相続対策

相続対策

1.生前贈与
 ■婚姻期間20年以上の夫婦間贈与の特例

9.生命保険

相続税対策は事前に考えておくことが大切です。相続税は原則現金払いなので、納税に必要な現金を準備する必要があります。

相続対策には下記のような対策があります。

1.生前贈与
 相続財産を生前に渡すことによって、相続財産を減らし、相続税を減らすことが目的です。ただし、贈与税と照らし合わせながら進めなくてはなりません。

相続できる人は民法で決められていて、遺言のない限り、法定相続人以外の人が遺産を貰うことはできません。贈与は生前に行うものですから、受贈者を自由に選ぶことができます。

ただし、相続開始前3年以内に贈与された財産は、相続税の課税対象となります。贈与時に贈与税が課税されている場合には、その贈与税額は相続税から控除されるため二重課税とはなりません。

 贈与は、贈与する側と贈与を受ける側、双方の合意があって初めて成立します。現金を贈与する場合には、預金を通して行うことでその記録を残す、贈与契約書を作成しておく等の対策を行っておくと安心です。

双方の合意がなく、たとえばAさんがBさんの名義に財産を移転しただけといった、いわゆる名義財産は贈与とみなされず相続税の対象になります。

毎年のように贈与する場合には、その度ごとに合意が必要です。贈与するる度に契約書を作るべきです。

贈与でも、①婚姻のため、②養子縁組のため、③生計の資本としてのいずれかにあたる場合は、特別受益として相続財産に計上されます。

相続税の速算表
法定相続分に応じた1人あたりの課税遺産額 税率(%) 控除額
1000万円以下 10
1000万円超3000万円以下 15 50万円
3000万円超5000万円以下 20 200万円
5000万円超1億円以下 30 700万円
1億円超2億円以下 40 1700万円
2億円庁億円以下 45 2700万円
3億円調億円以下 50 4200万円
6億円超 55 7200万円
贈与税の速算表
110万円の基礎控除後の課税金額 税率(%) 控除額
200万円以下  10  ―
200万円超400万円以下  15  10万円
400万円超600万円以下  20  30万円
600万円超1000万円以下  30  90万円
1000万円超1500万円以下  40  190万円
1500万円超3000万円以下  45  265万円
3000万円超4500万円以下  50  415万円
4500万円超  55  640万円

■住宅取得資金の贈与
住宅取得等資金贈与の非課税特例は、通常の相続時精算課税制度と異なり、親や祖父母の年齢制限がなくなります。
最大1200万円までの贈与が非課税になります。
同特例は2019年まで継続される予定です。

【住宅取得資金贈与の非課税特例の主な要件】
・贈与者:父母、祖父母などの直系尊属
・受贈者:贈与年の1月1日時点で20歳以上の子供か孫
・贈与の翌年3月15日までに、その住宅取得投資金を、自己の居住の用に供する一定の家屋の新築などに充てて、その家屋を同日までに居住していること、または居住することが確実であると見込まれていること
・贈与を受けた年の受贈者の所得金額が2,000万円以下であること
・贈与の翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告を行っていること
・受贈時に日本国内に住所を有すること
・贈与を受けた時に日本国内に住所を有しないものの日本国籍を有し、かつ、受贈者または贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがあること

■住宅用家屋の主な要件
○新築または取得の場合
 次のすべての要件を満たす家屋をいいます。
 ①新築または取得した住宅用家屋の登記上の床面積(マンションの場合には、その区分所有する部分の登記上床面積)が50㎡以上240㎡以下であること
 ②家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住に供されるものであること

次のいずれかの要件を満たすこと
 ①建築後使用されたことのない住宅用家屋であること
 ②贈与の翌年の3月15日までに入居する見込みであること
 ③耐火建築物以外の家屋の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたものであること。

●中古住宅の場合
 ①建築後、住宅として使用されたものであること 
 ②床面積(登記簿面積)50㎡いじょう240㎡以下
 ②耐火建築物以外の家屋の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたものであること。ただし、地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、一定の「耐震基準適合証明書」、「住宅性能評価書の写し」又は「既存住宅売買瑕疵担保責任保険付保証明書」により証明されたものについては、建築年数の制限はない。

●増改築等の場合
 ①新築または取得した住宅用家屋の登記上の床面積(マンションの場合には、その区分所有する部分の登記上床面積)が50㎡以上240㎡以下であること
 ②家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住に供されるものであること
 ③増改築等の工事に要した費用が100万円以上であること。なお居住用の部分の工事費が、全体の工事費の1/2以上であること

●非課税制度の適用を受けていた特定受贈者が、住宅取得投資金の取得をした日の属する年の翌年12月31日までに、居住の用に供していなかったときは、非課税制度は適用されず、修正申告、納付をすることになります。

●非課税限度額
 ・消費税率10%以外の場合

契約締結年月 良質な住宅 一般住宅
2016年1月〜2017年9月  1,200万円    700万円
2017年10月〜2018年9月  1,000万円    500万円
2018年10月〜2019年6月    800万円    300万円

・消費税率10%の場合

契約締結年月 良質な住宅 一般住宅
2016年10月〜2017年9月  3,000万円  2,500万円
2017年10月〜2018年9月  1,500万円  1,000万円
2018年10月〜2019年9月  1,200万円    700万円

※基礎控除の110万円にプラスして図の金額まで非課税になります。

■「良質な住宅用家屋」とは
 次のいずれかに該当する住宅用家屋をいいます。
・断熱等性能等級4以上
・一次エネルギー消費量等級4以上
・耐震等級2以上
・免震建築物
・高齢者等配慮対策等級3以上

なお、適用対象となる増改築等の範囲に下記のものが加えられます。
・一定の省エネ改修工事、バリアフリー改修工事

■教育資金贈与
 30歳未満の子や孫に教育資金を1人あたり1500万円まで非課税で贈与できる「教育資金の一括贈与制度」です。30歳までに使い切れなかった分については、その時点で贈与税がかかります。
 暦年贈与との併用も可能です。
 制度を利用するには、金融機関に信託用の口座を作り、信託契約を結ぶ必要があります。

相続対策2

●制度のおける教育資金の範囲
 【学校等(※)に対して直接支払われる金銭】
 ①入学金、入園料、授業料、保育料、入学検定料など
 ②学用品費、修学旅行費、学校給食費等学校等における教育に伴って必要な費用など

 ※「学校等」とは
  ①学校教育法上の幼稚園、小・中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校、大学、大学院、専修学校、各種学校
  ②外国の学校(一定のもの)
  ③認定こども園、保育所、保育所に類する施設など
  ④水産大学校、海技教育機構の施設、航空大学校、国立国際医療研究センターの施設

  各種学校に該当しない場合でも「学校等以外のもの」に該当し、500万円の限度額で対象になります。

 【学校等以外に対して直接支払われる次のような金銭で社会通念上相当と認められるもの】
 ①入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費または入学試験の検定料など
 ②教育(学習塾、そろばん等)に関する役務提供の対価、施設利用料
 ③スポーツ(水泳、サッカー、野球等)または文化芸術に関する活動(ピアノレッスン、絵画教室、バレエ教室、バイオリン等)、その他教養向上のための活動(習字、茶道等)に関する指導への対価など
  スポーツジムにかかる費用は、インストラクター等から指導を受けるものに限り、原則500万円までの非課税の対象となります。
 ④学用品費、修学旅行費、遠足費、学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など(学校が費用を徴収して業者等に支払う場合で、学校からの領収書が発行されるもの)
 ⑤通学定期券代、留学渡航費

 ※注意が必要なのは、テキストや用具などの物品は、個人で購入したものは対象とならず、指導者を通じて購入するものに限られます。

 【部活動に要する費用】
 学校の種類により取り扱いが異なるため注意が必要です。
 ①小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校における部活動
  ・部活動の費用で、領収書に「A高校」あるいは「A高校B部」という名義になっているものは、1500万円までの非課税対象です。
  ・部活動で使用する物品については、学校がプリントなどで購入を依頼したものについては、500万円までの非課税枠の対象になります。この場合には、領収書に加え、学校等からの文書を、金融機関に提出する必要があります。
 ②大学、高等専門学校、専修学校、各種学校、インターナショナルスクールにおける部活動
  ・指導の対価(指導者への月謝や謝礼など)として支払う費用(領収書は指導者名義になっている必要があります)や、施設使用料、及び、部活動で使用する物品の費用は500万円までが非課税対象です。
 ③放課後児童クラブ、放課後子ども教室に要する費用

 【部活動において非課税対象外のもの】
 個人で購入したもの(学習塾のテキスト、テニスのラケット、野球のグローブなど)

 【教育資金贈与のデメリット】
 ・制度が期間限定である。
  期間が平成31年3月31日までに限られています。
 ・受贈者が30歳になるまでに教育資金を使い切れなかった場合は贈与税が課される。
 ・取り消しはできない。
  一旦教育資金贈与をすると取り消しはできません。
 ・受贈者が行う手続きが面倒
  この制度を利用するには信託銀行等に一旦お金をあずけなくてはならないのですが、その信託銀行等からお金を引き出すためには塾等から受けとった領収書等を整理して一回一回提出する必要が有ります(来店の要、不要は金融機関によって取り扱いが異なります)。この煩雑な作業を受贈者が30歳になるまで続けていかなくてはなりません。また、「指導をする者の名前」で領収書が出るものに限られるため、自分で買ったものなどで除外されてしまうことがあります。
 ※平成28年1月1日以降、領収書等に記載された支払い金額が1万円以下で、かつ、その年中における合計支払い金額が24万円に達するまでのものについては、教育資金の内訳などを記載した明細書とすることができます。
 ・受贈者に無駄な手間をかけさせてしまった
  特例を使わなくても贈与は毎年110万円までなら無税で実施できるし、そもそも日常的に必要な生活費や学費等の贈与に贈与税はかかりません。
 ・老後の資金からの捻出なので、贈与することにより、老後資金が、少なくなる。
 ・相続税対策として教育資金贈与をしたが、改めて計算をすれば、相続税の心配はなかった。
 ・特定の子や孫に贈与をしたことが原因で兄弟の仲が悪くなったというケースもあります。

 ■生前贈与の注意点
 ①贈与税と相続税の節税額の分岐点を確認しておくこと
 ②贈与の事実を残す(贈与契約書を作成する)
  民法第549条によれば、贈与は自己の財産を無償で相手に与える意思表示をし、相手が受諾することによって成立するとしています。
贈与の事実を第三者に証明できるように、贈与契約書作成してください。
 ③贈与の記録を残す
  贈与があったという記録を残します。毎回口座振込を利用するのも一つの方法です。
 ④定期贈与にならないかをチェックする
  「110万円を10年間に渡って贈与する」などは、定期金に関する権利の贈与となり、贈与税の対象になります。
 ⑤基礎控除は受贈者一人あたりの額
  一般贈与における基礎控除の110万円は、受贈者一人あたりの額です。
  例えば父親から110万円、母親から110万円を同じ年に贈与された場合、その人は合計220万円の贈与を受けたことになり、220万円から基礎控除110万円を引いた残りの110万円に対しては贈与税がかかります。
 ⑥贈与税は受贈者が支払う
  贈与者が贈与税を負担すると、負担した贈与税額も贈与とみなされます。
 ⑦贈与税の申告・納付を行う
  1年間の贈与財産の合計額が110万円を超える場合には、贈与税の申告をし、納税をします。
 ⑥名義変更が必要な贈与を把握しておく
  不動産などの名義変更が必要なものの贈与は、名義変更をしておきます。
 ⑦受贈者が自由に使えるようにする
  贈与と認められるには、受贈者が自由に使える状態にすることが必要です。
 ⑧定期金の贈与とみなされないように対策する
  定期贈与と誤解されないためには、「金額・贈与日」を変えたほうが良いのかもしれません。
 ⑨名義預金
  名義預金は贈与と認められません。
  ただし、子供が未成年の場合は親が通帳と印鑑を保管してもいいと言われています。
誰が管理している口座かということがポイントとなります。
 ④分割して行う
  長い時間をかけて、多くの人に贈与します。贈与は一括にしないで、分割して行うことを基本とします。
 ⑦遺産分割のトラブルとならないように注意する
 ⑧相続開始前3年以内の相続人に対する贈与は相続財産として加算されることを確認する
  相続対策は早めに始めたほうが効果が出やすいです。

■婚姻期間20年以上の夫婦間贈与の特例(おしどり贈与)
 婚姻届けを出した戸籍上の夫婦になってから20年経つと、居住用不動産やその取得資金を贈与した場合に、一定の条件を満たすときは、基礎控除額110万円の他に、最高2,000万円まで贈与税の配偶者控除が使えるようになります。
相続開始前3年以内の生前贈与は相続財産に加算されますが、配偶者控除を利用した贈与は加算対象から外れます。

 ●配偶者贈与の特例の要件
 ①夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に、贈与が行われたこと
  ※婚姻期間は、正式な婚姻届けを出してからの期間です。同棲期間や婚約期間は含まれません。
 ②贈与を受けた財産は、国内にある居住用不動産(又は国内にある居住用不動産の取得費)であること
 ③贈与のあった年の翌年3月15日まで当該居住用不動産を居住の用に供し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みであること
 ④土地又は借地権のみの贈与の場合、家屋の所有者が配偶者または同居している家族であること
 ⑤同じ配偶者からは、この贈与の特例は、一生に一度しか使えないこと
 ⑥控除を受ける金額等の記載があり、かつ、婚姻期間が20年以上である旨を証する書類、その他所定の書類を添付した贈与税の申告書を提出すること

2.暦年贈与と連年贈与
 暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間(暦年)に贈与を受けた財産の合計額に応じて贈与税額を計算することです。
贈与を受けた金額が110万円(基礎控除額)以下であれば贈与税の申告は不要です。110万円を超える贈与を受けた場合には、翌年の2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告が必要になります。110万円を控除した額に贈与税が課されます。
この場合の基礎控除は、贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた人ごとに1年間で110万円です。
したがって、配偶者・子・子の配偶者・孫と、贈与を受ける人数が多いほど効果があります。
ただし、相続前3年以内の相続人等への贈与は相続税の対象になります。
贈与税の配偶者控除や、教育資金の贈与を利用した場合には、申告が必要です。
連年贈与とは、毎年続けて贈与することです。
国税庁のタックスアンサーに連年贈与について書かれています。

毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合
Q1
 親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。
A1
 各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。 ただし、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です。 なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。
(相法21の5、24、措法70の2の4、相基通24-1)

誤解されやすいのですが、このタックスアンサーでの課税例とされているものは、1000万円を10年間で分割して贈与する約束(有期定期金に関する権利の贈与)をしたケースです。このようなケースでは、1年間に1000万円を贈与したものとして贈与税が課税されます。

10年間の約束ではなく、各年に贈与の約束をしていれば、贈与税の課税はされないのです。

税務調査の結果、「連年贈与である」と認定するためには、「連年贈与の契約があった」とする証拠が必要なわけです。

贈与は、贈与者と受贈者の間で、「あげます」「もらいます」「財産を渡す」の3つが揃って初めて認められます。

■連年贈与とみなされないためには
 ・贈与の度に、贈与契約書を作成する
 ・受贈者本人の預金口座に振り込み、証拠を残す
 ・贈与金額は一定の金額でない方が、疑問を持たれにくい
 ・贈与の時期は違っていたほうが、誤解を招きにくい
 ・振込先の口座は、受贈者の口座で、通帳と印鑑は受贈者が管理する(受贈者が、贈与を受けていることの認識が重要)

3.相続時精算課税制度
 相続時精算課税贈与とは、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上(年齢は、贈与があった年の1月1日現在のもの)の子や孫へ贈与した場合、2500万円までは贈与税が非課税となる制度です。ただし、贈与者が死亡した時に、贈与した金額を相続時の資産総額に加えて相続税を計算します。贈与税額が、相続税額を超える場合にはその金額が還付されます。

この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に、「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍謄本などの一定の書類を添付し、贈与税の申告をする必要があります。

贈与するものは現金、不動産など、特に制限はありません。贈与回数にも制限はありません。

■相続時精算課税制度のメリット
・生前贈与の2500万円までは贈与税がかからない。2500万円を超えた額には20%の贈与税がかかります。住宅取得資金の生前贈与は3500万円まで非課税。
・税金がかからずに財産移転を早めに実行できる。
・生前贈与した時の財産の評価額に対して将来の相続税が課税されるので、値上がりが見込まれる財産(自社株、有価証券、土地など)を生前に贈与すれば相続財産の評価を下げたことになる。
・収益不動産を生前贈与した場合、家賃収入が受贈者のものとなり、受贈者の財産を形成するとともに、贈与者の相続財産の増加を防ぐことになる。
・生前贈与した財産の取り合いになることはないため、争いを防ぐことになる。

■相続時精算課税制度のデメリット
・相続時精算課税の選択後は、撤回することができない。
・相続時精算課税の選択後は、暦年課税に戻れないため、110万円の基礎控除が利用できなくなる。別の贈与者からの暦年贈与は使える。
・現金等を贈与すると、相続時までに消費して相続税が払えないことがある。
生前贈与時の財産の評価額が将来の相続財産の評価額とされるので、財産が値下がりすると不利になる。
・相続時精算課税は、課税の繰延制度であるため、相続財産を減らすことはできない。暦年課税で贈与したものは、相続財産から除かれる。
・生前贈与の選択した後の贈与は、贈与額の多寡にかかわらず申告が必要となる。
小規模宅地等の評価減の特例は適用されない。
・相続時精算課税制度を適用した土地、建物等は、物納に使えない。
・不動産を相続すると、登録免許税が0.4%で済みますが、生前贈与の場合は、登録免許税が2.0%、さらに不動産取得税(3〜4%)も発生するため、名義変更の費用に違いがある。
※登録免許税とは、相続登記で名義変更をする時に発生する税金のことです。

■配偶者への贈与(贈与税の配偶者控除)
 配偶者には、一定の要件のもと居住用不動産(取得資金を含みます)の贈与があった場合、110万円とは別に2000万円の配偶者控除があります。配偶者の生活基盤を安定させるという趣旨です。
通常、生前贈与された財産のうち相続開始前3年以内に贈与されたものは、相続財産にプラスして相続税を計算しなければなりませんが、贈与税の配偶者控除の制度により贈与された財産は、相続開始前3年以内であっても相続税を計算するときには相続財産にプラスされません。
この特例は、同一の配偶者間では一生に一度しか適用を受けることができません。

■適用条件
・婚姻期間が20年以上であること
・同じ夫婦間において、過去に同制度の適用を受けていないこと
・贈与財産は、国内にある居住用不動産または、国内にある居住用不動産の取得資金のいずれかであること
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与された(又は取得した)居住用不動産を居住用の用に供し、その後も引き続き居住する見込みであること
・贈与税の申告をすること(税金は発生しなくても、特例であるために申告が必要になります)
 土地の評価は路線価が基準になります。

■贈与税の配偶者控除が相続税対策にならないケース
・そもそも相続税が課税されない場合
・贈与を受けた配偶者が先に亡くなった場合

■注意すること
 不動産の名義変更をする際に必要な登録免許税と不動産取得税が課税されます。不動産の登録免許税は、相続の場合は固定資産税評価額の0.4%で済みますが、贈与の場合は2%となっています。したがって、相続で取得したほうが登録免許税は安くなります。
不動産取得税は、相続の時には課税がありませんが、贈与の時には課税されます。
不動産の名義を変更するだけでコストがかかることを十分に理解して、贈与税の配偶者控除の制度を検討する必要があります。

5.財産の中に現金を作る
 相続税のの納付方法は、原則として「相続税の申告期限(被相続人の死亡時より10ヶ月)までに現金での一括払い」となっています。
申告期限までに納付できなかった場合には、延滞税がかかります。この延滞税が非常に高利です。納付期限から2ヶ月を経過する日までは年率2.9%、それを過ぎると年率9.2%になります。
現金による一括納付ができない場合、年賦による「延納」や相続した財産での「物納」が一定要件を満たせば認められます。この場合は申告期限までに「延納」、「物納」の申請が必要です。「延納」とは、相続税を分割して納付する方法です。「物納」は必ずしも認められるものではありません。「延納」、「物納」いずれの場合も相続人ごとにその可否が税務署によって判定されるため、遺産分割の際に納税方法を考えて行うことが必要です。

■対策
・生命保険の加入
 死亡保障でまとまった現金を遺族に残すことができます。死亡保険金は、財産評価額を減らす非課税枠があるので、節税対策にもなります。

6.物納
 物納とは、一括金銭によっても延納によっても相続税を支払うことが困難な場合に限り、税務署長の許可を得て、相続財産そのもので納付することができるという制度です。
物納すれば、譲渡所得税はかかりません。不動産を売却した時の譲渡所得には、最低でも20%の譲渡所得税がかかります。

■物納をするための要件(相続法第42条)
 以下に列記する全ての要件を満たす場合に、物納の許可が受けられます。
 ①金銭一括納付でも延納でも相続税の納付をするのが難しいこと
 ②物納する財産が相続財産であること(被相続人以外の者が所有する財産を物納することはできません)
 ③申請財産が定められた種類の財産で申請順位によっていること(注1)
 ④物納適格財産であること=国が後に処分しやすい財産であること(質権や抵当権付きの財産は不可)
 ⑤物納申請書および物納手続き関係書類を期限までに提出すること

■物納に充てることができる財産の種類及び順位
 物納に充てることのできる財産は、納付すべき相続税の課税価格の基礎となった相続財産のうち、下記に掲げる財産及び順位で、その所在が日本国内にあるものに限ります。

物納申請した場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、利子税の納付が必要になります。

順位 財産の種類
 第1順位  1.国債・地方債・不動産・船舶
 2.不動産のうち物納劣後財産に該当するもの
 第2順位  3.社債、株式(特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含み、短期社債等を除く。)、証券投資信託又は貸付信託の受益証券
 4.株式(特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含む。)のうち物納劣後財産に該当するもの
 第3順位  5.動産

複数の不動産を相続した場合などは、物納に当てる不動産の選択は納税者ができます。

相続対策3

物納劣後財産
 次に掲げるような財産は、ほかに物納に当てるべき適当な財産がない場合に限り物納に当てることができます。
・地上権、永小作権、耕作目的の賃借権、地役権又は入会権の設定されている土地
・法令の規定に違反して建築された建物及びその敷地

・法令の規定により建物の建築ができない土地(建物の建築をすることができる面積が著しく狭くなる土地を含む)
・土地区画整理法による土地区画整理事業の施工に係る土地につき仮換地または一時利用の指定がされていない土地(当該指定区域において使用または収益をすることができない土地を含む)
・建築基準法第43条第1項に規定する道路に2m以上接していない土地
・現に納税義務者の居住の用または事業のように供されている建物及びその敷地(納税義務者がその建物及び敷地について物納の許可を申請する場合を除く)
・劇場、工場、浴場その他の維持・管理に特殊技能を要する建物及びこれらの敷地
・都市計画法の規定による都道府県知事の許可を受けなければならない開発行為をする場合において、当該開発行為が開発許可の基準に適合しないときにおける当該開発行為に係る土地
・都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除く)
・農業振興地域の整備に関する法律の農業振興地域整備計画において農用地区域として定められた区域内の土地
・森林法の規定により保安林として指定された区域内の土地
・過去に生じた事件または事故その他の事情により、正常な取引が行われないおそれがある不動産及びこれに隣接する不動産

「物納劣後財産」は、他に優良な相続財産がある場合は物納できないものと解釈されがちですが、優良な相続財産の賃料収入を下に延納申請を行っている場合等は、その優良財産を物納してしまうと延納申請の継続が困難となることから、「劣後財産を物納に充てる理由書」を提出することで劣後財産を物納することが認められる場合もあります。

■物納不適格財産
 次に掲げるような財産は、物納に不適格な財産となります。
・国が安全な所有権を取得できない財産
・争訟事件となる蓋然性が高い財産
・担保権が設定されている不動産、その他これに準ずる事情がある不動産
・差押えがされている財産
・所有権の帰属等について係争中の財産
・境界が明らかでない土地(山林は原則として測量が不要)
・公共用地となっている土地または建物
・今後数年以内の使用に耐えないような建物
・入会慣習のある土地
・維持または管理に特殊技能を要する劇場、工場、浴場その他の大建築物
・隣接する不動産の所有者などと争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産
・隣接地に存する建物等が境界線を超える当該土地(ひさし等で軽微な越境の場合で、同意がある場合を除く)
・証券取引法上の所有の手続きが取られていない株式、定款に譲渡制限がある株式など
・契約内容が貸主に著しく不利な貸地
・共有となっている財産(共有者全員が持分の全部を物納する場合を除く)
・他の不動産と社会通念上一体として利用されている不動産もしくは利用されるべき不動産
・耐用年数を経過している建物。(通常の使用ができるものを除く)
・敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産(申請者において清算することを確認できる場合を除く。)
・土地区画整理事業等が施行されている場合において、収納の時までに発生した土地区画整理法の規定による賦課金その他これに類する債務を国が負うこととなる不動産
・管理または処分を行うために要する費用の額がその収容価額と比較して過大となると見込まれる不動産
・土壌汚染対策法に規定する特定有害物質その他これに類する有害物質により汚染されている不動産
・廃棄物の処理及び清掃に関する法律に規定する廃棄物その他のもので除去しなければ通常の使用ができないものが地下にある不動産
・公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある目的に利用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産
・引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産
・借地契約の効力が及ぶ範囲が特定できない財産
・借地権の目的となっている土地で、当該借地権を有するものが不明であるもの、その他これに類する事情のあるもの
・買戻しの特約や所有権移転の仮登記がが付されている不動産
・売却の見込みのないもの(例えば、無道路地・私道・崖地のみの単独土地・借地権を有しない建物など)
・他の土地に囲まれて公道に通じない土地で囲繞地通行権(民法210条)の内容が明確でないもの
・譲渡に関して、法令に特別の定めがある財産(例:農地法による譲渡制限)

■物納の収納価額
 物納財産を国が収納する時の価額は、原則として、相続税の課税価格の計算の基礎となった財産の価額(相続税評価額)によります。ただし、「収納時までに著しい状況変化のあったときは収納時の現況により税務署長が定めた価額」で収納されます。
したがって、「小規模住宅等の特例」又は「特定計画山林の特例」の適用を受けた相続財産を物納する場合については、特例適用後の価額が収納価額になります。
不動産を売却した場合には、譲渡所得税や住民税がかかりますが、物納の場合はかかりません。ただし、相続税評価額は時価よりも低く設定されていることのほうが多いので、どちらを選択したほうが得なのかはケースによります。
物納することによる損得はよく検討する必要があります。ご相談ください。

■物納にかかる利子税
 物納申請をした場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、利子税の納付が必要になります。
期間は、物納許可に基づいた納期期限の翌日から、実際に所有権の移転の手続きが完了した日までとなっています。
税務署の手続きに要する期間は利子税が免除されますが、利子税は物納できないので注意が必要です。

7.換金性の高い財産への転換
 不動産は売りに出してから現金になるまでの期間が長く、売却を急ぐと金額を下げざるを得ないこともありますので、上場株式やゴルフ会員権など、換金性の高い財産に転換することを検討することも必要です。
ただし、現金や有価証券の評価額は不動産より高いため、納税額が増え、節税にはなりません。有価証券は相場の変動で価値が下がることもありますので注意することも必要です。

8.財産を分けやすくする

9.生命保険
 相続税対策として生命保険を活用するメリットは以下の4つになります。
 ①財産の評価を引き下げる(非課税枠活用)
  死亡保険金は、みなし相続財産となるため課税対象ですが、相続人1人につき500万円までが非課税なので、相続税が軽減されます。なお、保険金の受取人が相続人以外の場合は、贈与税が課せられます。
 ②遺産分割
  死亡保険金受取人の指定により、争族を防止する。死亡保険金は受取人固有の財産であるため、遺産分割協議の対象外となります。ただし、相続人間に著しい不公平が生じる場合には、死亡保険金受取人固有の財産とみなされない可能性があります。
  複数の受取人を指定することもできますので相続財産を分割しづらい時に活用できます。
  代償分割の原資として活用できます。
 ③受取人を指定できるため、「遺言書代わり」に使えます。
 ④納税資金準備
  相続時に死亡保険金としてまとまった現金が家族に支払われます。

 孫に財産を相続すると、相続税は20%加算になりますが、2回の相続が1回で済み、相続税の課税機会が減るため、トータルで見れば相続対策になることもあります。
 生命保険金は、相続を放棄しても受け取ることが可能です。

【みなし相続財産】
 みなし相続財産とは、本来の相続によって取得した財産でなくても、実質的に相続によって取得した財産をいいます。
代表例は、死亡保険金と死亡退職金であり、これらは被相続人が死亡したことを原因として発生する財産になります。

10.死亡退職金
 ■死亡退職金とは
  従業員が退職前に死亡した場合は、遺族(どの遺族に支払われるかは退職金の規定によって異なります)が退職金を会社からもらうことになります。これが死亡退職金です。 

 ■相続財産となる死亡退職金
  被相続人の死亡後3年以内に支給が確定している財産は相続財産とみなされ相続税の課税対象になります。死亡退職金は、死亡した時に会社から支給されることが確定している財産なので相続税の課税対象(所得税はかかりません)になります。
  この場合、死亡退職金の受取人が相続人であるときは相続により取得したものとされ、相続を放棄した人及び相続権を失った人や相続人以外の人であるときは遺贈により取得したものとみなされます。

  死亡退職金は、一定の金額まで非課税枠があります。相続人以外の人が取得した死亡退職金等には、非課税の適用はありません。
  非課税限度額=500万円×法定相続人の数
  法定相続人の数には、相続を放棄する法定相続人も人数に含められます。
  死亡保険金とは別枠で利用できます。

 ■退職手当金等とは
  退職手当金等とは、退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与のことをいいます。
  現物で支給された場合も含まれます。

 ■経営者の死亡退職金
  死亡退職金の一般的な算出方法は以下のとおりです。
  死亡退職金=最終報酬月額×役員通算在任年数×功績倍率
  ※功績倍率:役員任期中の会社への貢献の度合いを、倍率としたものです。特に決まった倍率が定められている訳ではなく、その人の功績の内容に左右されます。
  [役員の功績倍率の平均相場]
  ・代表取締役(創業者) 3.0倍〜3.4倍
  ・代表取締役     2.4倍〜3.2倍
  ・専務取締役     2.2倍〜2.7倍
  ・常務取締役     2.0倍〜2.6倍
  ・取締役       1.2倍〜2.0倍
  ・取締役(監査役)   1.0倍〜1.6倍

 ■弔慰金
 弔慰金とは、死者を弔い遺族を慰める意味で送る金銭のことです。
 死亡に係る弔慰金や花輪代、葬祭料などについては、通常、相続税はかかりません。
 以下のように一定額までは非課税となります。
 1.業務上の死亡では、被相続人の死亡当時の普通給与月額の3年分
 2.その他の死亡の場合は、被相続人の死亡当時の普通給与月額の6ヶ月分
 普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。
 この額を超えて支給された弔慰金は、退職金として支給されたものとして取り扱われます。
 退職金・弔慰金を支給する際には支給規定を事前に作成しておくことが必要です。

11.債務の利用

12.資産運用

13.現金を不動産に換える
 相続財産が現金の場合は、そのまま相続税評価額になります。
 土地の場合は、路線価方式または倍率方式で評価され、建物の場合は固定資産税評価額で評価されます。
 建物を賃貸した場合の評価額は、土地はさらに約2割下がり、建物は3割下がります。
 以前ほど、その差額が大きくはなくなったと思いますが、現金を不動産に変えることによって、相続税評価額は下がると言われています。
 小規模宅地の評価減(事業用)が適用されるケースもあります。
 ただし、不動産は所有しているだけでも固定資産税などの税金がかかりますし、すぐには換金できないなどのデメリットもあります。賃貸住宅などは、空室リスクも考えなくてはなりません。

14.空き地にアパートを建てる
 現金の評価額は、額面そのままです。土地を利用していなかった場合は税金の優遇はありません。空き地にアパートなどを建築することによって相続財産の評価額を下げることができます。
■メリット
 ①アパートの敷地は、貸家建付地となり、20%程度評価が下がります。
 ②建物の評価は、多くの場合、建築費の半分以下となります。
 ③小規模宅地の特例の適用を受けると、200㎡までの部分については評価額が50%下がります。
 ④借入金は、相続税を計算するときには、相続財産から差し引くことができます。

■デメリット
 ①借り入れをしてアパート等を建てる場合は、借金を残すことになります。しかも借金には利息が付きます。
 ②出資する金額が大きい
  アパートローンを組むにしても、物件価格の3割以上の自己資金が必要といわれています。
 ③アパート等は空室による収入不足の危険性があります。
  入居率は努力だけでは解決できない一面があります。
 ④相続人が複数いる場合は、分割できずにもめることがあります。
 ⑤家賃滞納
  滞納は入居者次第です。1つの対策として入居者審査を厳しくすることはできますが、それだけで完全に防げるものではありません。
 家賃を滞納しながら長期間居座られたり、家賃をためるだけためて夜逃げされるなど様々なケースがあり、訴訟が必要なこともあり、解決に難渋することもあります。
 ⑥修繕
  建物の外壁や屋根、階段などの共用部分の修繕や室内のリフォームが必要になります。
 ⑦老朽化と建て替え
  土地に老朽化はありませんが、建物は必ず年数の経過で老朽化していきます。
 アパートなどの建物を建てると固定資産税の軽減措置を受けられますが、建物が建っているだけではだめで、建物に居住者がいなければ軽減措置は受けられません。
 建て替えのためには、入居者に立ち退きを求めることになります。
 「建物賃貸借契約」の更新の拒絶や解約の申し入れは、6ヶ月以上前に意思表示をすることで可能になりますが、必ず「正当な事由」と「通知」が必要です。

【立ち退きの正当事由】
 ・賃貸人が建物の使用を必要とする場合
  更新を拒絶する賃貸人がその建物を自ら使う必要性がどの程度あるのか、または、賃借人が他に使用できる建物があるかどうか。
 ・家賃の支払いを怠るなど借家人に義務違反がある場合
 ・賃貸人が自分の家族・近親者あるいは従業員を住まわせる為に建物が必要な場合
 ・建物の老朽化
  入居中のアパートやマンション、借家が倒壊してしまうと重大な被害が発生してしまうため、改築や建て替えを理由に借主へ立ち退きを要求する場合
 ・物件の売却
  賃貸人の借金や相続税の支払いがあり、物件を少しでも高く売るために立ち退きを求める場合です。
 ・賃貸借に関する経緯
 ・立ち退き料の有無 

 ※建物使用の必要性が主な事由として考慮されます。明確な基準はなく、正当な自由として認められるかどうかは、賃貸人の事情と賃借人の事情を比較して考慮されます。
訴訟になった場合は、立ち退き料は高額になります。

 ⑧金利変動
  超低金利時代が続いていますが、将来も続くとは限りません。当然ながら金利が上がれば返済額は増えます。
 ⑧換金のスピードが遅い
  株式などの金融商品の場合は、現金化したければ日にちを要さずに売却して換金することが可能ですが、アパートなどの不動産は月単位もしくは年単位の時間を要することもあります。
 ⑨自然災害
  火災、地震、津波、台風、河川の氾濫などによる被害です。
 ⑩事故
  入居者が室内で自殺したり、アパート内で事件が発生したりすることが考えられます。

15.小規模宅地等の軽減措置の適用

16.非上場株式等についての相続税の納税猶予制度
 経営承継相続人等が、経営承継円滑化法に基づく経済産業大臣の認定を受けた非上場株式等を先代の経営者である被相続人から相続等により取得し、その会社を経営していく場合、その相続等により後継者が取得した非上場株式等の発行済議決権株式等(相続開始前から既にその後継者が保有していたものを含めます)の3分の2に達するまでの部分(特例非上場株式等)については、その非上場株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が、経営承継相続人等の死亡等の日まで猶予されます。

■対象となる会社の主な要件
 ①中小企業者であること 
 ②下記の条件に該当しないこと  
  ・風俗営業会社  
  ・上場会社  
  ・上場会社の実質的な子会社  
  ・資産保有型会社(特定資産の合計額の割合が総資産の70%以上)
   ※特定資産:
  ・資産運用型会社(特定資産の運用による収入の割合が総収入の75%以上)
  ・医療法人
  ・収入がゼロの会社
  ・相続開始日以降5ヶ月経過する日の常時使用する従業員の数が相続開始日のそれと比べて8割未満の会社
 ③経済産業大臣の認定を受けていること
 ④従業員が1人以上であること
 ⑤相続開始前3年以内に経営承継相続人等及び経営承継相続人等との特別の関係があるものから現物出資または贈与により取得をした資産がある場合において、相続開始の時におけるその資産の価額の合計額が会社の資産の価額の合計額の70%以上とならないこと

■被相続人の主な要件
 ①会社の代表権を有していたこと(相続開始直前に代表者でなくても良い)
 ②同族株主で過半数の議決権を有すること
 ③代表者であった当時、同族関係者内で筆頭株主であったこと

■経営承継相続人の要件
 ①会社の代表者であること(相続開始後5ヶ月経過時において代表権を有していること)
 ②20歳以上であること
 ③同族関係者と合わせて発行済株式総数の過半数を保有し、同族内で筆頭株主であること

■納税猶予を続けるための事業継続要件
 相続税の納税猶予制度では、相続税の申告期限の翌日から5年を経過する日又は経営相続承継人等の死亡の日のいずれか早い日までの期間を経営承継期間とし、その期間中の事業承継要件を求めています。
 ①後継者が代表者であることを継続していること
 ②雇用の8割以上(5年間平均)を維持していること
 ③後継者が筆頭株主であること
 ④相続した対象株式等を継続して保有していること
 ⑤上場会社、資産管理会社、風俗営業会社でないこと
毎年、経済産業大臣と税務署長に報告義務があります。怠った場合には納税猶予が取り消されます。
納税猶予が取り消されると、猶予税額と利子税を合わせて納付することになります。

■相続税申告期限から5年経過後の継続要件(打ち切り事由)
 ①後継者が対象株式等を譲渡した場合
 ②非上場会社、資産管理会社、風俗営業会社になった場合
 ③認定対象会社が解散した場合
納税猶予が取り消されると、猶予税額と利子税を合わせて納付することになります。

17.養子を迎える
 養子縁組をすることで、法定相続人の数を増やします。
 相続税基礎控除の600万円/1人が認められ、生命保険の非課税分500万円/1人が増えます。
 養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。
 普通養子、特別養子ともに縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します。したがって、養子は実子と同様に、養親の法定相続人となります。
 ○普通養子縁組
  養子が実親との親子関係を存続したまま、養親との親子関係を作るという二重の親子関係となる縁組をいいます。
  当事者の合意により自由に養子縁組を行うことができます(養子が未成年の場合や養子に配偶者がいる場合は家庭裁判所の許可が必要です)。
  養親より年上の子を養子にすることはできません。
  戸籍上「養子」「養女」と記載されます。
 ○特別養子縁組
  原則として6歳未満の子の福祉のため特に必要があるときに、子とその実親側との法律上の親族関係を消滅させ、実親子関係に準じる安定した養親子関係を家庭裁判所が成立させる縁組制度です。戸籍上でも実子と記載されます。
養子となったものと実親との親子関係は法律上消滅し、実親の相続人にはなれません。
養子の子に子があっても、この者が代襲相続することはありません。
特別養子縁組は、子どもの福祉のためにあるものなので、養親の希望によって進めるものではありません。特別養子縁組になる子供のほとんどは、両親の死亡、予期しない妊娠、特に貧困、レイプ、学生、風俗、パートナーの裏切りなど、女性にとってはとても複雑で苦しい状況の中から生まれてくる子供です。

項 目 普通養子縁組 特別養子縁組
目 的 「家」の存続など 実親が子どもを育てることが著しく困難な場合で、子供の福祉、利益を守るため
成 立 養親と養子の親権者と契約 家庭裁判所に申し立て審判を受ける
養子の年齢 制限なし 原則申し立て時に6歳未満(但し、6歳未満から養親に養育されていた場合は8歳未満)
養親の条件 単独、独身可、成人以上 婚姻している夫婦(単独不可)。夫婦の一人が25歳以上で、もう一人が20歳以上であること
実親との関係 実親、養親ともに存在
養子は養親の姓を名乗る
実親との関係消滅
養子は養親の姓を名乗る
親子関係 養親子関係 実親子関係に準じた関係
戸籍の表記 養子・養女
実親と養親の両方の名前が記載される
長男・長女(実子と同じ)
相 続 実親、養親の両方の相続権がある 実親の相続権は消滅
実子と同じ権利がある
離 縁 当事者の合意によりいつでも可能。養親または養子により申し立て 原則としてできない
特別な事情がある場合、家庭裁判所は離縁させることができる
成立までの期間 通常は1〜2ヶ月で成立 6ヶ月の試験養育期間後、審判

 ■相続税法上の養子
  相続税の計算上法定相続人の数に含めることができる養子の数は、次のとおり制限されています。
  ・被相続人に実子がいる場合は、養子は1人まで
  ・被相続人に実子がいない場合は、養子は2人まで
  無制限に養子の数を増やし、「基礎控除額」を大きくすることで、相続税を安くするということを防ぐ為です。この1人又は2人の養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には、1人又は2人であっても法定相続人の数に含めないで相続税が計算されます。

  次のいずれかに当てはまる養子は、実子として取り扱われますので、すべて法定相続人の数に含まれます。
  ・特別養子縁組による養子
  ・被相続人の配偶者の実子(連れ子)で被相続人の養子となった者
  ・被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた者で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった者
  ・被相続人の実子、養子又は直系卑属が既に死亡しているか、相続権を失った為、その子供などに代わって相続人となった直系卑属

■養子縁組のメリットとデメリット
 ○メリット
  ①相続人が増えることで、相続税の基礎控除が増える
  ②死亡保険金の非課税枠が増える
  ③死亡退職金の非課税枠が増える
  ④相続人の立場を継承できる
   養子縁組をしていなければ、相続権はありません。養子縁組をすることによって相続人としての立場を保証することができます。
  ⑤孫を養子にした場合相続を一代飛ばせる

   内容にもよりますが、子と孫で二度相続税を収めるものが一度で済ませることができます
  ⑥累進税率が緩和される
   相続税は累進課税です。したがって、一人あたりの法定相続分が少なくなると税率が低くなります。
 ○デメリット
  ①遺産分割がまとまらず、相続税法で認められている配偶者控除など相続税を優遇する制度が使えない可能性がある
  ②孫を養子にすると相続税が20%多くなる(但し、代襲相続人となる孫については2割加算はありません)
   被相続人の一親等の血族及び配偶者以外のものが相続によって財産を取得した場合、相続税が2割加算になる
   孫養子は、民法上は被相続人の一親等の血族に該当しますが、相続税法上は、これに含めないことになっているので注意が必要です。
  ③相続税の節税目的だけの養子縁組は租税回避行為として否認される可能性がある
  ④相続人が配偶者のみの場合、配偶者の税額軽減の枠が少なくなる
  ⑤姓が変わる
   運転免許証、パスポート等の名義変更の手続きが必要になります。
  ⑥未成年者を養子にした場合には、未成年者は単独で法律行為を行えない

 ■代襲相続と養子
  被相続人の子の代襲相続人は、相続権を失ったものの子であるとともに、被相続人の直系卑属でなければならないとされています。
  養子の子が、養子と養親間の縁組成立後に生まれた子である場合には、養親の直系卑属となります。養子縁組前に生まれていた子は、養親との間で法定血族関係を生じず、養親の直系卑属に当たらないため、養親の遺産を代襲相続できません。
  養親及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。(民法729条)

18.結婚・子育てを支援する非課税制度
 結婚、出産、育児資金に充てるために直系尊属が金銭等を金融機関等に信託等をした場合に、受贈者1人につき1000万円(結婚費用は300万円)まで贈与税を非課税とする制度です。

■概要

要 件 ・贈与者が受贈者の直系尊属(父母・祖父母等)であること
・受贈者が20歳以上50歳未満であること
・受贈者の結婚・子育て資金の支払いに充てるために、贈与者が金銭等を拠出すること
・贈与者は、拠出した金銭を金融機関(※)に信託等をすること
限度額 受贈者1人につき1000万円(結婚費用については300万円)
対象期間 平成31年3月31日まで
申 告 受贈者は、本特例の適用を受けようとする旨等を記載した非課税申告書を、専用口座のある金融機関を経由し受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない

※金融機関とは、信託会社、信託銀行を含む)、銀行等及び金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行うものに限る)をいいます。

○結婚・子育て資金の内容
 ・結婚に際して支出する婚礼(結婚披露を含む)費用、住居に要する費用、引越しに要する費用のうち一定のもの
 ・妊娠、出産に要する費用、子供の医療費、子供の保育料のうち一定のもの
 教育資金の贈与と同様に、口座開設をした金融機関に領収書等を提出して、必要な時に引き出します。

○非課税対象外となるもの
 結婚相談所費用、結納式の費用、お見合い費用、婚約指輪・結婚指輪の購入費用、婚活費用、合コン参加費用、エステ代、新居の家具や家電の購入費、新婚旅行代、ベビー用品の購入費など。

○結婚資金等の一括贈与の制度は、次のいずれかの場合で終了します。
 ①受贈者が死亡した場合
 ②受贈者が50歳に達した場合
 ③贈与した財産がなくなった場合で、終了の合意があった場合
  ①の場合は残額(使われていなかった金額、非課税対象以外に使ったものを含む)があっても贈与税の課税はなく、受贈者の相続財産として取り扱われます。この場合、残額に対応する相続税額には2割加算の適用はありません。②③の場合は、残額に対して贈与税がかかります。

金融機関は、本特例の適用を受けて信託等がされた金銭等の合計金額及び結婚・子育て資金管理契約の期間中に結婚・子育て資金として払い出した金額の合計金額、その他の事項を記載した調書を受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

本措置を利用している場合でも、暦年贈与が利用できます。

19.祭祀財産(墓地、仏壇、家系図、位牌)の購入
 被相続人が生前に墓地や仏壇などの祭祀財産を購入した場合は、相続財産に含まれず相続税の対象になりません。
 また墓地の場合は、使用権の購入であり、土地の購入ではありませんので、不動産取得税もかかりません。
 高額な美術品や骨董品など、投機を目的としたものについては、対象外です。
 相続開始後に購入した場合には非課税になりません。
 お墓や仏壇は、相続財産ではありませんので、相続放棄をしても承継することができます。

20.所有財産の評価額を下げる
 相続財産の評価は国税庁の「財産評価基本通達」に則て評価され、その評価された金額が相続税評価額となり相続税の基礎となります。所有財産の評価を下げる方法として、小規模住宅の特例の利用、貸付住宅地の評価の利用などがあります。
所有地に、アパートやマンションを建築し賃貸することで、所得税や固定資産税の相続税対策になります。小規模宅地等は50%、一定の条件を満たすものは80%まで評価が下がりますので、納める相続税を軽減します。

■貸家建付地
 貸家の敷地の用に供されている宅地をいいます。この貸家建付地については、借家人の存在により宅地所有者の自由な使用収益に制限が加えられることに配慮して、自用地としての価額から借家人の有する権利の価額を控除した価額によって評価します。
貸家建付地の評価=自用地価額(相続税評価額)×(1−借地権割合×借家権割合)
この借地権割合は地域によって異なりますが、路線価図や評価倍率表で確認できます。借家権割合は30%です。路線価は毎年更新されます。
駐車場は原則として自用地評価ですが、賃貸物件の敷地内の駐車場でその利用者が全員賃貸物件の入居者であれば賃貸物件と一体としてその敷地全体を「貸家建付地」として評価します。

■分筆による節税
 不動産の相続税は、「購入価格」ではなく、「相続した時の資産価値」に対して課税されます。
 分筆とは、一筆の土地を複数に分割することです。土地の資産価値を下げるように分筆することで、相続税対策ができます。
 土地の評価は、形状や立地条件によって変わります。評価が高い土地は、「角地」「長方形」「正方形」などが挙げられます。土地がきれいに分筆された場合には、評価額は下がらず、節税にはなりません。
 例えば、角地を2つに分けたり(角地の面積が減る)、土地を旗竿地にになるように分筆を行うと、旗竿地の方は、間口狭小補正、奥行長大補正されるため、通常の土地よりも評価が低くなります。

 次の条件を満たしてください。
 ・分筆後の所有者が別々であること(どのように分筆しても1人の相続人が所有しているのであれば減額にはなりません)
 ・分筆により、地形や接する道路や路線価が変わること
 ・分筆の手続きは相続税の申告をする前に行うこと

■借家権割合
 借家権というのは、貸主から建物を借りて使用する権利のことです。30%と決まっています。
借家権割合は、貸家や貸家建付地を相続する場合に評価額を計算するのに使われる割合です。
貸家建付地の評価=自用地価格×(1−借地権割合×借家権割合)
借地権割合が70%の場合、借地権70%×借家権30%=21%が減額できます。

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