物納劣後財産
次に掲げるような財産は、ほかに物納に当てるべき適当な財産がない場合に限り物納に当てることができます。
・地上権、永小作権、耕作目的の賃借権、地役権又は入会権の設定されている土地
・法令の規定に違反して建築された建物及びその敷地
・法令の規定により建物の建築ができない土地(建物の建築をすることができる面積が著しく狭くなる土地を含む)
・土地区画整理法による土地区画整理事業の施工に係る土地につき仮換地または一時利用の指定がされていない土地(当該指定区域において使用または収益をすることができない土地を含む)
・建築基準法第43条第1項に規定する道路に2m以上接していない土地
・現に納税義務者の居住の用または事業のように供されている建物及びその敷地(納税義務者がその建物及び敷地について物納の許可を申請する場合を除く)
・劇場、工場、浴場その他の維持・管理に特殊技能を要する建物及びこれらの敷地
・都市計画法の規定による都道府県知事の許可を受けなければならない開発行為をする場合において、当該開発行為が開発許可の基準に適合しないときにおける当該開発行為に係る土地
・都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除く)
・農業振興地域の整備に関する法律の農業振興地域整備計画において農用地区域として定められた区域内の土地
・森林法の規定により保安林として指定された区域内の土地
・過去に生じた事件または事故その他の事情により、正常な取引が行われないおそれがある不動産及びこれに隣接する不動産
「物納劣後財産」は、他に優良な相続財産がある場合は物納できないものと解釈されがちですが、優良な相続財産の賃料収入を下に延納申請を行っている場合等は、その優良財産を物納してしまうと延納申請の継続が困難となることから、「劣後財産を物納に充てる理由書」を提出することで劣後財産を物納することが認められる場合もあります。
■物納不適格財産
次に掲げるような財産は、物納に不適格な財産となります。
・国が安全な所有権を取得できない財産
・争訟事件となる蓋然性が高い財産
・担保権が設定されている不動産、その他これに準ずる事情がある不動産
・差押えがされている財産
・所有権の帰属等について係争中の財産
・境界が明らかでない土地(山林は原則として測量が不要)
・公共用地となっている土地または建物
・今後数年以内の使用に耐えないような建物
・入会慣習のある土地
・維持または管理に特殊技能を要する劇場、工場、浴場その他の大建築物
・隣接する不動産の所有者などと争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産
・隣接地に存する建物等が境界線を超える当該土地(ひさし等で軽微な越境の場合で、同意がある場合を除く)
・証券取引法上の所有の手続きが取られていない株式、定款に譲渡制限がある株式など
・契約内容が貸主に著しく不利な貸地
・共有となっている財産(共有者全員が持分の全部を物納する場合を除く)
・他の不動産と社会通念上一体として利用されている不動産もしくは利用されるべき不動産
・耐用年数を経過している建物。(通常の使用ができるものを除く)
・敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産(申請者において清算することを確認できる場合を除く。)
・土地区画整理事業等が施行されている場合において、収納の時までに発生した土地区画整理法の規定による賦課金その他これに類する債務を国が負うこととなる不動産
・管理または処分を行うために要する費用の額がその収容価額と比較して過大となると見込まれる不動産
・土壌汚染対策法に規定する特定有害物質その他これに類する有害物質により汚染されている不動産
・廃棄物の処理及び清掃に関する法律に規定する廃棄物その他のもので除去しなければ通常の使用ができないものが地下にある不動産
・公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある目的に利用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産
・引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産
・借地契約の効力が及ぶ範囲が特定できない財産
・借地権の目的となっている土地で、当該借地権を有するものが不明であるもの、その他これに類する事情のあるもの
・買戻しの特約や所有権移転の仮登記がが付されている不動産
・売却の見込みのないもの(例えば、無道路地・私道・崖地のみの単独土地・借地権を有しない建物など)
・他の土地に囲まれて公道に通じない土地で囲繞地通行権(民法210条)の内容が明確でないもの
・譲渡に関して、法令に特別の定めがある財産(例:農地法による譲渡制限)
■物納の収納価額
物納財産を国が収納する時の価額は、原則として、相続税の課税価格の計算の基礎となった財産の価額(相続税評価額)によります。ただし、「収納時までに著しい状況変化のあったときは収納時の現況により税務署長が定めた価額」で収納されます。
したがって、「小規模住宅等の特例」又は「特定計画山林の特例」の適用を受けた相続財産を物納する場合については、特例適用後の価額が収納価額になります。
不動産を売却した場合には、譲渡所得税や住民税がかかりますが、物納の場合はかかりません。ただし、相続税評価額は時価よりも低く設定されていることのほうが多いので、どちらを選択したほうが得なのかはケースによります。
物納することによる損得はよく検討する必要があります。ご相談ください。
■物納にかかる利子税
物納申請をした場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、利子税の納付が必要になります。
期間は、物納許可に基づいた納期期限の翌日から、実際に所有権の移転の手続きが完了した日までとなっています。
税務署の手続きに要する期間は利子税が免除されますが、利子税は物納できないので注意が必要です。
7.換金性の高い財産への転換
不動産は売りに出してから現金になるまでの期間が長く、売却を急ぐと金額を下げざるを得ないこともありますので、上場株式やゴルフ会員権など、換金性の高い財産に転換することを検討することも必要です。
ただし、現金や有価証券の評価額は不動産より高いため、納税額が増え、節税にはなりません。有価証券は相場の変動で価値が下がることもありますので注意することも必要です。
8.財産を分けやすくする
9.生命保険
相続税対策として生命保険を活用するメリットは以下の4つになります。
@財産の評価を引き下げる(非課税枠活用)
死亡保険金は、みなし相続財産となるため課税対象ですが、相続人1人につき500万円までが非課税なので、相続税が軽減されます。なお、保険金の受取人が相続人以外の場合は、贈与税が課せられます。
A遺産分割
死亡保険金受取人の指定により、争族を防止する。死亡保険金は受取人固有の財産であるため、遺産分割協議の対象外となります。ただし、相続人間に著しい不公平が生じる場合には、死亡保険金受取人固有の財産とみなされない可能性があります。
複数の受取人を指定することもできますので相続財産を分割しづらい時に活用できます。
代償分割の原資として活用できます。
B受取人を指定できるため、「遺言書代わり」に使えます。
C納税資金準備
相続時に死亡保険金としてまとまった現金が家族に支払われます。
孫に財産を相続すると、相続税は20%加算になりますが、2回の相続が1回で済み、相続税の課税機会が減るため、トータルで見れば相続対策になることもあります。
生命保険金は、相続を放棄しても受け取ることが可能です。
【みなし相続財産】
みなし相続財産とは、本来の相続によって取得した財産でなくても、実質的に相続によって取得した財産をいいます。
代表例は、死亡保険金と死亡退職金であり、これらは被相続人が死亡したことを原因として発生する財産になります。
10.死亡退職金
■死亡退職金とは
従業員が退職前に死亡した場合は、遺族(どの遺族に支払われるかは退職金の規定によって異なります)が退職金を会社からもらうことになります。これが死亡退職金です。
■相続財産となる死亡退職金
被相続人の死亡後3年以内に支給が確定している財産は相続財産とみなされ相続税の課税対象になります。死亡退職金は、死亡した時に会社から支給されることが確定している財産なので相続税の課税対象(所得税はかかりません)になります。
この場合、死亡退職金の受取人が相続人であるときは相続により取得したものとされ、相続を放棄した人及び相続権を失った人や相続人以外の人であるときは遺贈により取得したものとみなされます。
死亡退職金は、一定の金額まで非課税枠があります。相続人以外の人が取得した死亡退職金等には、非課税の適用はありません。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
法定相続人の数には、相続を放棄する法定相続人も人数に含められます。
死亡保険金とは別枠で利用できます。
■退職手当金等とは
退職手当金等とは、退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与のことをいいます。
現物で支給された場合も含まれます。
■経営者の死亡退職金
死亡退職金の一般的な算出方法は以下のとおりです。
死亡退職金=最終報酬月額×役員通算在任年数×功績倍率
※功績倍率:役員任期中の会社への貢献の度合いを、倍率としたものです。特に決まった倍率が定められている訳ではなく、その人の功績の内容に左右されます。
[役員の功績倍率の平均相場]
・代表取締役(創業者) 3.0倍〜3.4倍
・代表取締役 2.4倍〜3.2倍
・専務取締役 2.2倍〜2.7倍
・常務取締役 2.0倍〜2.6倍
・取締役 1.2倍〜2.0倍
・取締役(監査役) 1.0倍〜1.6倍
■弔慰金
弔慰金とは、死者を弔い遺族を慰める意味で送る金銭のことです。
死亡に係る弔慰金や花輪代、葬祭料などについては、通常、相続税はかかりません。
以下のように一定額までは非課税となります。
1.業務上の死亡では、被相続人の死亡当時の普通給与月額の3年分
2.その他の死亡の場合は、被相続人の死亡当時の普通給与月額の6ヶ月分
普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。
この額を超えて支給された弔慰金は、退職金として支給されたものとして取り扱われます。
退職金・弔慰金を支給する際には支給規定を事前に作成しておくことが必要です。
11.債務の利用
12.資産運用
13.現金を不動産に換える
相続財産が現金の場合は、そのまま相続税評価額になります。
土地の場合は、路線価方式または倍率方式で評価され、建物の場合は固定資産税評価額で評価されます。
建物を賃貸した場合の評価額は、土地はさらに約2割下がり、建物は3割下がります。
以前ほど、その差額が大きくはなくなったと思いますが、現金を不動産に変えることによって、相続税評価額は下がると言われています。
小規模宅地の評価減(事業用)が適用されるケースもあります。
ただし、不動産は所有しているだけでも固定資産税などの税金がかかりますし、すぐには換金できないなどのデメリットもあります。賃貸住宅などは、空室リスクも考えなくてはなりません。
14.空き地にアパートを建てる
現金の評価額は、額面そのままです。土地を利用していなかった場合は税金の優遇はありません。空き地にアパートなどを建築することによって相続財産の評価額を下げることができます。
■メリット
@アパートの敷地は、貸家建付地となり、20%程度評価が下がります。
A建物の評価は、多くの場合、建築費の半分以下となります。
B小規模宅地の特例の適用を受けると、200uまでの部分については評価額が50%下がります。
C借入金は、相続税を計算するときには、相続財産から差し引くことができます。
■デメリット
@借り入れをしてアパート等を建てる場合は、借金を残すことになります。しかも借金には利息が付きます。
A出資する金額が大きい
アパートローンを組むにしても、物件価格の3割以上の自己資金が必要といわれています。
Bアパート等は空室による収入不足の危険性があります。
入居率は努力だけでは解決できない一面があります。
C相続人が複数いる場合は、分割できずにもめることがあります。
D家賃滞納
滞納は入居者次第です。1つの対策として入居者審査を厳しくすることはできますが、それだけで完全に防げるものではありません。
家賃を滞納しながら長期間居座られたり、家賃をためるだけためて夜逃げされるなど様々なケースがあり、訴訟が必要なこともあり、解決に難渋することもあります。
E修繕
建物の外壁や屋根、階段などの共用部分の修繕や室内のリフォームが必要になります。
F老朽化と建て替え
土地に老朽化はありませんが、建物は必ず年数の経過で老朽化していきます。
アパートなどの建物を建てると固定資産税の軽減措置を受けられますが、建物が建っているだけではだめで、建物に居住者がいなければ軽減措置は受けられません。
建て替えのためには、入居者に立ち退きを求めることになります。
「建物賃貸借契約」の更新の拒絶や解約の申し入れは、6ヶ月以上前に意思表示をすることで可能になりますが、必ず「正当な事由」と「通知」が必要です。
【立ち退きの正当事由】
・賃貸人が建物の使用を必要とする場合
更新を拒絶する賃貸人がその建物を自ら使う必要性がどの程度あるのか、または、賃借人が他に使用できる建物があるかどうか。
・家賃の支払いを怠るなど借家人に義務違反がある場合
・賃貸人が自分の家族・近親者あるいは従業員を住まわせる為に建物が必要な場合
・建物の老朽化
入居中のアパートやマンション、借家が倒壊してしまうと重大な被害が発生してしまうため、改築や建て替えを理由に借主へ立ち退きを要求する場合
・物件の売却
賃貸人の借金や相続税の支払いがあり、物件を少しでも高く売るために立ち退きを求める場合です。
・賃貸借に関する経緯
・立ち退き料の有無
※建物使用の必要性が主な事由として考慮されます。明確な基準はなく、正当な自由として認められるかどうかは、賃貸人の事情と賃借人の事情を比較して考慮されます。
訴訟になった場合は、立ち退き料は高額になります。
G金利変動
超低金利時代が続いていますが、将来も続くとは限りません。当然ながら金利が上がれば返済額は増えます。
G換金のスピードが遅い
株式などの金融商品の場合は、現金化したければ日にちを要さずに売却して換金することが可能ですが、アパートなどの不動産は月単位もしくは年単位の時間を要することもあります。
H自然災害
火災、地震、津波、台風、河川の氾濫などによる被害です。
I事故
入居者が室内で自殺したり、アパート内で事件が発生したりすることが考えられます。
15.小規模宅地等の軽減措置の適用
16.非上場株式等についての相続税の納税猶予制度
経営承継相続人等が、経営承継円滑化法に基づく経済産業大臣の認定を受けた非上場株式等を先代の経営者である被相続人から相続等により取得し、その会社を経営していく場合、その相続等により後継者が取得した非上場株式等の発行済議決権株式等(相続開始前から既にその後継者が保有していたものを含めます)の3分の2に達するまでの部分(特例非上場株式等)については、その非上場株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が、経営承継相続人等の死亡等の日まで猶予されます。
■対象となる会社の主な要件
@中小企業者であること
A下記の条件に該当しないこと
・風俗営業会社
・上場会社
・上場会社の実質的な子会社
・資産保有型会社(特定資産の合計額の割合が総資産の70%以上)
※特定資産:
・資産運用型会社(特定資産の運用による収入の割合が総収入の75%以上)
・医療法人
・収入がゼロの会社
・相続開始日以降5ヶ月経過する日の常時使用する従業員の数が相続開始日のそれと比べて8割未満の会社
B経済産業大臣の認定を受けていること
C従業員が1人以上であること
D相続開始前3年以内に経営承継相続人等及び経営承継相続人等との特別の関係があるものから現物出資または贈与により取得をした資産がある場合において、相続開始の時におけるその資産の価額の合計額が会社の資産の価額の合計額の70%以上とならないこと
■被相続人の主な要件
@会社の代表権を有していたこと(相続開始直前に代表者でなくても良い)
A同族株主で過半数の議決権を有すること
B代表者であった当時、同族関係者内で筆頭株主であったこと
■経営承継相続人の要件
@会社の代表者であること(相続開始後5ヶ月経過時において代表権を有していること)
A20歳以上であること
B同族関係者と合わせて発行済株式総数の過半数を保有し、同族内で筆頭株主であること
■納税猶予を続けるための事業継続要件
相続税の納税猶予制度では、相続税の申告期限の翌日から5年を経過する日又は経営相続承継人等の死亡の日のいずれか早い日までの期間を経営承継期間とし、その期間中の事業承継要件を求めています。
@後継者が代表者であることを継続していること
A雇用の8割以上(5年間平均)を維持していること
B後継者が筆頭株主であること
C相続した対象株式等を継続して保有していること
D上場会社、資産管理会社、風俗営業会社でないこと
毎年、経済産業大臣と税務署長に報告義務があります。怠った場合には納税猶予が取り消されます。
納税猶予が取り消されると、猶予税額と利子税を合わせて納付することになります。
■相続税申告期限から5年経過後の継続要件(打ち切り事由)
@後継者が対象株式等を譲渡した場合
A非上場会社、資産管理会社、風俗営業会社になった場合
B認定対象会社が解散した場合
納税猶予が取り消されると、猶予税額と利子税を合わせて納付することになります。
17.養子を迎える
養子縁組をすることで、法定相続人の数を増やします。
相続税基礎控除の600万円/1人が認められ、生命保険の非課税分500万円/1人が増えます。
養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。
普通養子、特別養子ともに縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します。したがって、養子は実子と同様に、養親の法定相続人となります。
○普通養子縁組
養子が実親との親子関係を存続したまま、養親との親子関係を作るという二重の親子関係となる縁組をいいます。
当事者の合意により自由に養子縁組を行うことができます(養子が未成年の場合や養子に配偶者がいる場合は家庭裁判所の許可が必要です)。
養親より年上の子を養子にすることはできません。
戸籍上「養子」「養女」と記載されます。
○特別養子縁組
原則として6歳未満の子の福祉のため特に必要があるときに、子とその実親側との法律上の親族関係を消滅させ、実親子関係に準じる安定した養親子関係を家庭裁判所が成立させる縁組制度です。戸籍上でも実子と記載されます。
養子となったものと実親との親子関係は法律上消滅し、実親の相続人にはなれません。
養子の子に子があっても、この者が代襲相続することはありません。
特別養子縁組は、子どもの福祉のためにあるものなので、養親の希望によって進めるものではありません。特別養子縁組になる子供のほとんどは、両親の死亡、予期しない妊娠、特に貧困、レイプ、学生、風俗、パートナーの裏切りなど、女性にとってはとても複雑で苦しい状況の中から生まれてくる子供です。
項 目 |
普通養子縁組 |
特別養子縁組 |
目 的 |
「家」の存続など |
実親が子どもを育てることが著しく困難な場合で、子供の福祉、利益を守るため |
成 立 |
養親と養子の親権者と契約 |
家庭裁判所に申し立て審判を受ける |
養子の年齢 |
制限なし |
原則申し立て時に6歳未満(但し、6歳未満から養親に養育されていた場合は8歳未満) |
養親の条件 |
単独、独身可、成人以上 |
婚姻している夫婦(単独不可)。夫婦の一人が25歳以上で、もう一人が20歳以上であること |
実親との関係 |
実親、養親ともに存在 養子は養親の姓を名乗る |
実親との関係消滅 養子は養親の姓を名乗る
|
親子関係 |
養親子関係 |
実親子関係に準じた関係 |
戸籍の表記 |
養子・養女 実親と養親の両方の名前が記載される |
長男・長女(実子と同じ) |
相 続 |
実親、養親の両方の相続権がある |
実親の相続権は消滅 実子と同じ権利がある |
離 縁 |
当事者の合意によりいつでも可能。養親または養子により申し立て |
原則としてできない 特別な事情がある場合、家庭裁判所は離縁させることができる |
成立までの期間 |
通常は1〜2ヶ月で成立 |
6ヶ月の試験養育期間後、審判 |
■相続税法上の養子
相続税の計算上法定相続人の数に含めることができる養子の数は、次のとおり制限されています。
・被相続人に実子がいる場合は、養子は1人まで
・被相続人に実子がいない場合は、養子は2人まで
無制限に養子の数を増やし、「基礎控除額」を大きくすることで、相続税を安くするということを防ぐ為です。この1人又は2人の養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には、1人又は2人であっても法定相続人の数に含めないで相続税が計算されます。
次のいずれかに当てはまる養子は、実子として取り扱われますので、すべて法定相続人の数に含まれます。
・特別養子縁組による養子
・被相続人の配偶者の実子(連れ子)で被相続人の養子となった者
・被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた者で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった者
・被相続人の実子、養子又は直系卑属が既に死亡しているか、相続権を失った為、その子供などに代わって相続人となった直系卑属
■養子縁組のメリットとデメリット
○メリット
@相続人が増えることで、相続税の基礎控除が増える
A死亡保険金の非課税枠が増える
B死亡退職金の非課税枠が増える
C相続人の立場を継承できる
養子縁組をしていなければ、相続権はありません。養子縁組をすることによって相続人としての立場を保証することができます。
D孫を養子にした場合相続を一代飛ばせる
内容にもよりますが、子と孫で二度相続税を収めるものが一度で済ませることができます
E累進税率が緩和される
相続税は累進課税です。したがって、一人あたりの法定相続分が少なくなると税率が低くなります。
○デメリット
@遺産分割がまとまらず、相続税法で認められている配偶者控除など相続税を優遇する制度が使えない可能性がある
A孫を養子にすると相続税が20%多くなる(但し、代襲相続人となる孫については2割加算はありません)
被相続人の一親等の血族及び配偶者以外のものが相続によって財産を取得した場合、相続税が2割加算になる
孫養子は、民法上は被相続人の一親等の血族に該当しますが、相続税法上は、これに含めないことになっているので注意が必要です。
B相続税の節税目的だけの養子縁組は租税回避行為として否認される可能性がある
C相続人が配偶者のみの場合、配偶者の税額軽減の枠が少なくなる
D姓が変わる
運転免許証、パスポート等の名義変更の手続きが必要になります。
E未成年者を養子にした場合には、未成年者は単独で法律行為を行えない
■代襲相続と養子
被相続人の子の代襲相続人は、相続権を失ったものの子であるとともに、被相続人の直系卑属でなければならないとされています。
養子の子が、養子と養親間の縁組成立後に生まれた子である場合には、養親の直系卑属となります。養子縁組前に生まれていた子は、養親との間で法定血族関係を生じず、養親の直系卑属に当たらないため、養親の遺産を代襲相続できません。
養親及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。(民法729条)
18.結婚・子育てを支援する非課税制度
結婚、出産、育児資金に充てるために直系尊属が金銭等を金融機関等に信託等をした場合に、受贈者1人につき1000万円(結婚費用は300万円)まで贈与税を非課税とする制度です。
■概要
要 件 |
・贈与者が受贈者の直系尊属(父母・祖父母等)であること ・受贈者が20歳以上50歳未満であること ・受贈者の結婚・子育て資金の支払いに充てるために、贈与者が金銭等を拠出すること ・贈与者は、拠出した金銭を金融機関(※)に信託等をすること |
限度額 |
受贈者1人につき1000万円(結婚費用については300万円) |
対象期間 |
平成31年3月31日まで |
申 告 |
受贈者は、本特例の適用を受けようとする旨等を記載した非課税申告書を、専用口座のある金融機関を経由し受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない |
※金融機関とは、信託会社、信託銀行を含む)、銀行等及び金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行うものに限る)をいいます。
○結婚・子育て資金の内容
・結婚に際して支出する婚礼(結婚披露を含む)費用、住居に要する費用、引越しに要する費用のうち一定のもの
・妊娠、出産に要する費用、子供の医療費、子供の保育料のうち一定のもの
教育資金の贈与と同様に、口座開設をした金融機関に領収書等を提出して、必要な時に引き出します。
○非課税対象外となるもの
結婚相談所費用、結納式の費用、お見合い費用、婚約指輪・結婚指輪の購入費用、婚活費用、合コン参加費用、エステ代、新居の家具や家電の購入費、新婚旅行代、ベビー用品の購入費など。
○結婚資金等の一括贈与の制度は、次のいずれかの場合で終了します。
@受贈者が死亡した場合
A受贈者が50歳に達した場合
B贈与した財産がなくなった場合で、終了の合意があった場合
@の場合は残額(使われていなかった金額、非課税対象以外に使ったものを含む)があっても贈与税の課税はなく、受贈者の相続財産として取り扱われます。この場合、残額に対応する相続税額には2割加算の適用はありません。ABの場合は、残額に対して贈与税がかかります。
金融機関は、本特例の適用を受けて信託等がされた金銭等の合計金額及び結婚・子育て資金管理契約の期間中に結婚・子育て資金として払い出した金額の合計金額、その他の事項を記載した調書を受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
本措置を利用している場合でも、暦年贈与が利用できます。
19.祭祀財産(墓地、仏壇、家系図、位牌)の購入
被相続人が生前に墓地や仏壇などの祭祀財産を購入した場合は、相続財産に含まれず相続税の対象になりません。
また墓地の場合は、使用権の購入であり、土地の購入ではありませんので、不動産取得税もかかりません。
高額な美術品や骨董品など、投機を目的としたものについては、対象外です。
相続開始後に購入した場合には非課税になりません。
お墓や仏壇は、相続財産ではありませんので、相続放棄をしても承継することができます。
20.所有財産の評価額を下げる
相続財産の評価は国税庁の「財産評価基本通達」に則て評価され、その評価された金額が相続税評価額となり相続税の基礎となります。所有財産の評価を下げる方法として、小規模住宅の特例の利用、貸付住宅地の評価の利用などがあります。
所有地に、アパートやマンションを建築し賃貸することで、所得税や固定資産税の相続税対策になります。小規模宅地等は50%、一定の条件を満たすものは80%まで評価が下がりますので、納める相続税を軽減します。
■貸家建付地
貸家の敷地の用に供されている宅地をいいます。この貸家建付地については、借家人の存在により宅地所有者の自由な使用収益に制限が加えられることに配慮して、自用地としての価額から借家人の有する権利の価額を控除した価額によって評価します。
貸家建付地の評価=自用地価額(相続税評価額)×(1−借地権割合×借家権割合)
この借地権割合は地域によって異なりますが、路線価図や評価倍率表で確認できます。借家権割合は30%です。路線価は毎年更新されます。
駐車場は原則として自用地評価ですが、賃貸物件の敷地内の駐車場でその利用者が全員賃貸物件の入居者であれば賃貸物件と一体としてその敷地全体を「貸家建付地」として評価します。
■分筆による節税
不動産の相続税は、「購入価格」ではなく、「相続した時の資産価値」に対して課税されます。
分筆とは、一筆の土地を複数に分割することです。土地の資産価値を下げるように分筆することで、相続税対策ができます。
土地の評価は、形状や立地条件によって変わります。評価が高い土地は、「角地」「長方形」「正方形」などが挙げられます。土地がきれいに分筆された場合には、評価額は下がらず、節税にはなりません。
例えば、角地を2つに分けたり(角地の面積が減る)、土地を旗竿地にになるように分筆を行うと、旗竿地の方は、間口狭小補正、奥行長大補正されるため、通常の土地よりも評価が低くなります。
次の条件を満たしてください。
・分筆後の所有者が別々であること(どのように分筆しても1人の相続人が所有しているのであれば減額にはなりません)
・分筆により、地形や接する道路や路線価が変わること
・分筆の手続きは相続税の申告をする前に行うこと
■借家権割合
借家権というのは、貸主から建物を借りて使用する権利のことです。30%と決まっています。
借家権割合は、貸家や貸家建付地を相続する場合に評価額を計算するのに使われる割合です。
貸家建付地の評価=自用地価格×(1−借地権割合×借家権割合)
借地権割合が70%の場合、借地権70%×借家権30%=21%が減額できます。
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