捺印します。

特別代理人になる人は、遺産分割協議について利害関係のない人であれば、特に制限はありません。

未成年者が相続放棄をする場合で、次の場合には特別代理人選任が必要になります。

 ①親権者と、その親権に服する未成年者とが共同相続人であって、未成年者のみが相続放棄申述をする場合(親権者が先に相続放棄をしている場合を除く)。

 ②未成年者が複数いる場合において、親が未成年者の一部だけを相続放棄申述をする場合。

 ●申し立て先:未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所

 ●申立人:親権者、利害関係人

 ●期限:分割協議を行う日まで

 ●必要書類

 ①特別代理人の選任申立書

 ②利益相反に関する資料(遺産分割協議書案等)

 ③申立人及び未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)

 ④特別代理人候補者の承諾書

 ⑤特別代理人候補者の住民票、戸籍謄本、身分証明書

 ⑥被相続人の遺産を明らかにする資料(不動産登記簿謄本及び固定資産評価証明書、預金残高証明書、通帳の写しなど)

 ⑦申立費用(収入印紙800円+切手代)

■運転免許証

 そのまま放置していても有効期限が過ぎ、更新手続きを行わなければ、自然消滅になりますが、原則としては、本人の死亡後はすみやかに警察署または公安委員会へ返納します。

必要書類:亡くなった方の運転免許証、死亡診断書、戸籍謄本被相続人の死亡した旨の記載があるもの)、手続きをする人の身分証明書、印鑑

■パスポート

 パスポートは10年(または5年)と有効期限がありますが、紛失した場合に悪用される危険性があります。本人の死亡後は速やかに、住民票のある都道府県の旅券事務所(パスポートセンター)に返却するのがよいでしょう。

但し、手続きの際に残しておきたい旨を申し出れば、パスポートが使用できないようにボイド処理をした後、返してもらえます。

※ボイド処理:表紙に「BOID」(無効)とパンチすること。

 ○手続きに必要なもの:被相続人のパスポート、被相続人が亡くなったことを証明できる除籍謄本等、申請書(窓口でもらえます)

■クレジットカードの退会届

■未支給年金請求

 年金は、亡くなった日の属する月の分まで支払われます。

年金は2ヶ月に1回偶数月の15日に支給されるので、亡くなった時点で未払いの年金(未支給年金)があることになります。

死亡届と同時に「未支給年金・保険給付請求書」を提出し、未払金を受け取る手続きをします。

手続き窓口:年金事務所または年金相談センター

期限:年金支給日の翌月の初日から5年以内

請求者:配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他3親等内の親族の順。請求できる者がいない時は、同居人等が「死亡届」のみを提出します。

添付書類

 1.未支給年金請求書、年金手帳(見つからない時は「年金証書を添付することができない理由書」を提出)

 2.受給権者の年金証書(添付できないときは滅失届けを添付)

 3.受給権者の死亡が明らかになる書類(除籍謄本、除票等)

 4.受給権者と請求者の続柄がわかる戸籍謄本もしくは抄本

 5.受給権者と請求者が生計を同じくしていたことが証明できるもの(住民票の写し、町内会長や民生委員の第三者の証明など)

 6.請求者名義の金融機関の預貯金通帳

 7.請求者の印鑑

年金は相続財産ではなく、各年金法所定の受取人固有の財産ですから、相続財産ではなく、遺産分割の対象でもありません。ただし、受取人の一時所得として所得税の対象にはなります。一時所得は年間50万円までは非課税です。

■医療費控除の手続き

 被相続人の医療費を相続人が負担している場合には、それが扶養義務の履行としてなされた場合を除きその負担額は債務控除の対象とされます。

 【医療費控除の還付請求】

 請求場所は、被相続人の準確定申告に対して医療費控除の請求をする場合は、亡くなった方の居住区を管轄する税務署です。

 【手続きに必要なもの】

 ・故人の源泉徴収票

相続関係

相続関係

相続財産

 ■財産目録の作成

 財産目録とは、被相続人の財産が一覧で判別できるようにした表のことをいいます。

遺言執行者であれば財産目録の作成が法的に義務が課せられていますが、そうでない場合でも財産目録を作成したほうが、トラブル回避、円満解決に役立ちます。

財産目録には被相続人が所有していた現金、預貯金、不動産、有価証券、株式、車といったプラス財産の他に、借金等のマイナス財産をすべて記載します。

財産目録を事前に作成しておくと、相続税がかかりそうかどうか、かかるとすればでれくらいかかりそううかなどを知ることもできます。

 ■不動産の名義変更

 ■銀行など預貯金の解約手続き

 故人名義の銀行預金口座は、故人が死亡した事実を銀行が知った時点で、口座自体が凍結されることになります。

一部の相続人が勝手に預金を引き出して、他の相続人の権利が侵害されるのを防ぐために口座が凍結されます。

金融機関は死亡の事実を、家族からの申し出や、新聞の訃報欄などにより把握します。

電話代、電気料金などの口座振替も全てできなくなります。

早い段階で名義変更、引き落とし口座の変更、滞納分の支払いを済ませておきましょう。

預金口座の凍結を解除して遺産相続をするには、所定の手続きが必要になります。

金融機関によって求められる書類が違ったり、手続き完了までにかかる期間もまちまちというのが現状です。

ほとんどの銀行では戸籍謄本や印鑑証明書などのチェックを、各支店ではなく銀行預金の相続手続きを扱う部署に書類を転送して行っています。

金融機関の払い戻し手続きは相続人全員の同意が得られていることが前提ですので、遺産分割協議書を作成しておくことも大切です。

●主な必要書類

 ①被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

 ②相続人全員の戸籍謄本

 ③相続関係説明図

 ④預金名義書換依頼書(銀行に備え付け)

 ⑤解約・払い戻し依頼書

 ⑥銀行所定の相続専用書類

 ⑦遺産分割協議書(不要な場合もある)

 ⑧遺言書

 ⑨相続人全員の印鑑証明書

 ⑩被相続人の預金通帳、預貯金証書、キャッシュカード

 ⑪通帳やカード紛失の場合の紛失届

※手続きに必要な書類は、各金融機関により異なりますので、必ずご確認ください。

■株の相続手続き

 株を相続した場合は、株主名簿に記載された株主名義を書き換える必要があります。

これを怠ると、配当支払いや会社からの通知を受け取ることができなくなるなどの不都合が発生しますので、証券会社で名義変更の手続きをします。

名義変更の手続きには、死亡確認のための戸籍謄本や、相続人全員の捺印が必要になります。

株相続手続きの方法は、株をどこに預けているか、上場会社の株であるか、非上場会社の株なのか、その口座が特別口座かいなかによって異なります。手元にある証券や定期的に送られてくる配当金のお知らせ等の資料をもとに確認してください。

保有する株がわからない場合は証券会社、信託銀行等で残高証明書を請求して確認することができます。

株の相続手続きは、基本的には、故人の証券会社の口座のあった支店にて相続手続きを行う必要があります。

●相続人が証券口座を持っている場合

 亡くなった人の株式を、相続人の証券口座に相続によって移す手続き(口座移管)を行います。 

●相続人が証券口座を持っていない場合

 新たに相続する相続人の口座を開設して、株式を移す手続きになります。

●上場していない株式

 株式を発行した会社に問い合わせて手続きを行います。

●上場している株式

 株主名簿管理を行っている株主名簿管理人に対して名義書き換えの手続きを行います。

●株券を紛失した場合

 株式会社では株券は不発行が原則で、会社の定款で定めた場合のみ株券の発行が可能です。

【株券喪失登録の手続き】

 株主名簿管理人において株券喪失登録の手続きをおこないます。

このとき、株券を喪失した事実を証明する資料(焼失、盗難、遺失など)を添付します。

詐欺・横領により株券を失った場合は、加害者に対し、株券の引渡しもしくはこれに代わる損害の賠償を求めることになります。

喪失株券を善意取得した者に対しては、喪失株券の引渡しを求めることはできません。

喪失した株券は株券喪失登録簿に必要事項を記載した翌日から起算して1年経過後に無効となり、株券の再発行を請求することが可能になります。

株券喪失登録簿は、誰でも利害関係を有する部分を閲覧・謄写できるので、株券を取得しようとする者は、株券喪失登録簿を閲覧することにより、取得しようとしている株券につき株券喪失登録がなされていないかを調べることができます。

株券喪失登録が虚偽であると主張する場合には、登録異議の申請をすることができますが、登録期間内でなければなりません。

株券喪失登録者が株券喪失登録をした株券の名義人でない場合は、登録者は登録抹消日までは、株主総会において議決権を行使できません。

【株券喪失登録簿への記載事項】

 ①申請された株券の番号

 ②株券喪失者の氏名又は名称及び住所

 ③株券に係る株式の名義人の住所氏名

 ④株券喪失登録の日

●端株(単元未満株)の相続

 証券会社の被相続人名義の口座に預けられている株式であれば、相続人の証券口座に振り替えてもらいます。

単元未満株式については、証券会社の口座ではなく、株主名簿管理人である信託銀行で相続手続きを行う必要があります。

株券電子化後、上場会社の株式は、基本的に証券会社の口座へ移管されましたが、端株は証券会社に移管されず、もとの株主名簿管理人たる信託銀行に、特別口座という形で残ります。

●株の相続に必要となる書類

 ①株券発行会社の場合は株券

 ②相続による株式名義書換請求書

 ③株主票(書換により新たに株主となる者の氏名の書かれた書面)

 ④被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

 ⑤被相続人の住民票の除票

 ⑥相続人全員の現在戸籍謄本

 ⑦相続人全員の住民票

 ⑧相続人全員の同意書または遺産分割協議書(不要な場合もある)

 ⑨相続人全員の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)

死後手続きに関わる費用相場

納税義務者の区分

納税義務者の区分

相続財産管理人

納税義務者の区分

相続税に納税義務者は、国籍や住所を有しているか否かにより以下の3区分に分類されます。

1.居住無制限納税義務者

 相続により財産を取得した個人で、財産を取得した時において日本国内に住所を有している者をいいます。国内財産のみならず国外財産も含めた全ての財産が相続税の対象となります。被相続人の住所が日本国内にあるかどうかは問いません。

 たとえ外国籍だったとしても、日本に居住している場合は当てはまります。

2.非居住無制限納税義務者

 相続により財産を取得した個人が日本国籍を有するが、財産取得の時において日本国内に住所を有していない場合(相続人又は被相続人が相続の開始前5年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある場合に限る)は、取得した財産が国内にあると国外にあるとを問わず、すべての財産が相続税の対象となります。

なお、「日本国籍を有する個人」には、日本国籍と外国国籍とを併有する重国籍者も含まれます。

3.制限納税義務者

 相続開始の時点からさかのぼって5年の間、被相続人も相続人も日本国内に住所がない場合(非居住無制限納税義務者を除く)や相続人が日本国籍を有していない場合は、相続開始の時点で相続人の住所が日本になければ、相続した財産のうち、日本国内にある財産のみが相続税の対象になります。

 国内に住所があるかどうかの判断等は、相続発生時点を基準とし、この場合の住所とは各人の生活の本拠をいいます。ただ住民票上の住所が基準になるわけではなく、生活の本拠であるかどうかは客観的事実に基づいて判断されます。

■国際相続

 国際相続とは、相続財産が海外にある場合や被相続人や相続人が海外に住んでいる場合など、複数の国にまたがる相続事案をいいます。

どの法律に準拠するかは、「被相続人」の国籍によって決めます。(法の適用に関する通則法36条)

国外財産を課税対象に含むかどうかは、被相続人と相続人の国籍や居住地域などが関係してきます。

日本では、原則として、全世界財産に対して相続税を課税する方式を採用しているため、相続人が海外に住んでいたとしても日本国籍を有している限り、日本で相続税が課税されることになります。

海外でも相続税が課税される場合には、日本で計算した相続税から海外で課税された相続税を控除するという外国税額控除という計算もあります。

●相続人が海外に住んでいる場合

 相続人が日本国籍を有さず、かつ相続人と被相続人がともに海外に居住している場合には日本国内にある財産のみが相続税の対象財産となり、海外にある相続財産については日本の相続税の対象とはなりません。

相続人が日本国籍である場合には、相続開始前直近5年の間に、被相続人または相続人のいずれかが日本に住所を有していた場合には、相続開始時に相続人が日本に住所を有していなくても、相続人は、被相続人が有する全世界の資産について相続税を支払う必要があります(非居住無制限納税義務者)。

 遺産分割協議書を作成する場合、海外に居住している人は、領事館にて署名証明(サイン証明)を取得することが必要になります。台湾や韓国を除いて印鑑登録制度がありません。係官の目の前で書類に署名及び拇印を押し、交付されたサイン証明書と書類とを綴り合わせて割印をします。

また、住所証明も必要になるので、在留証明書(現地に3ヶ月以上滞在していることを証明)を取得する必要があります。

在留証明書を取得するには、日本領事館に旅券・運転免許書・現地に居住している期間を証明する書類などを提示して申請します。証明を必要とする本人が公館へ出向いて申請することが必要です。

一時帰国する場合には、在留証明書のみを取得して、遺産分割協議書を公証役場で交渉人に認証してもらうこともできます。

●国外財産調書制度

 国外財産についての適正な課税を強化する目的で、国外財産調書制度が設けられています。

毎年12月31日時点で合計で5,000万円を超える国外財産を有する場合には、翌年3月15日までに国外財産の種類や数量及び価額などを記載した国外財産調書を所轄税務署長(※)に提出しなければなりません。

資産から債務を引いた「正味財産」の価額が、5000万円を超えない場合であっても提出義務があります。

※所轄税務署

 1.その年分の所得税の納税義務がある者…そのものの所得税の納税地

 2.それ以外の者…その者の住所地(国内に住所がないときは居住地)

「国外財産」とは、「国外にある財産を言う」こととされ、「国外にある」かどうかの判定は、財産の種類ごとに行うこととされています。

財産の所在地の判定

1.動産及び不動産…動産及び不動産の所在地

2.預貯金…預貯金の受け入れをした営業所の所在地

3.貸付債権…債務者の住所または本店所在地

4.社債または株式…社債または株式の発行法人の本店所在地

5.外国債または外国の地方債…その外国

6.保険金…保険の契約に係る保険会社等の本店または主たる事務所の所在地

国外財産に関する所得等の申告漏れが発覚した場合

 1.国外財産調書に国外財産の記載がある部分については、過少(無)申告加算税が5%軽減されます。(優遇措置)

 2.国外財産調書の不提出・記載不備に係る部分については、過少(無)申告加算税が5%加重されます。(加罰措置)

国外財産調書の不提出・虚偽記載については、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則規定が設けられています。

国税庁記載例

相続方法

相続方法

 ■単純承認

 ■限定承認

 ■相続放棄

 ■事実上の相続放棄

 ■熟慮期間の伸長

 ■期間経過後の相続放棄

 ■相続放棄・限定承認後の背信的行為

 相続人廃除

 ■相続欠格

相続財産

 ●貸付信託受益証券の評価

 ③市街地周辺農地

相続方法

相続方法には、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類の方法があります。

相続財産が債務超過にある場合、相続人がその債務を免れるための方法は、①相続はするが相続人の義務は相続によって得た財産の限度で負担し、相続人自身の個人財産で弁済する責任は負わない限定承認という方法と、②相続放棄をして一切の権利義務を承認せず、相続人としての地位から離脱する方法があります。

相続人になったことを知った時から3ヶ月以内(熟慮期間)に限定承認も相続放棄もしなかった場合は、単純承認したものとみなされます(法定単純承認)。

単純承認

 プラスの財産もマイナスの財産も全て引き継ぐものです。マイナス財産の方が多い場合には、相続人は債務を返済していくことになります。

 基本的には何もしなければ単純承認となりますが、以下の行為を行うと単純承認とみなされます。

 1.相続人が、相続財産の全部または一部を処分したとき

  ・被相続人名義の不動産を相続人名義に変更したとき

  ただし、以下の行為は相続財産の処分には当たりません。

  ・葬儀費用を相続財産から支払った場合

 2.相続人が、限定承認、または相続放棄をした後であっても、相続財産の全部、または一部を隠匿したり、消費したり、意図して財産目録に記載しなかったとき

 3.3ヶ月の期間内に限定承認も相続放棄もしなかったとき

●相続財産の処分にはあたらない行為

 ・民法602条に定める期間を超えない賃貸

  1.樹木の彩植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年

  2.前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年

  3.建物の賃貸借 3年

  4.動産の賃貸借 6ヶ月

 ・遺体自体や身の回りの品、僅少な金銭の受領

 ・遺産から葬儀費用や火葬費用、治療費の支払い

 ・墓石、仏壇の購入

 ・相続人が相続財産の全部または一部を処分したときであっても、それが「保存行為」に該当する場合には、法定単純承認の効果を生じさせる「処分行為」には該当しません。また、遺産による相殺や期限到来債務の弁済についても、保存行為であり相続財産の処分には当たらないと判断されることが多いでしょう。

 ・失火や過失で、家屋や美術品を壊してしまった場合

 ・交換価値のない物の形見分け

 ・死亡保険金による被相続人の債務弁済

■限定承認

 相続人が遺産を相続するときに相続財産を責任の限度として相続することです。相続財産で負債を弁済した後、余りがあればそれを相続できます。この方法は、マイナスの財産(負債)の金額がプラスの財産より明らかに多い場合や、負債が残っている可能性がある場合などに有効です。

 限定承認をするには、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に、相続人全員で、被相続人の住所地の家庭裁判所に申し立てる必要があります。

 相続人のうち相続放棄をした人がいても、その人以外の相続人が同意すれば限定承認の申し立てができます。

 相続を承認するか限定承認の手続をとるか判断に困るというときには、あらかじめ家庭裁判所に申し立てて、手続きの期限を延ばしてもらうこともできます。

●限定承認の申し立て手続きの流れ

 家庭裁判所(※1)へ限定承認を申し立てた場合、手続きの流れは次のようになります。

   ※1:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

 ①相続人になったことを知った日から3ヶ月以内に必要書類(申述書、相続人全員の戸籍謄本、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、住民票の除票、財産目録等)を揃えて家庭裁判所に「限定承認」の申し立てを行います。

3ヶ月以内に限定承認をすべきかどうか判断ができそうにないときには、期限内にその旨を家庭裁判所に申し立てることで期限を延長することができます。

 ②共同相続の場合、家庭裁判所は職権で相続人の中から相続財産管理人を選任します。共同相続人が相続財産管理人を選んでいる場合には、選任希望の上申書を申述の段階で提出しておくか、家庭裁判所からの照会に対する回答の段階でその旨を伝えることになります。

 ③限定承認後5日以内にすべての相続債権者に対し、限定承認をしたこと及び2ヶ月を下らない一定の期間内にその請求の申し出をすべき旨の官報公告を行います。相続財産管理人の場合は、10日以内に官報公告をします。官報公告の期間は、2ヶ月以上です。

 ④期間満了後に相続財産をもって、当該期間内に申し出をした相続債権者その他知れている相続債権者に対して配当弁済を行います。

相続財産を売却して現金化する場合は、原則として競売による必要があります。

限定承認をした相続人が相続財産の競売をのぞまずに自分で承継することを希望した場合、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に基づき、相続人がその財産の価額を支払うことで、競売をせずに相続人が自分で引き取ることも可能です。

 ⑤債務の方が多い時には、債権額に比例した割合で債務を弁済し、財産が残った場合には遺産分割協議を行います。

限定承認を行うと、税法上は被相続人から相続人に対する譲渡とみなされ、準確定申告が必要となります。

■相続放棄

被相続人の負債が多い場合や、家業の経営を安定させるために後継者以外のものが相続を辞退するときなどに使われます。

相続の開始前の放棄は、強要等を防止するため、できないことになっています。遺留分については、相続開始前の放棄も可能となっています。

相続の放棄をするには、相続開始を知った日から3ヶ月以内(熟慮期間)に意思を決定し、非相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。裁判所に認められれば、「相続放棄申述受理通知書」が交付されます。

相続を放棄したことを債権者に証明するためには、「相続放棄申述受理証明書」を取得し、その写しを債権者に送付します。

相続人が例え遺産分割協議や、相続人の間で相続放棄すると言ったり、合意していたとしても、法的な効力はなく、その相続人は単純承認したとみなされますので、もしもマイナスの財産が多かった場合は、法定相続分については債務の負担義務が生じますので、財産を一切相続する意思がない場合は、必ず家庭裁判所に相続放棄申述書を提出してください。

相続放棄があった場合には、その放棄をした相続人は最初から相続人でなかったとみなされますので、相続放棄者の子や孫に代襲相続は行われず、遺産は、残った相続人で分割することになります。

先順位のものが放棄したことにより、自己が相続人となった場合の放棄ができる期間は「先順位の者全員が相続放棄したことにより事故が相続人になったことを知ったとき」が3ヶ月の起算日になります。

何らかの手続きをとらずに3ヶ月を過ぎてしまうと、プラス財産とマイナス財産の全てを相続する「単純承認」をしたことになり、マイナス財産がプラス財産よりも多い場合には、債務を返済する義務を引き継ぎます。

葬儀費用を相続財産から支払った場合は、単純承認とはなりません。

相続財産に債務が多い場合には、相続放棄または限定承認(プラスの財産を上限にマイナスの財産を引き継ぐ)を家庭裁判所に申し立てます。

3ヶ月以内に相続放棄をするかどうか決めることができない特別の事情がある場合は、家庭裁判所に、「相続放棄のための申述期間延長」を申請することにより、この3ヶ月の期間を延長してもらえる場合があります。1回の申立により3〜6ヶ月間、期間を延長することができますが、この申し立ては3ヵ月が経過する前に行う必要があります。

●未成年者の相続放棄

 相続人が未成年の場合は、法定代理人(親権者等)がその子に代わって、相続放棄の申述をすることになります。両親がともに健在である場合は、二人揃って法定代理人となり相続放棄手続きもその二人が行うことになります。

 親と未成年の子が相続人で、未成年の子の相続放棄の申述を親が法定代理人として申述する場合、親自身も放棄する場合は問題ありませんが、未成年の子だけが放棄するときは、相続について親と子の利害が対立する(利益相反行為)ことになりますので、家庭裁判所に申し立てて、子の特別代理人を選任してもらう必要があります。選任された特別代理人は、未成年者の利益を考え相続放棄をするかどうかを判断します。

熟慮期間について、未成年者の場合は、法定代理人が相続の開始を知った時からスタートします。

■事実上の相続放棄

 相続人は、相続放棄の手続きをとらなくても、自分に帰属した財産・権利を放棄することは可能です。これを、「事実上の相続放棄」といいます。

1.遺産分割協議において、分割の合意をし、一部の相続人に遺産を集中する。

 遺産分割協議書での取り決めは相続人間では有効ですが、相続債権者はそれに従う必要はありませんので、家庭裁判所での相続放棄手続きをしない限りは、債務の支払い義務から逃れることはできません。

 法定相続分相当の分割債務を免れるためには、債権者の同意が必要です。

2.相続放棄契約

 被相続人が死亡する前に、相続人間で交わす。

3.特別受益証明書(相続分なきことの証明書)の作成

 生前に相続分を超える贈与を受けていた場合に、相続分がないことの証明書を作成する。

 主に相続登記において、共同相続人のうちの1人に不動産を取得させる場合に、他の相続人が署名捺印して提出することが登記実務の上で認められています。

 「相続すべき相続分がないこと」が書かれていれば足り、生前贈与などを受けた財産の内容を書く必要はありません。

 ただし、この証明書は相続放棄を証明するものではありませんので、貰い受けるプラス財産はなくても、マイナス財産は相続しなければならないといったケースも出てくるので、負債は絶対に負いたくないという人は、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行う必要があります。

 特別受益証明書は、被相続人の生前に作成したものでも法律的に有効です。

4.相続分を譲渡する。

■熟慮期間の伸長

 相続財産の状態が複雑で調査に日数が必要な場合には、利害関係人または検察官は相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所に対して「相続の承認・放棄の期間伸長の申し立て」をすることができます。

この申し立ても相続放棄と同じく、相続開始後3ヶ月以内に申し立てをすることが必要です。

相続人が複数いる場合には、熟慮期間は相続人ごとに進行しますので、期間の伸長は相続人ごとに行う必要があります。

 利害関係人には、相続人の他、相続債権者(被相続人に対する債権者)、受遺者、相続人の債権者、次順位の相続人などが含まれています。相続人は、自分自身の熟慮期間の伸長だけでなく、他の相続人の熟慮期間の伸長を求めることもできます。

家庭裁判所は裁量により伸長期間を決定します。状況によっては複数回の伸長も可能です。

●必要書類

 ・相続の承認・放棄の期間伸長審判申立書

 ・申立人の戸籍謄本

 ・被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)

 ・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票

 ・申立人の利害関係を証する資料(親族が申し立てる場合は戸籍謄本など)

 ・収入印紙(期間伸長の申し立てをする相続人1人につき800円)

 ・郵便切手(80円×4枚、10円×8枚)

■期間経過後の相続放棄

 特別な事情がある場合には、相続開始の原因である事実、および自分が法律上の相続人となった事実を知った時から3ヶ月経過した後からでも、相続放棄の申述ができることがあります。

 「特別な事情」の例

 被相続人が借金をしていたり、第三者の借金の保証人になっていた場合で、相続人がその事実を知らず、被相続人の死亡後に債権者から送られてきた督促状などによって、相続人が初めて借金等の存在を知ったとき。

「特別な事情」のポイント

 ・被相続人に相続財産が全く存在しないと信じていたこと

 ・被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて、相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があること

 ・その事実を知ることに正当な理由が相続人にあったこと

特別な事情がある場合は、相続財産の全部または一部の存在を認識した時から熟慮期間が開始します。

債権者から負債に関する通知が届いた場合には、放置せずに、相続放棄の申請をするようにしてください。

■相続放棄・限定承認後の背信的行為

 民法921条(3)で、「相続人が、限定承認または相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときは、相続人は、単純承認をしたものとみなす。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となったものが相続の承認をした後は、この限りでない。」と定めています。

「消費」とは、債権者の利益を害することを承知の上で、相続財産を消費した場合を指します。

■相続人廃除

 被相続人から見てその人に相続させたくないと思うような非行があり、その人に相続させたくない場合に、被相続人の請求によって家庭裁判所が審判または調停によって相続権を剥奪する制度です(民法892条)。

相続人の廃除については、被相続人が生前に、家庭裁判所に対して請求する方法と、遺言書に特定の相続人を廃除したいという意思を記しておくという方法があります。

廃除の対象者は遺留分が認められている被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に限られます

廃除の対象者に子供がいる場合には、その子供に相続権が移行されます

相続人欠如や相続人排除の制度は存在しますが、家庭裁判所にその理由が認められて相続権を剥奪されるケースは少ないようです。

【廃除が認められるための要件】

 廃除が認められるのは、遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待・重大な侮辱を加えたとき、または推定相続人にその他の著しい非行があった時です。

【推定相続人廃除の効果】

 廃除の効果は、被廃排除者の相続権・遺留分権を剥奪することです。

廃除を認容する審判の結果は、戸籍に記載されます。

【廃除の取り消しとその方法】

 廃除が確定した後であっても、被相続人は相続廃除の取り消しをすることができます。

家庭裁判所に請求するか、遺言書によっていつでも廃除を取り消すことができます。

■相続欠格

 推定相続人でも、法に触れる行為があると、相続人にはなれません。

相続欠格になる事由は以下の5つです。

【相続欠格事由】

 ①故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

 ②被相続人が殺害されたのを知って告発や告訴を行わなわなかった者

 ③詐欺・強迫による偽造や遺言の取り消し・変更を妨げたりした者

 ④詐欺または強迫によって、被相続人に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

 ⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

【相続欠格の効果】

 相続の欠格事由に該当する場合、直ちに欠格の効果は発生し、その被相続人との相続資格を失います。

ただし、欠格者に直系卑属である子がいる場合には、その子が欠格者に代わって代襲相続することになります。

父親を殺害したために欠格者となった子は、父母が婚姻している限り母親の相続に関しても欠格者となります。

欠格の効果が発生するためには、他の相続人や受遺者などからの主張、あるいは裁判所での手続きは不要で、法律上当然にその効果を生じます。

相続開始前に欠格事由が生じた場合には、その時に相続資格を失います。相続開始後に欠格事由が発覚した場合には、相続開始の時に遡及して相続資格を失います。

すでに、遺産分割を済ませている場合には、他の相続人はその欠格者に対して相続回復請求をすることになります。

相続財産1

相続財産

●貸付信託受益証券の評価

相続財産

相続財産は預貯金や不動産などのプラスの財産の他、借入金、未払金などのマイナスの財産も相続財産となります。相続によって相続人に承継される権利義務の一切のことを「相続財産」といいます。

■相続財産調査

 ①不動産

 ①郵便物

  銀行からの郵便物、固定資産税納税通知書等をチェックします。

■プラス財産

 ・不動産

  土地(宅地、農地、山林、牧場、貸地など)

  建物(居宅、マンション、アパート、倉庫、店舗など)

  権利(借地権、借家権、地上権、定期借地権など)

 ・現金、有価証券

  現金、預貯金、株券、証券、投資信託、社債、国債、貸付金、売掛金、立替金、手形、小切手、出資金

 ・動産

  (家庭用財産)

  自動車、家具、船舶、貴金属、宝石、骨董品、美術品など

 ・生命保険金

  保険金受取人が被相続人となっている場合には、相続財産となります。

 ・著作権

 ・その他

  電話加入権、ゴルフ会員権、慰謝料請求権、損害賠償請求権など

■マイナス財産

 ・負債

  借入金、買掛金、未払い金、住宅ローン、振出小切手、手形債務、損害賠償金、未払い家賃

 ・税金関係

  未払いの税(所得税、住民税、固定資産税、その他)

 ・その他

 未払い分の家賃、未払い分の医療費、預かり敷金

■相続税が特別に係る財産

 ・被相続人から生前に贈与を受けて、贈与税の納税猶予の特例を受けていた農地や非上場会社の株式など

 ・相続人がいなかった場合に、民法の定めによって相続財産人法人から与えられた財産

■相続財産に該当しないもの

 ・遺族の生活を保証するもの

  死亡退職金、受取人指定のある生命保険金、死亡退職金

 ・遺族への経済的負担を補うもの

  香典、弔慰金

 ・祭祀に伴うもの

  墓地、墓石、仏壇、仏具、神具

 ・その他

  財産分与請求権、生活保護受給権、扶養請求権、など

  国、地方公共団体に寄付した財産

■相続財産の評価

●土地

 「一物四価」といって、土地には異なる4つの価格が定められています。

4つの価格とは、路線価・実勢価格・公示地価・固定資産評価額です。

・路線価方式(路線価が定められている場合)

 主に市街地的形態を形成する地域で採用される方式で、毎年各国税局が作成する路線価図に基づいて土地を評価します。

 路線価×(補正率・加算率)×地積=評価額

土地の形状(2つの道路に面している、間口が狭い、土地の形が三角であるなど)による加算、減算を行います。

路線価は、相続税の他、贈与税や地価税の課税標準算出の基礎として使われます。

路線価は、国土交通相が発表する公示価格の概ね80%になるように設定されています。

・倍率方式

 倍率方式とは、路線価が定められていない地域の土地の相続税評価方法です。

固定資産税評価額に国税局長が定めた一定の倍率をかけて計算します。  

 固定資産税評価額×評価倍率=評価額  

・貸宅地(宅地として貸している土地)

 借地権がついている宅地は、自由に処分ができないため、自用地である場合より低く評価されます。

 路線価ー(路線価×借地権割合)

借地権割合は、国税局のHPの財産評価基準の中に掲載されていて、地域に応じて路線価図にアルファベットで表示されています。

一般的に地価の高い地域ほど借地権割合が高くなる傾向があります。

具体的な借地権割合は、A90%、B80%、C70%、D60%、E50%、F40%、G30%です。

・広大地

 土地の存在する地域の標準的な宅地の面積に比べて著しく面積が広大であり、その土地を分譲、開発する場合の道路や公園等公共公益的な施設の用地を確保する必要がある土地のことをいいます。

広大地の条件を満たせば広大地補正率による大幅な評価減が可能です。

(財産評価基本通達24−4)
 広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大で都市計画法第4条12項に規定する開発行為を行うとした場合の公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものをいう。
 ただし、
 ・大規模工場用地に該当するもの(工業専用地域など)
 ・中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(マンション適地)を除く。
を除く。

広大地の評価額=路線価×広大地補正率×土地の面積

 広大地補正率=0.6−0.05×地積/1,000㎡

・農地

  農地を評価する上で重要なのが農地区分です。農地区分には農地法による区分と相続税法による区分の2種類があります。

 農地については、農地法などにより宅地への転用が制限されていて、また、都市計画等により地下事情も異なりますので、これらを考慮して、農地の価額は次の四種類に区分して評価を行います。

純農地、中間農地、市街地周辺農地、市街地農地の四種類です。

農地を相続する場合、条件を満たすと、納税猶予の特例を受けることができます。

①純農地

 倍率方式によって評価します。

財産評価基本通達第2章第3節36において、以下のいずれかに該当する土地が純農地に該当すると規定されています。

 農用地区域内にある農地。

 市街化調整区域内にある農地のうち、第1種農地または甲種農地に該当するもの。

 上記に該当する農地以外の農地のうち、第1種農地に該当するもの。ただし、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第2種農地または第3種農地に準ずる農地と認められるものを除く。

【農用地の区分について】

②中間農地

 中間農地は都市近郊にある農地で純農地よりも農業制作上の規制が緩く、売買が純農地よりも多くなされる可能性が高い農地をいいます。

次の農地のうち、そのいずれかに該当するものをいいます。

 ・第2種農地に該当するもの

 ・近傍農地の売買実例価額、精通者意見価額などに照らし、第2種農地に準ずると認められるもの

中間農地の価額は、その農地の固定資産税評価額に、田または畑の別に、地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある農地の売買実例価額、精通者意見価額等を基として国税局長の定める倍率(インターネットでも閲覧することができます)を乗じて計算した金額によって評価します。

 中間農地の価額=固定資産税評価額×倍率

③市街地周辺農地

 市街地周辺農地とは第3種農地に該当するもの第3種農地に該当しない農地のうち近傍農地の売買実例価額等を照らして第3農地に準ずる農地と認められるもの、に当てはまるものを指します。

 市街地周辺農地の評価は、その農地が市街地農地であるとした場合の価額の80%に相当する金額によって評価します。

④市街地農地

 市街地農地とは、次に掲げる農地のうち、そのいずれかに該当するものをいいます。

 農地法第4条(農地の転用の制限)または第5条(農地または採草放牧地の転用のための権利移動の制限)に規定する許可を受けた農地

 市街化区域(都市計画法第7条(市街化区域及び市街化調整区域)第2項に規定する「市街化区域」をいいます)内にある農地

 農地法等の一部を改正する法律附則第2条第5項の規定によりなお従前の例によるものとされる改正前の農地法第7条第1項第4号の規定により、転用許可を要しない農地として、都道府県知事の指定を受けた農地

市街地のうちの評価は、宅地批准方式または倍率方式により評価します。

【貸農地の評価】

 他人に農地を貸している場合の農地の評価は、農地として評価した価額から、耕作権等の権利の価額を控除して評価します。

農地に設定される権利には、「耕作権」、「永小作権」、「区分地上権」、「区分地上権に準ずる地役権」があります。

農地法上の権利設定のない農地の場合は、他人が農地を借りて耕作していても、課税評価の時には自用地として評価され、控除はされません。

●耕作権

 ①純農地・中間農地の耕作権割合:50%

 ②市街地周辺農地、市街地農地の工作権割合:税務当局によって異なる

●永小作権

 農地の自用地としての価額ー永小作権の価額

●区分地上権

 農地の自用地としての価額ー区分地上権の価額

・山林の評価

 山林は相続税評価上、以下の3種類の区分されます。

①純山林

 純山林とは、市街地から遠く離れたり、別荘地帯にある山林のように宅地の価額の影響を受けていないような山林をいいます。

 倍率方式(倍率表に書かれている倍率を固定資産税評価額のかけることでもとめます)で評価されます。

②中間山林

 ①の純山林と③の市街地山林の中間の山林のことをいいます。

 倍率方式で評価されます。

③市街地山林

 市街地山林とは、市街地にあり、土地評価に宅地の影響を受ける山林のことをいいます。

 市街地山林は、その山林が宅地であるとした時の1㎡あたりの評価額から、国税局長が定める1㎡あたりの造成費を控除した金額に、土地の面積を乗じて計算した金額が評価額となります(宅地批准方式)。

宅地への転用が見込めない場合の市街地山林では、近隣の純山林の評価額に批准して評価します。

・生産緑地の評価

【生産緑地の概要】

 市街化区域内において農地を所有する場合、固定資産が高額となり、 採算の取れる農業経営を行うことは難しくなります。

生産緑地に指定された農地では固定資産税などが一般農地と同様に極めて低い税額に抑えられるほか、相続税の納税猶予措置などが適用されます。

生産緑地に指定するための要件は、生産緑地法によって定められています。

改正生産緑地法が適用されたのは1992年度からですが、生産緑地の多くは初年度に指定を受けているため、2022年に営農義務が外れることになります。

生産緑地のほとんどは三大都市圏に集中しています。

【生産緑地の要件】

①市街化区域内の農地等であること

②現に農業の用に供されていること

③500㎡以上の規模の区域であること

 幅員6m以下の道路や水路が介在していても、一団の農地として認められます。

④用排水等の営農の継続が可能な条件を備えていること

⑤土地の関係権利者の同意を得ていること

⑥工業専用地域の区域外であること

⑦災害や公害を防止したり、良好な都市環境を守る役割を果たしていること

 塀で囲まれている土地や、適正に農地として管理されていない土地は指定されません。

⑥公園や緑地、公共施設等の用地として適していること

【評価】

①課税時期において市町村に対し買取の申し立てをすることができない生産緑地

●建物

 建物は、固定資産税評価額と同じ額が評価額となります。

固定資産税評価額は、毎年4月頃、役所から送付される固定資産税の納付通知書に記載されていますが、税務署には固定資産税評価証明書を提出することになります。

固定資産の価額は総務大臣が定めた「固定資産評価基準」に基づいて、再建築価額を基準とした方法で行うこととされています。

【貸家の相続税評価額】

 他人に賃貸している家屋を相続した場合には、貸家の相続税評価が必要になります。

更地に賃貸住宅や貸ビルを建設した場合、更地の時に比べ土地の相続税の評価が下がります。

貸家は、一般の賃貸住宅のみならず、貸しオフィス、貸し倉庫、もしくは設備を他の事業主に貸して事業を行わせる建造物などを含めて貸家と称します。

貸家の評価額=通常の評価額×(1−借家権割合×借地権割合)

ちなみに、借家権割合は全国ほぼ一律に30%となっています。

借地権割合は、路線価図で定められている地域ごとの数字です。

【建築中の家屋の相続税評価】

 被相続人が住宅を建築中に相続が発生した場合、建築中の家屋の相続税評価が必要になります。

その家屋が建築請負契約によるものである場合には、その建築に係る請負主がその所有権を有しており、その評価は課税時期における費用現価の額の70%相当額とされています。

●有価証券

 株や投資信託、外貨、公社債などはそれぞれに評価方法が定められています。

 株式や債券等は、株券等を確認し、証券会社に照会します。

①上場株式の評価

 上場株式とは、金融商品取引所に上場されている株式のことをいいます。

上場株式は、次にあげる4つのうち、いずれか低い金額をもって評価します。

 ・被相続人が死亡した日の終値

 ・相続発生月の終値の月平均額

 ・前月の終値の月平均額

 ・前々月の終値の月平均額

市場取引相場のある株式は、ちょっとしたことで価格が変動するため、それを調整するためにこのような制度が設けられています。

ただし、負担付贈与で取得した上場株式は、相続時の終値によって評価します。

被相続人が取引していた証券会社に依頼して、被相続人が所有する全銘柄についての、死亡日を基準とした4つの価格を記載した残高証明書を発行してもらうことができます。

②非上場株式の評価

 中小企業のような上場していない会社の株式を評価する場合、客観的な数値がありません。

 相続で株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主か、それ以外の株主等かの区分により、それぞれ原則的評価方式または特例的評価方式の配当還元方式により評価します。

・原則的評価方式

 支配権を有する同族株主が取得する株式の評価は、会社の業績や資産内容等を反映した原則的評価方式で評価します。

類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式の3種類があります。

【純資産価額方式】

 純資産価額方式(国税庁方式)は、中・小規模の評価会社の株式を評価する上で使用する評価方法をいいます。

純資産価額方式は、株式を仮に評価会社が解散した場合に、その会社の株主に分配されるはずの正味の財産価額で評価しようとするものです。

 会社の課税時期に置ける総資産を、原則として相続税の評価で算定し、その評価した価額から、負債(相続税評価額)や評価差額に対する法人税額を差し引いた、残りの金額(純資産価額)により評価する方法です。

【類似業種比準方式】

 上場している類似業種の株価を基にして、評価する会社の一株あたりの配当金額・年利益金額・純資産価額の3要素を比準して評価する方法です。

この方法は、利益や配当を多く出している会社の株価は高くなります。

業種や規模が似ているからといって単純に類似する上場株式と同じ評価額とすることは適当ではありません。

類似業種批准方式による場合には、次の点に注意しなければなりません。

①1株あたりの配当金額

●評価の注意点

 ①課税時期前3年以内に取得した土地や建物の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額で評価します。

 ②繰延資産などの換金価値のない資産に関しては評価額をゼロとします。

 ③純資産額がマイナスの場合は、1株あたりの純資産価額はゼロとなります。

 ④課税時期が会社の決算日と異なる場合には、仮決算を行うことが原則とされていますが、直前期末から課税時期の間に資産及び負債に著しい変動がなく評価額への影響が少ないと認められる場合には、直前期末の数値を用いることができます。

 ④子会社株を保有している場合、その含み益は38%控除対象外となりますので、優良子会社株式を持っていると純資産価額は高額になるケースがあります。

 ⑤同族株主等の議決権割合が50%以下の場合は、純資産価額を20%減額することができます。

 ⑥保険料・賃貸料等の前払費用を資産に計上すべきか否かは、課税時期においてこれらの費用に財産的価値があるかどうかによって判断することとなります。

 ⑦評価会社が被相続人の死亡を保険事故として受け取る生命保険金については、その生命保険請求権を資産に計上しなければなりません。

 ⑥被相続人の死亡により、相続人その他の者に支給することが確定した退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与の額は、負債に計上します。

・特例的評価方式

 いわゆる配当還元方式のことです。

概算は以下の算式で求めることができます。

 (会社の資産−会社の負債)÷発行株式総数×相続財産となる株式数

●投資信託の評価

 証券投資信託の受益証券の評価は、課税時期において解約請求または買取請求した場合に証券会社から支払を受けることができる価額になります。被相続人の取得時の取得価額は関係しません。

①上場している投資信託

 ETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)などは、上場株式と同様の方法で評価します。

中期国債ファンドやMMFなど、毎日決算を行う日々決算型の証券投資信託の受益証券のケースにおいては、証券会社等から支払を受けることが可能な価額とし、以下の計算方法によって評価を行います。

 1口当たりの基準価額(A)に口数(B)をかけ、再投資されていない未収分配金(C)を加え、そこからBによって源泉徴収をされる所得税の額に相当している金額(D)と、解約手数料(E)を引いた金額となります。

 A×B+C−D−E

② ①以外の証券投資信託の受益証券

 1口当たりの基準価額×口数−源泉税相当額−解約手数料

●貸付信託受益証券の評価

 貸付信託とは、信託銀行が信託契約によって預かった資金を、企業への長期貸付や手形割引によって運用し、そこから生じた収益が元本に応じて支払われる信託商品です。当該信託契約にかかる受益権を受益証券によって表示します。

貸付信託の最長預入期間は5年で、2009年を最後に新規募集が停止されていることから、2014年までにすべて満期償還が終わっています。

課税時期において貸付信託設定日から1年以上を経過している貸付信託の受益証券の価額は、その証券の受託者が課税時期においてその証券を買い取ったとした場合における次の算式により計算した金額により評価することになっています。

 元本の額+既経過収益額-源泉所得税相当額-買取割引料

貸付信託の設定日から1年以上が経過していない場合には、この算式に準じて計算した金額が評価額となります。

●公社債の評価

 公社債とは、国や地方公共団体、事業会社などが一般投資家から資金を調達するために発行する有価証券です。

公社債は、利付公社債、割引発行の公社債、元利均等償還が行われる公社債、転換社債型新株予約権付社債の四つの区分に分けられています。

【利付公社債】

・証券取引所に上場されている利付公社債

 課税時期の最終価格+(既経過利息−源泉所得税額)=評価額

・日本証券協会において売買参考統計値が公表される銘柄として選定された利付公社債

 平均値+(既経過利息ー源泉所得税額)=評価額

・その他の利付公社債

 発行価額+既経過利息−源泉所得税額=評価額

【割引公社債】

 割引公社債とは、券面額を下回る価額で発行される債権のことをいい、券面額と発行価額との差額が利子に相当する部分となっているものです。

 ・上場銘柄の場合:金融商品取引所が公表する最終価格×券面額÷100円

 ・売買参考統計地が公表される銘柄として選定された割引公社債:平均値×券面額÷100円

 ・その他の場合:発行価額+(券面額−発行価額)×(発行日から課税時期までの日数÷発行日から償還日までの日数)

●生命保険金

 被相続人の死亡によって保険金が支払われたときは、その保険料を被相続人が負担していた場合は、相続税として申告が必要になります。

保険金を支払うために被相続人が保険原資を積み立てていたとみなされ、被相続人の財産と考えます。

本来の相続財産ではありませんが、被相続人の死亡によって相続人が受け取ったということで、「みなし相続財産」と呼んで、相続税の対象となります。

●ゴルフ会員権の評価

 原則として通常の取引価格の7割

【みなし相続財産】

 「みなし相続財産」は「本来の相続財産」とは異なり、被相続人が所有していた財産で相続人に承継された財産ではないのですが、被相続人の死亡に伴い相続人等が経済的利益を得ることとなる実態が、相続又は遺贈による財産承継と同様であることから、相続税法上、相続税が課税される財産として取り扱われます。

○主な「みなし相続財産」

・生命保険金または損害保険金

・退職手当金等

 退職手当金等には、次のものが含まれます。金銭のみならず、現物支給も含まれます。

 ①退職手当金

 ②功労金

 ③その他これに準ずる給与

亡くなって後3年以内に支給額が確定した退職手当金のみが相続税の課税対象になります。

3年を超えて支給された場合は、受給者の一時所得として所得税等の課税対象になります。

相続税の申告後に退職手当金等の支給額が確定した場合は、相続税の修正申告をします。

退職手当金等には、非課税限度額が存在します。

 非課税限度額=500万円×法定相続人の数

退職手当金等の相続税法上の扱いは、受け取り人の立場により異なります。

 ①相続人:相続により取得したものとして扱う

 ②相続放棄をした人・相続権を失った人・相続人以外の人:遺贈により取得したものとして扱う

 弔慰金については、明らかに退職手当金となるものを除き、業務場死亡の場合は普通給与の3年分、それ以外の場合は普通給与の半年分を超えると退職手当均等に含まれ、課税の対象になります。

※普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。

 死亡退職金や死亡保険金がみなし相続財産の中で代表的なものとなっています。

死亡退職金は故人が受け取った上で遺族に引き継がれるものではなく、受取人固有の財産と言えますので、相続財産には当たらず遺産分割の対象にはなりません。

死亡退職金は相続財産にはなりませんが、個人の死亡によって遺族が財産を取得するという点では本来の相続財産と類似しているため、みなし相続財産として相続税の課税対象になります。

●遺産評価の基準時

 相続財産の評価は、遺産分割が現実に行われる時を基準にします。

ただし、遺産分割協議や調停において、基準時を相続開始時とするという合意をすることは自由です。

遺産分割審判がなされる場合の基準時は、その審判の時となります。

相続税を計算するための遺産の評価は、相続開始時です。

●相続税のかからない財産(非課税財産)

 非課税相続財産とは、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その性質等が社会政策的見地、人間感情等の側面から、課税の対象とするのは適当でないと認められるため、課税対象から除かれるものをいいます。

 ①皇室経済法の規定により皇位とともに皇嗣が受けたもの

 ②墓地、墓石、霊廟、祭具、位牌、仏壇、仏具、神棚など

  これらは祖先を崇拝するという慣習や国民感情などに配慮して相続税はかかりませんが、金の仏像などを骨董品として価値が有るものや投資対象となるものは、非課税とはなりません。

 ③香典、花輪代、弔慰金

  遺族に対するお悔やみとしてわたされる香典などは、その金額が世間一般の常識的な金額の範囲内であれば、相続税がかかりません。

弔慰金についても一定の金額までは相続税が非課税とされています。

 ・業務上の死亡:死亡時の普通給与の3年分

 ・その他の死亡:死亡時の普通給与の6ヶ月分

 ④生命保険の一部

  500万円×法定相続人の数については相続税が非課税となります。

 ⑤死亡退職金の一部

  500万円×法定相続人の数については相続税が非課税となります。

 ⑥事故などの損害賠償金

  交通事故や飛行機事故で被相続人が死亡した場合は、遺族の精神的な苦痛に対する慰謝料としての賠償金を請求する権利の部分については、相続税も所得税もかかりません。

 ⑦公益事業用財産

  宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人等が相続や遺贈によってもらった財産で公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの

 ⑧心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の受給権

 ⑧個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの

 ⑩国等に対する寄付財産

  国、地方公共団体等に対し相続財産を相続税の申告期限までに寄付した場合の寄付財産。あるいは、特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの。

相続財産法人

相続財産法人

 相続人が存在しない場合、相続人が全員が相続放棄をした場合は、亡くなった方の財産は「相続財産法人」という一つのまとまりになって、管理され清算されていくことになります。

相続人はいるが、行方不明である場合や生死不明である場合は、相続財産法人は創設されません。

相続人搜索の公告が出て6ヶ月しても相続人が現れず、相続人の不存在が確定し、相続人無しとなった場合、被相続人の特別縁故者は家庭裁判所に申し立てをして財産の全部または一部を分与されます。

被相続人の債権者は、相続財産法人に対する一定の手続きで、債権の一部を回収することができます。

相続財産法人が選任されると、その旨が官報で公告されます。

この相続財産法人に関する手続きは、利害関係人等の請求により家庭裁判所が選任した相続財産管理人によって行われます。

相続財産管理人は、相続財産を管理・精算する一方で、債権者や受遺者に対する請求催告、相続人の捜索をします。

相続財産管理人

相続財産管理人

■相続財産管理人

 相続開始後、相続人の存在が不明な場合には、相続財産は法人と擬制され、検察官または利害関係人の請求により家庭裁判所は相続財産管理人を選任します。

相続財産管理人は、相続人の捜索、相続財産の調査、管理、換価、清算の手続き等を行います。

ここにいう「利害関係人」とは通常、亡くなった方にお金を貸していた人などその財産に利害関係を持つ人のことをいいます。

被相続人の債権者や特定受遺者、特別縁故者などの利害関係人は、被相続人に相続財産の管理を行う権利を持った相続人がいない場合にはこの相続財産管理人を選任しなければ、相続財産から弁済を受けられず、相続財産が失われたり、隠されたりする不利益を被る恐れがあります。

相続財産管理人は、中立な立場の方が選ばれることになっており、一般的には弁護士や司法書士が選任されます。

被相続人の債権者は、相続財産法人に対する一定の手続きで、債権の一部を回収することができます。

相続人搜索の広告が出て6ヶ月しても相続人が現れず、相続人の不存在が確定し、相続人無しとなった場合、被相続人の特別縁故者は家庭裁判所に申し立てをして財産の全部または一部を分与されます。

申し立ての際には、家庭裁判所に予納金として約30〜100万円を納める必要がありますので、財産がなければ、相続財産管理人がつかないこともあります。

相続人はいるが、行方不明である場合や生死不明である場合は、相続財産法人は創設されません。

■相続財産管理人の選任が必要なケース

 1.相続人にお金を貸していた

  相続財産管理人が選任されると、債権者は債権の存在を証明して、必要な支払いをしてもらうことができます。

 2.相続人となる人がいない

  被相続人に法定相続人となることができる親族がまったく存在せず、遺言もない場合には、相続財産管理人の選任が必要です。

 3.相続人全員が相続放棄をした

  この場合、申し立てをするのは元の相続人です。

 4.被相続人より特定遺贈を受けた

 5.相続人がいないケースで、被相続人と生前特別の縁故があった人がいる場合

  特別縁故者とは、法定相続人ではないけれども、被相続人と特別な関係にあった人のことです。

  特別縁故者は、相続債権者や受遺者に対する弁済が行われた後に家庭裁判所に申し立てを行って審理を受けた後、相当性が認められれば、相続財産の分与を受けることができます。

■相続財産管理人選任の申立

●申立人

 利害関係人(被相続人の債権者、受遺者、特別縁故者、遺言執行者、検察官など)、検察官

●申立をする裁判所

 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

●必要書類等

 相続財産管理人選任の申し立てには次のような書類が必要です。

 ・相続財産管理人選任の申立書

 ・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

 ・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡者がいる場合、被相続人の子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

 ・被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

 ・被相続人の兄弟姉妹で死亡者がいる場合、その者の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

 ・被相続人の兄弟姉妹の代襲者(甥、姪)で死亡者がいる場合、甥姪の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

 ・相続財産を証明する資料(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預金通帳の写し、残高証明書など)

 ・被相続人の住民票除票または戸籍附票

 ・申立人の利害関係を証する資料(戸籍謄本、金銭消費貸借契約書の写しなど)

 ・相続財産管理人の候補者がいる場合は、候補者の住民票または戸籍附票

●申し立てに必要な費用

 ・収入印紙800円

 ・連絡用の切手代

 ・官報公告料

 ・予納金

申し立て後に、申立人が裁判所に対して支払うお金があります。これは相続財産の管理費用が足りなかった場合に備える家事予納金で、事案の複雑さによっては数十万から100万円程度になることもあります。

相続財産管理人の報酬は相続財産から支払われますが、相続財産が不動産のみであったり、預貯金や現金が少なくて報酬が支払われないと見込まれるときは、家事予納金の中から支払われることもあります。

【選任後の流れ】

① 相続財産管理人の選任が公告される

 家庭裁判所が相続財産管理人を選任すると、その後相続財産管理人を選任したことを知らせる公告を2ヶ月間、官報への掲載等によって行います。この官報公告には、相続人搜索の意味合いも兼ねています。

② 相続財産管理人による相続財産の調査と管理

 相続財産管理人は、相続財産を調査し、財産目録を作成、不動産の名義人表示変更をします。

③ 相続債権者・受遺者に対する請求申し出の公告

 2ヶ月を超える一定期間内に債権の申し出または受遺者である旨の申し出をするように官報に公告します。

申し出があれば弁済します。

④ ②の公告から2ヵ月が経過してから、家庭裁判所は、相続財産管理人の申立により、「相続人を捜すため、6ヶ月以上先に満了期間を定めた公告」をします。公告期間中に相続人からの届出がなければ、相続人がいないことが確定します。

⑤ ③の公告の期間満了後、3ヶ月以内に「特別縁故者に対する財産分与」の申し立てをすることができます。

特別縁故者とは、被相続人と長い間同居していた者や、被相続人の療養看護に努めていた者など、被相続人と特別な縁故があった人のことをいいます。

家庭裁判所により、特別縁故者に対する相続が相当と認められて場合は、相続財産の全部または一部を特別縁故者へ分与する旨の審判がなされます。

 特別縁故者への財産分与の手続きを経てもなお、相続財産に余りがある場合、その残余財産は国庫に帰属します。

申し立てに必要な費用

 ・収入印紙800円

 ・連絡に必要な郵便切手

必要書類

 ・申立書1通

 ・申立人の戸籍謄本1通

 ・被相続人の戸籍(除籍)謄本1通

特別縁故者として相続財産を受け取る場合は相続税も発生します。

⑥ 財産管理人は、随時、裁判所の許可を得て、被相続人の不動産や株を売却し、金銭に換えることもできます。

⑦ 不動産持分の共有者への帰属

 相続人、特別縁故者、受遺者、相続債権者がいない場合において、被相続人の相続財産の中に不動産の共有持分がある場合には、その不動産の共有持分は他の共有者に持分割合に応じて帰属します。

⑧ 管理終了報告

■相続財産の清算・弁済

 2ヶ月以上の官報公告期間が満了すると、管理人は債権者・受遺者に対して弁済を開始します。債権者が複数いる場合には、債権額の割合に応じた額を弁済します。

請求申し出をした受遺者がいる場合には、債権者への弁済をしてなお余りがあった場合に、債権者へ弁済した後に清算します。

なお残余財産があれば、限定承認者がそれを取得し、共同相続人がいれば、遺産分割をすることになります。

残余財産が残らなければ、手続きは終了します。

■最終の相続人搜索の公告

 相続債権者・受遺者に対する請求申し出の広告期間の満了後、なお相続人があることが明らかではない場合、管理人または検察官が管轄の家庭裁判所に対し、申し立てることにより、6ヶ月以上の期間を定めて相続人搜索の公告を行います。

具体的には、家庭裁判所の掲示板に掲示し、かつ、官報に掲載する方法により行われます。

相続人が現れると、相続人への財産分与が行われ、手続きは終了します。

相続人が現れないとき、現れても相続を承認しなければ相続人の不存在が確定します。

■相続人不存在確定

 6ヶ月以上の期間が満了し、なお相続人が現れない場合は相続人の不存在が確定します。

相続人不存在の場合、相続財産は法人となります。

■特別縁故者分与申し立て

 相続人不存在の確定後3ヶ月以内は特別縁故者による相続財産分与の申し立てが認められます。

家庭裁判所は、申立人を特別縁故者と認定したときは、その者に残余財産の全部または一部を分与することができます。

■国庫への帰属

 最終的に財産が残れば、残った財産はすべて国庫に帰属します。

国庫帰属は金銭で行われることがほとんどです。

寄与分

寄与分

「寄与分」とは、被相続人に対し、財産の増加・維持に特別の寄与や貢献をした相続人がいる場合に、その人の相続分にその寄与、貢献に相当する額を上乗せすることによって、共同相続人間の公平を図る制度です。「寄与分」の金額については、相続人間で協議して決めます。相続人間でその金額がまとまらない場合には、裁判所に審判してもらうこともできます。ただし、寄与分の審判を申し立てるには、遺産分割審判の申し立てがなされていることが前提となります。

寄与分を認めてもらうためには、下記の条件を満たしていなければなりません。

・共同相続人であること(多大な貢献があっても、相続人でない者には請求が認めれれません)

・被相続人の事業に貢献して、財産の維持・増加があること

・特別の寄与があること(単に子が親の面倒を見たというだけでは「特別の寄与」があったとはみなされません。付き添い看護を常に必要とするような看護に相続人が代わりに当たることで、看護費用の支払いを免れるなど、被相続人の財産維持に貢献した場合など、通常の貢献の程度を超えた場合に初めて認められることになります)

特別受益

遺留分減殺請求

特別受益

共同相続人の中で特定の相続人が、被相続人から不動産や金銭などを生前贈与(婚姻、養子縁組のため、生計の資本として)や遺贈を受けているときの利益をいいます。民法903条によって規定されています。

そのような場合に、遺産を単純に法定相続どおりに分けると、特別受益者と他の相続人の間で不公平が生じます。これを是正しようとするのが、特別受益の制度です。

不公平を是正するため、遺産分割の際に、相続開始時の財産に生前贈与の額(相続開始時の価額)を加えたものを相続財産とみなして遺産分割の対象とします。これを「遺産分割の持ち戻し」と言います。遺贈の場合には、もともと相続財産に含まれているので、加算は不要です。

特別受益者の相続分は、特別受益を持ち戻して計算した額から、特別受益学を控除した額となります。

●特別受益となるもの
 1.遺贈
 2.婚姻・養子縁組のための贈与
  ただし、金額がかなり少額、被相続人の生前の資産及び生活状況に照らし合わせた際に、それは扶養の一部だと認められる場合は特別受益になりません。
 3.生計の資本としての贈与

●特別受益の評価の基準時

 特別受益の価額は、原則、相続開始時の時価に換算して評価します。

つまり、過去になされた贈与であっても、その贈与された対象物の価値を相続時の価値に評価し直して、特別受益の額として算定することになります。

なお、遺産分割における相続財産の評価は、遺産分割時の価値によりますので、これとは異なる点に注意が必要です。

特別受益が数十年前の金銭の贈与等の場合、貨幣価値が当時と相続時とで大きく異なることがあります。この場合は、消費者物価指数(総務相が発行する物価指数の一つ)を参考にして、物価上昇率を算出し、当時の価額に上昇率を乗じて計算します。

受贈者の行為によって受贈財産が滅失または価格の増減があった場合には、相続開始時にその財産が存在するものとして特別受益を計算します。ここでの滅失には、火事などによる物理的滅失の他、売買等による経済的滅失も含まれると考えられています。

受贈者の行為によらずに滅失した場合には、特別受益はないものとして評価します。価格の増減があった場合には、変動後の財産の相続開始時の価格で評価します。

持戻免除の意思表示

持戻免除の意思表示

共同相続人の中に特別受益者がいる場合で、他の相続人から特別受益の持ち戻しの請求があった場合、特別受益の持ち戻しを行いますが、被相続人が遺言などで、「特別受益の持ち戻しをしない」という意思表示をしていれば、その遺志に従います(民法903条3項)。これを特別受益の持ち戻しの免除といいます。

持ち戻し免除の意思表示は特別な方式は要せず、贈与と同時でなくても良いし、明示でも默示でもよいとされています。

遺贈についての持ち戻しの免除の意思表示は、遺贈が様式行為である関係から遺言によってなされる必要があると考えられています。

遺産分割の方法

相続財産を分けるには、次の4つの方法があります。

①現物分割

 Aの土地は長男に、Bの土地は長女に、その他の財産は次男にと遺産そのものを現物で分ける方法です。

②換価分割

 相続財産を売り払って金銭に換えて、それを相続人の間で分配する方法です。

 各相続人の法定相続分どおりに遺産を分割したい場合、現物分割をすると価値が下がる場合などにはこの方法をとります。

③代償分割

 特定の財産(現物)を相続する代わりに、他の相続人に金銭を引き渡す方法です。

 代償金がない場合には現実化できません。

④共有

 相続財産を共有のままにしておくという方法です。後にトラブルの元になったりします。

遺産分割協議

遺言書がなかった場合は、相続人全員が協議をして、「誰が何を相続するのか」を決めます。この協議を遺産分割協議といいます。

押印には実印を使用し、印鑑証明書を添付します。

相続人が少数で、相続財産もはっきりしていて、誰も配分に異存がない場合は、遺産分割協議書の作成は簡単です。

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