部位別後遺障害

1 眼(まぶたを含む)

2 

3 

4 

5 神経系統の機能又は精神

6 醜状障害(頭部、顔面、頚部、上肢、下肢)

7 胸腹部臓器(生殖器を含む)

8 脊柱、体幹骨

9 上肢

10 手指

11 下肢

12 足指

13 非器質性精神障害(うつ病、PTSD)

14 高次脳機能障害

15 遷延性意識障害

 

1 眼(眼球及びまぶた)の後遺障害
■眼の障害と障害等級
眼の障害については、眼球の障害として視力障害、調節機能障害、運動障害、視野障害に分類され、まぶたの障害として欠損障害及び運動障害について分類され、等級が定められています。
視力障害では、頭部外傷による視神経損傷と、眼球の外傷を原因とするものがあります。
視力の測定は万国式試視力表によります。
障害等級表にいう視力とは、裸眼視力ではなく、矯正視力をいいます。

等         級 障  害  の  程  度

 

 

視力障害

第1級

第2級

 

第3級

第4級

第5級

第6級

第7級

第8級

第9級

 

第10級

第13級

両眼が失明したもの

①1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの

②両眼の視力が0.02以下になったもの

1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの

両眼の視力が0.06以下になったもの

1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの

両眼の視力が0.1以下になったもの

1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの

1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの

①両眼の視力が0.6以下になったもの

②1眼の視力が0.06以下になったもの

1眼の視力が0.1以下になったもの

1眼の視力が0.6以下になったもの

調節機能障害

第11級

第12級

両眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの

1眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの

運動障害

第10級

第11級

第12級

第13級

正面視で複視を残すもの

両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの

1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの

正面視以外で複視を残すもの

視野障害

第9級

第13級

両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

欠損障害

第9級

第11級

第13級

第14級

両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

両眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの

1眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの

運動障害

第11級

第12級

両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

2 耳の後遺障害
 耳の後遺障害は〔聴力障害〕と〔耳介の欠損〕に分かれています。

頭部外傷を原因とする聴覚神経の損傷は本来、脳神経外科や神経内科の領域で、耳鼻科の得意とするところではありません。耳鼻科にお願いするのは、立証のための検査だけです。
三半規管のある内耳を損傷すると平衡機能障害生じることがあります。平衡機能障害は神経系統の機能の障害として等級が認定されます。

聴力障害
 聴力障害の等級は、純音による聴力レベル(純音聴力レベル)と語音(言葉を組み立てている音)による聴力検査結果(明瞭度)で認定されます。
・聴力障害は、オージオメータを用いて行う純音聴力検査等により、聴力を数値によって測り、一定のレベルに達しているかどうかで等級が認定されます。
・聴力検査は日を変えて3回(検査日の間隔は7日程度)行います。
・耳の聴力は、0dBが正常値で、20dBぐらいが普通の日常生活で困らないくらい、30dB以上の難聴があり、なおかつ耳鳴りを伴っているのが後遺障害の対象となります。
・3回の検査数値の差が10dBでおさまっていれば、2回目を採用します。10dB以上の差があればやり直しです。
・明瞭度はスピーチオージオメトリーという機器で測定します。
・むち打ち損傷(バレ・リュー症候群)の場合に、聴力障害や耳鳴りの症状を生じる場合がありますが、自賠責調査事務所の判断では、これらの症状は耳の後遺障害ではなく、神経症状として、14級9号又は12級13号として評価されます。

両耳の聴力(障害等級別)

4級3号

両耳の聴力を全く失ったもの

 ・両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの

 ・両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの

6級3号

両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

 ・両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上のもの

 ・両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上80dB未満であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの

6級4号

1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの

 ・1耳の平均純音聴力レベルが90dBいじょうであり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの

7級2号

両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの

 ・両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの

 ・両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの

7級3号

1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの

 ・1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが

60dB以上のもの

9級7号

両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの

 ・両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの

 ・両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの

9級8号

1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの

 ・1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの

10級 

  5号

両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの

 ・両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの

 ・両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの

11級

  5号

両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

 ・両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のもの

 一耳の聴力

9級9号

1耳の聴力を全く失ったもの

 ・1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの

10級        

 6号

1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

 ・1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上90dB未満のもの

11級    

 5号

1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの

 ・1耳の平均純音聴力レベルが70dB以上80dB未満のもの

 ・1耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの

14級  

 3号

1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

 ・1耳の平均純音聴力レベルが40db以上70dB未満のもの

12級

  4号

1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

 ・耳介の軟骨部の1/2以上を欠損したもの

※等級認定に当たっては、耳介の欠損障害として捉えた場合と外貌の醜状障害と捉えた場合の等級のうち、いずれか上位の等級が認定されます。

耳漏 (じろう=耳からの分泌物、血性分泌物、耳垢、膿、分泌液の排出)

12級 常時耳漏があるもの
14級 その他のもの

耳鳴り

12級 耳鳴りにかかる検査によって難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるもの
14級 難聴に伴い常時耳鳴りのあることが合理的に説明できるもの

欠損障害

12級 耳の耳殻の大部分を欠損したもの

※「耳殻の大部分の欠損」とは、耳殻の軟骨部の1/2以上を欠損したものをいいます。

3 鼻の後遺障害
 鼻の後遺障害には、鼻の欠損による機能障害があります。
【自賠法施行令別表第二】

第9級5号 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

以下の両方を満たすものです。
①鼻の欠損:鼻軟骨部の全部又は大部分の欠損
②機能に著しい障害を残すもの:鼻呼吸困難又は嗅覚脱失

鼻の欠損は、「外貌醜状」としても捉えられますが、耳介の欠損と同様、それぞれの等級を併合することはせずに、いずれかの上位の等級を認定します。
鼻を欠損しないで鼻の機能障害のみを残すものについては、機能障害の程度に応じて等級が準用されます。

第12級2号相当 嗅覚脱失または日呼吸困難が存するもの
第14級9号相当 嗅覚の減退のみが存するもの

 嗅覚の検査には、T&Tオルファクトメータによる平均嗅力損失値により区分します。

嗅覚脱失 5.6以上
嗅覚の減退 2.6〜5.5

4 口の後遺障害
 口の障害には、咀嚼(そしゃく)の機能障害、言語の機能障害、歯牙障害があります。

◆咀嚼の機能障害
 咀嚼の機能障害は、咬合不正、咀嚼をつかさどる筋肉の障害、顎関節の生涯、開口障害、歯牙損傷などを原因として発症します。

等級 障害の程度 労働能力喪失率
1級2号 咀嚼及び言語の機能を廃したもの 100%
3級2号 咀嚼又は言語の機能を廃したもの 100%
4級2号 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 92%
6級2号 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 67%
9級6号 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 35%
10級2号 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 27%

「咀嚼機能を配したもの」とは、流動食以外は摂取できないものをいいます。
「咀嚼機能に著しい障害を残すもの」とは、粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないものをいいます。
「咀嚼機能に障害を残すもの」とは、固形食物の中に咀嚼ができないものがあること又は咀嚼が十分にできないものがあり、そのことを医学的に証明できる場合をいいます。

◆言語の機能障害
 4種類の語音が発音できるかどうかによって区別されます。

  1. 口唇音(ま行音、ぱ行音、ば行音、わ行音、ふ)
  2. 歯舌音(な行音、た行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ)
  3. 口蓋音(か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)
  4. 咽頭音(は行音)

「言語の機能を廃したもの」とは、4種の語音のうち、3種以上の発音不能のものをいいます。

「言語の機能に著しい障害を残すもの」とは、4種の語音のうち2種の発音不能のもの又は綴音(てつおん。二つ以上の単音が結合してできた音)機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができないものをいいます。

「言語の機能に障害を残すもの」とは、4種の語音のうち、1種の発音不能のものをいいます。

◆歯牙障害
 自賠責保険における後遺障害等級とその障害の程度は、下記のとおりです。

等級 障害の程度 労働能力喪失率
 10級3号  14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの  27%
 11級4号  10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの  20%
 12級3号  7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの  14%
 13級5号  5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの  9%
 14級2号  3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの  9%

「歯科補綴を加えたもの」とは、現実に喪失(抜歯を含む)、又は著しく欠損した歯牙(歯冠部の体積4分の3以上の欠損)に対する補綴、および歯科技工上、残存歯冠部の一部を切除したために歯冠部の大部分を欠損したものと同等な状態になったものを補綴したものをいいます。

インプラント治療
事故で歯を欠いたり、失った場合のインプラント(人工歯根)治療については、保険会社や担当者によってその対応は様々ですが、担当医がインプラントを治療方法に一つとして認識していることと、患者がインプラント治療を選択していることが必要です。
欧米での交通事故患者は、インプラント治療を第一選択肢としているそうです。
インプラント治療ができるかできないかの判断を保険会社がすることは出来ません。
インプラントは、見た目や印象が天然の歯と変わらず、ブリッジや義歯と比べると、咀嚼機能性や審美性に優れているといわれています。
インプラントとは、チタン製の人工歯根をあごの骨に埋め込み、その上に人口の歯を固定する治療方法です。手術を伴い治療期間は長くなり、治療費は高額になります。
インプラント歯周病と呼ばれる骨を溶かしてしまう病気があり、定期的なメンテナンスが必要になります。
自賠責保険の支払い基準では、1歯8万円までです。
生命保険では先進医療特約があっても、インプラントは認められないとされていますが、認められたケースもあります。
労災保険では、インプラント治療費を認めないようです。

◆味覚障害
 味覚の障害は、頭部外傷による高次脳機能障害や舌の損傷、顎周辺組織の損傷等を原因として発症します。
 ・味覚脱失
  ア 味覚脱失は、濾紙ディスク法における検査により、基本4味質すべてが認知できないものをいいます。
  イ 味覚脱失については12級を準用します。
   ※濾紙ディスク法:舌の味を認識する部位に最高濃度溶液を浸した小さな濾紙を置き、どの味であるかを答えます。
   ※基本4味質:甘い(甘味)・塩辛い(塩味)・酸っぱい(酸味)・苦い(苦味)
 ・味覚減退
  ア 味覚減退は、濾紙ディスク法による検査により、基本4味質のうち、1味質以上を認知できないものをいいます。
  イ 味覚減退については14級を準用します。
 ・障害認定の時期
  症状が暫時回復することが多いため、症状が固定されてから6ヵ月後に行います。

電気味覚検査法は、金属味又は酸味という特定の味質のみを味覚の指標とするので、味覚障害を検査する方法としては適当でないとされました。

5 神経系統の機能または精神の障害
◆神経系統の機能または精神の障害の等級

第1級1号  神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第2級1号  神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
第3級3号  神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
第5級2号  神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
第7級4号  神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

第9級10号

 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

第12級13号

 局部に頑固な神経症状を残すもの

第14級9号

 局部に神経症状を残すもの

◆神経系統の分類

神経系 中枢神経
脊髄
末梢神経 体性神経 運動神経
感覚神経
自律神経 交感神経
副交感神経

後遺障害で多いのは、「局部に頑固な神経症状を残すもの」の12級と、「局部に神経症状を残すもの」の14級です。これらは、「むち打ち」の項で詳しく説明しています。

◆脳の障害
 脳の障害には、「器質性障害」と「非器質性障害」があります。

  • 「器質性障害」 直接的な外傷等により、脳組織が損傷して障害を引き起こすことです。
  • 「非器質性障害」 脳組織の器質的損傷を伴わない精神障害のことです。うつ病やPTSD等が該当します。

①頭部外傷による障害
◆びまん性軸索損傷
 瀰漫(びまん)とは、一面に広がることです。軸索(じくさく)とは、神経細胞より発する1本の長い突起(神経線維)のことです。

びまん性軸索損傷は、脳全体に衝撃が加わって回転力が生じ、脳内の神経の束が切断もしくは損傷されることによって、予後が悪く、高次脳機能障害や人格障害を発症する病態をいいます。

受傷から6時間以上の意識障害が継続する重篤な症状が、びまん性軸索損傷と診断されます。

びまん性軸索損傷が起こると脳細胞が壊死し、脳が腫れる結果、頭蓋内の圧力が高まります。頭蓋内の圧力が高まると脳への血流が減少するため、損傷が悪化します。

受傷直後は、意識障害が認められ、XP、CT撮影では、広範囲の脳挫傷や頭蓋内血腫が認められません。検査方法としては、XP,CT撮影のほか、脳の血流の分布によって脳の機能障害を判断するSPECT(スペクト)検査があります。

びまん性軸索損傷には治療方法がなく、出血や脳浮腫等の二次的な病変に対して、対症療法が行われます。

高次脳機能障害
②脊髄損傷
 脊髄とは、脊椎の脊髄腔の中を通って脳から腰と胸の境目辺りまで伸びている、無数の神経線維で構成された白色の器官です。中枢神経ともいいます。中枢神経(脊髄、脳)は、一度損傷すると回復はしません。
 脊髄の損傷によって生じた麻痺の範囲及びその程度についての判定結果を踏まえて、障害等級が認定されます。

脊髄損傷の後遺障害認定には、次の項目が検討されます。

  1. 麻痺の範囲
  2. 麻痺の程度
  3. 介護の有無及び程度

◆麻痺の範囲の分類

  • 四肢麻痺 両側の四肢麻痺
  • 対麻痺   両下肢または両上肢の麻痺
  • 単麻痺   一上肢または一下肢のみの麻痺

◆麻痺の、程度

 麻痺の程度は、高度、中等度、軽度の3段階に分類されます。


意 義
高度 障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作(下肢においては歩行や立位、上肢においては物を持ち上げて移動させること)ができないもの
  1. 完全強直またはこれに近い状態にあるもの
  2. 上肢においては、三大関節及び5つの手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの
  3. 下肢においては、三大関節のいずれも自動運動によっては稼働させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの
  4. 上肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの
  5. 下肢においては、随意運動の顕著な障害により、一下肢の支持性及び随意的な運動性をほとんど失ったもの
中等度 障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作にかなりの制限があるもの
  1. 上肢においては、障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量のもの(概ね500グラム)を持ち上げることができないものまたは障害を残した一上肢では文字を書くことができないもの
  2. 下肢においては、障害を残したい地価氏を有するため杖もしくは厚生装具なしには階段を上ることができないもの又は障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの
軽度 障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われており、障害のある上肢または下肢の基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれているもの
  1. 上肢においては、障害を残した一上肢では文字を書くことに困難を伴うもの
  2. 下肢においては、日常生活は概ね独歩であるが、障害を残した一下肢を有するため不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの又は障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を登ることができないもの

◆後遺障害等級認定

等級 麻痺の範囲 麻痺の程度 介護
1級 四肢麻痺 高度
中等度 食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
対麻痺 高度
中等度 食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
2級 四肢麻痺 中等度
四肢麻痺 軽度 食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
対麻痺 中等度 食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
3級 四肢麻痺 軽度
対麻痺 中等度
5級 対麻痺 軽度
一下肢の単麻痺 高度
7級 一下肢の単麻痺 中等度
9級 単麻痺 軽度
12級 軽微な麻痺等

◆PTSD(Post-Traumatic Stress Disorder 心的外傷後ストレス障害)

 阪神大震災や地下鉄サリン事件でその名をよく聞きましたが、PTSDの病理研究は、ベトナム戦争に出兵したアメリカ人兵士の悲惨で残虐な戦争体験による後遺症の研究によって始まりました。

 PTSDとは、日常ではありえない死の恐怖や苦痛、悲しみを伴う出来事に遭遇して心に受けた深い傷のことです。

 ストレスとなった体験を繰り返し思い出したり(フラッシュバック)、不眠やおびえなどの悩まされる症状が続きます。

PTSDの診断基準には、ICD-10,DSM-Ⅳなどがあります。

 PTSDになる人は心の弱い人ではなく、屈強な男性でもなります。誰でもその可能性がある自然な反応ともいえるのです。診察を受けることは決して恥ずかしいことではありません。

③外傷性てんかん

 脳挫傷・頭蓋骨陥没骨折後の後遺障害として代表的な症例に、外傷性てんかんがあります。

従来は、てんかん発作の型にかかわらず等級認定がなされていましたが、発作の型により労働能力に及ぼす影響が異なることから、発作の型と頻度により障害等級が認定されることになりました。

④頭痛

頭 痛 の 後 遺 障 害 等 級 自倍責保険額
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

「通常の労務に服することはできるが激しい頭痛により、時には労働に従事することができなくなる場合があるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」
616万円
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの

「通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛が起こるもの」
224万円
14級9号 局部に神経症状を残すもの

「通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛が起こるもの」
75万円

交通事故による外傷における頭痛の発生のメカニズムは、以下の5つが考えられます。

  1. 頭部の挫傷や創傷の部位から生じる疼痛
  2. 動脈の発作性拡張で生じる血管性頭痛
  3. 頚部、頭部の筋より疼痛が発生する筋攣縮性頭痛
  4. 後頚部交感神経の異常により発生する頚性頭痛(バレ・リュー症候群)
  5. 上位頚神経の痛みの大後頭神経痛と後頭部から顔面や眼にかけての三叉神経痛

頭痛は他の後遺障害に含まれる事が多く、頭痛のみで後遺障害が認められることはあまりありません。

⑤疼痛、カウザルギー、RSD

◆疼痛の後遺障害

後遺障害等級 自賠責保険額
12級13号 通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差支えがあるもの 224万円
14級9号 通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの 75万円

疼痛以外の感覚障害(儀走感や感覚脱失等)が発現し、その範囲が広い場合は、第14級の9の認定対象になります。

◆カウザルギー(灼熱痛)

 カウザルギーとは、末梢神経の不完全損傷によって生ずる特殊な型の神経痛で、1本の神経やその主要な分枝の部分損傷後に起こる、手や足の灼熱痛です。

◆RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)

 主要な末梢神経の損傷がなくても、外傷部位に疼痛が起こる神経因性疼痛がRSDです。

労災保険では、関節拘縮、骨の萎縮、皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)という3つの症状が健側と比較して明らかに認められる場合に限り、後遺障害を認定するとしています。

国際疼痛学会では、カウザルギー(type2)、RSD(type1)は共に、CRPS(Complex Regional Pain Syndrome)と呼んでいます。

  カウザルギー、RSDの後遺障害  自賠責保険額
 7級4号  軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるもの  1051万円
 9級10号  通常の労務に服することはできるが、疼痛により時には労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの  616万円
 12級13号  通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの  224万円

⑥失調、めまい 、平衡機能障害

 失調、めまい及び傾向機能障害については、その原因となる障害部位によって分けることが困難であるとして、総合的な認定基準にしたがって障害等級が認定されます。

失調・眩暈及び平衡機能障害の後遺障害 自賠責保険額
3級3号 生命の維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために終身労務に付くことができないもの  
5級2号 著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力が極めて低下し一般平均人の1/4程度しか残されていないもの  
7級4号 中等度の失調又は平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の  1/2以下程度に明らかに低下しているもの 1051万円
9級10号 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ、眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの 616万円
12級13号 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの 224万円
14級10号 めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能障害検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの 75万円

⑦身体性機能障害

 脳の損傷による身体性機能障害(麻痺)には、運動障害と感覚障害がありますが、後遺障害認定の対象となるのは、運動障害の麻痺です。麻痺の範囲(四肢麻痺、片麻痺または単麻痺)、その程度、及び介護の有無、程度によって後遺障害の等級認定がされます。

別表第Ⅰ
第1級1号 
 身体性機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの
 ①高度の四肢麻痺が認められるもの
 ②中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
 ③高度の片麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
別表第Ⅰ
第2級1号  
 身体性機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの
 ①高度の片麻痺が認められるもの
 ②中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を必要とするもの
別表第Ⅱ
第3級3号
 
 生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、身体性機能障害のため、労務に服することができないもの
 中等度の四肢麻痺が認められるもの(第1級1号または第2級1号に該当するものを除く)
別表第Ⅱ
第5級2号 
 身体性機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの
 ①軽度の四肢麻痺が認められるもの
 ②中等度の片麻痺が認められるもの
 ③高度の単麻痺が認められるもの
別表第Ⅱ
第7級4号  
 身体性機能障害のため、軽易な労務以外には服することができないもの
 ①軽度の片麻痺が認められるもの
 ②中等度の単麻痺が認められるもの
別表第Ⅱ
第9級10号
 通常の労務に服することはできるが、身体性機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
 軽度の単麻痺が認められるもの
別表第Ⅱ
第12級13号
通常の労務に服することはできるが、身体性機能障害のため、多少の障害を残すもの
 運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの、また、運動障害が認められないもの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの

⑧非器質性精神障害

 うつ病やPTSD(外傷後ストレス障害)等、非器質性の精神障害については十分な治療の結果、完治には至らないものの、日常生活動作ができるようになり、症状が軽快している場合には症状固定として、後遺障害の認定申請をします。

6 醜状障害(頭部、顔面、頚部、上肢、下肢)

 平成22年5月27日、京都地裁は、労災事故で顔や頚部に大やけどを負った35歳の男性に対して、女性よりも後遺障害等級が低いのは男女平等を定めた憲法に違反するもの、との違憲判断を示しました。

 これを受けて、労災保険法では平成23年2月1日に、外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準が改正され、自賠責法令は、平成23年5月2日に改正され、男女差はなくなりました。

 以前は、障害が同じ程度でも男性は女性よりも低い等級が認定されていました。

7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
12級14号 外貌に醜状を残すもの
14級4号 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
14級5号 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

・「外貌」とは、頭部、顔面部、頚部のように、上肢・下肢以外の日常露出する部分をいいます。

・「外貌における著しい醜状を残すもの」とは、原則として下記の場合に当てはまり、人目につく程度以上のものをいいます。

  1. 頭部にあっては、手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
  2. 顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没
  3. 頚部にあっては、手のひら大以上の瘢痕

・「外貌に醜状を残すもの」とは、原則として下記の場合に当てはまります。

  1. 頭部にあっては、鶏卵大面異状の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
  2. 顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3cm以上の線状痕
  3. 頚部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕

・「外貌に相当程度の醜状を残すもの」とは、原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のものをいいます。

・「外貌に醜状を残すもの」とは、原則として下記の場合に当てはまり、人目につく程度以上のものをいいます。

  1. 頭部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
  2. 顔面部にあっては、10円硬貨以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕
  3. 頚部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕

医療技術の進展により、傷跡の程度を相当程度軽減できる障害は、新設された「第9級」で検討されます。

部位別後遺障害2

7 胸腹部臓器(生殖器を含む)

自賠責法施行令別表Ⅰ
1級2号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級2号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
自賠責法施行令別表Ⅱ
3級4号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級3号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級5号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級13号 両側の睾丸を失ったもの
9級11号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
9級16号 生殖器に著しい障害を残すもの
11級10号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
13級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

自賠責保険の後遺障害等級認定で準拠している労災保険の認定基準では、胸腹部臓器の障害は、下記の障害別に基準が定められています。

(1)呼吸器の障害

  呼吸機能の後遺障害等級の判定は3種類あります。

  1. 動脈血酸素分圧と動脈血炭素ガス分圧の検査結果による判定
  2. スパイロメトリーの結果と呼吸困難の程度による判定
  3. 運動負荷試験の結果による判定

上記1によって判定された等級が原則として認定されますが、その等級が2又は3により判定された等級より低い場合には、2又は3によって判定された等級が認定されます。
 

  1. 動脈血酸素分圧と動脈血炭素ガス分圧の検査結果による判定

  A.動脈血酸素分圧が50Torr(トル=圧力の単位)以下のもの

 1級  a.呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの
  2級  b.呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの
  3級  c.aとbに該当しないもの

  B.動脈血酸素分圧が50Torrを乞え60Torr以下のもの

 1級  a.動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲(37Torr〜43Torr。以下同じ)にないもので、かつ、呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの
 2級  b.動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもので、かつ、呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの
 3級  c.動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもので、a及びbに該当しないもの
 5級  d.a,b,cに該当しないもの

  C.動脈血酸素分圧が60Torrを超え70Torr以下のもの

 7級  a.動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもの
 9級  b.aに該当しないもの

  D.動脈血酸素分圧が70Torrを超えるもの

 11級  動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもの

 2.スパイロメトリーの結果と呼吸困難の程度による判定

  ※スパイロメトリー:スパイロメーターという器具を用いて、肺活量等の測定をすること。

  A.%1秒量が35以下または%肺活量が40以下であるもの

    ※%1秒量:力をこめて息を吐き出したときに呼び出される空気量のうち最初の1秒間に吐き出された     量の割合

    ※%肺活量:計算によって求められた予測肺活量に対する、実際の肺活量の割合

 1級  a.高度の呼吸困難が認められ、かつ、呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの
 「高度の呼吸困難」とは、呼吸困難のため、連続して概ね100m以上歩けないものをいう(以下同じ)。
 2級  b.高度の呼吸困難が認められ、かつ、呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの
 3級  c.高度の呼吸困難が認められ、a及びbに該当しないもの
 7級  d.中等度の呼吸困難が認められるもの
 「中等度の呼吸困難」とは、呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同様には歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行が可能であるものをいう(以下同じ)。
 11級  e.軽度の呼吸困難が認められるもの
 「軽度の呼吸困難」とは、呼吸困難なため、健常者と同様には階段の昇降ができないものをいう(以下同じ)。

  B.%1秒量が35を越え55以下または%肺活量が40を越え60以下であるもの

 7級  a.高度または中等度の呼吸困難が認められるもの
 11級  b.軽度の呼吸困難が認められるもの

  C.%1秒量が55を越え70以下または%肺活量が60を越え80以下であるもの

 11級  高度、中高度または経度の呼吸困難が認められるもの

 3.運動負荷試験の結果による判定

 11級 1や2による判定では障害等級に該当しないものの、呼吸機能の低下による呼吸困難が認められ、運動負荷試験の結果から明らかに呼吸機能に障害があると認められるもの

(2)循環器の障害

 循環器とは、血液を体内で循環させる器官のことです。その障害は下記の4つに分けられます。

 ①心機能低下

 9級 心機能の低下による運動耐容能の低下が中等度であるもの
(おおむね6METs(メッツ)を超える強度の身体運動が制限されるもの=平地を健康な人と同じ速度で歩くのは差し支えないが、平地を急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上がるという身体活動が制限されるもの)
 11級 心機能の低下による運動耐容能の低下が軽度であるもの
(おおむね8METsを超える強度の身体活動が制限されるもの=平地を急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上るという身体活動に支障がないが、それ以上激しいか、急激な身体活動が制限されるもの)

※運動耐容能:運動に対する持久力

※心機能が低下したもの:通常、療養を要するものであることをいいます。ただし、次のいずれにも該当する場合を除きます。

  • 心機能の低下が軽度にとどまるもの
  • 危険な不整脈が存在しないこと
  • 残存する心筋虚血が軽度にとどまるもの

  ※心筋虚血:心筋が酸素不足に陥っていること

 ②除細動器またはペースメーカーの植え込み

  ※除細動器:不整脈の治療に使われる器械。心房細動(心房の収縮がなくなり細かい波状に動く状態)や   心室細動を正常調律に戻すときに用いられる。

 7級 除細動器を植え込んだもの
 9級 ペースメーカーを植え込んだもの

 除細動器またはペースメーカーを植え込んだもの+心機能が低下したもの、の場合は、併合により準用等級が決められます。

 ③房室弁または大動脈弁を置換えしたもの

 9級 房室弁または大動脈弁を置き換えし、継続的に抗凝血薬療法を行うもの
 11級 房室弁または大動脈弁を置き換えし、継続的に抗凝血薬療法を行わないもの

 ④大動脈解離

 11級 大動脈に偽腔開存型の解離を残すもの

※偽腔開存型:内膜にできた裂け目に絶え間なく血液が流れ込んでいる状態

(3)腹部臓器の障害

 ①食道の障害

等級 認定基準
 9級  食堂の狭窄による通過障害を残すもの

「食堂の狭窄による通過障害」とは、次のいずれにも該当するものをいいます。

  1. 通過障害の自覚症状があること
  2. 消化管造影検査により、食道の狭窄による造影剤のうっ滞が認められること

 ②胃の障害

 7級  消化吸収障害、ダンピング症候群及び胃切除術後逆流性食道炎のいずれもが認められるもの
 9級  消化吸収障害及びダンピング症候群が認められるもの
 9級  消化吸収障害及び胃切除術後逆流性食道炎が認められるもの
 11級  消化吸収障害、ダンピング症候群及び胃切除術後逆流性食道炎のいずれかが認められるもの
 13級  噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失したもの(9級及び11級に該当するものを除く)

※「消化器吸収障害が認められる」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  1. 胃の全部を亡失したこと。
  2. 噴門部または幽門部を含む胃の一部を喪失し、低体重等(BMIの数値が、体重÷(身長)2=20以下)が認められること。受傷前からBMIが20以下であった場合は、体重が10%以上減少したケースが該当します。

※噴門部:胃が食道につながる部分

※幽門部:十二指腸につながる部分

※BMI:体重と身長の関係から算出される、人の肥満度を表す体格指数。体重(㎏)、身長(m)。

③小腸及び大腸の障害

 ◆小腸を大量に切除したもの

 9級 残存する空腸及び回腸の長さが100cm以下になったもの
 11級 残存する空腸及び回腸の長さが100センチを超え300cm未満となったものであって、消化吸収障害が認められるもの(低体重等が認められるもの)

※空腸:消火管の一部。胃と十二指腸の次、回腸の前にある内臓のこと。十二指腸、空腸、回腸をあわせて 小腸という。

 ◆小腸または大腸の皮膚瘻を残すもの

 5級 瘻孔から小腸内容が漏出することにより、小腸皮膚瘻周辺に著しいびらんを生じ、パウチ等の装着ができないもの
 7級 瘻孔から小腸内容の全部または大部分が漏出するものの内、5級に該当しないもの、又は、瘻孔から漏出する小腸内容がおおむね100ml/日以上であって、パウチ等による維持管理が困難であるもの
 9級 瘻孔から漏出する小腸内容がおおむね100ml/日以上であって、7級に該当しないもの
 11級 瘻孔から少量ではあるが明らかに小腸又は大腸の内容が漏出する程度のもの

※パウチ:体の表面に取り付けて、漏出する小腸内容を受け入れて貯留するための袋。

※小腸内容が皮膚から出てくる病態。

 ◆大腸を大量に切除したもの

 11級  結腸のすべてを切除するなど大腸のほとんどを切除したもの

 ◆小腸又は大腸に狭さくを残すもの

 11級  小腸又は大腸に狭さくを残すもの

※「小腸の狭窄」とは、次のいずれにも該当するものをいいます。

  1. 1ヶ月に1回程度、腹痛、腹部膨満感、嘔気(おうき)、嘔吐等の症状が認められること
  2. 単純X線像においてケルクリング(小腸の内壁を構成する輪状の粘膜襞)ひだ像が認められること

※「大腸の狭窄」とは、次のいずれにも該当するものをいいます。

  1. 1ヶ月に1回程度、腹痛、腹部膨満感等の症状が認められること
  2. 単純X線像において、貯留した大量のガスにより結腸膨起像が相当区間認められること

 ◆便秘を残すもの

 9級  用手適便を要すると認められるもの
 11級  9級に該当しないもの

 ※用手適便:腸管に溜まった硬便を手で取り出すこと

 ※便秘:排便反射を支配する神経の損傷がMRI、CT等により確認でき、排便回数が周2回以下の頻度で   あって、恒常的に硬便であると認められるものがあたります

 ※排便反射:直腸に排泄物が溜まり、腹圧が上がった刺激が脳に伝わると、肛門の括約筋が緩んで便意を  もよおすこと

 ◆便失禁を残すもの

 7級  完全便失禁を残すもの
 9級  常時おむつの装着が必要なもののうち、完全便失禁を残すもの以外のもの
 11級  常時おむつの装着は必要ないものの、明らかに便失禁があると認められるもの

 ◆人工肛門を造設したもの

 5級  小腸又は大腸の内容が漏出することにより、人工肛門の排泄口、ストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パウチ等の装着ができないもの
 7級  人工肛門を造設したものの内、5級に該当する以外のもの


④肝臓の障害・堪能の障害

 ◆肝臓の障害

 9級  ウィルスの持続感染が認められ、かつAST/ALTが持続的に低値を示す肝硬変
 11級  ウィルスの持続感染が認められ、かつAST/ALTが持続的に低値を示す慢性肝炎

 ※AST(GOT):肝臓以外の組織にも存在し、アミノ酸を作る働きがある。

 ※ALT(GPT):大部分は肝臓に存在し、ALTの数値が高ければ、肝臓の疾患が疑われる。

 ◆胆のうの障害

 13級  胆のうを失ったもの

⑤すい臓の障害・脾臓の障害

 ◆すい臓の障害

 9級  外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるもの
 11級  外分泌機能または内分泌機能の障害のいずれかが認められるもの
 12級又は
 14級
 軽微な膵液瘻を残したために皮膚に疼痛等を生じるケースは、「局部の神経症状」として 後遺症を認定する。

 すい臓は体のほぼ中央にあり、胃と脊椎の間に位置して、膵液を生成します。外分泌機能とは、消化液を分泌する機能のことであり、外分泌機能とは、血糖値を上げるグリカゴンや血糖値を下げるインスリンを分泌する機能のことです。

 「外分泌機能の障害」とは、次のいずれにも該当するものをいいます。

  1.  上腹部痛、脂肪便(常食摂取で1日糞便中脂肪が6g以上であるもの)、頻回の下痢等の外分泌機能の低下による症状が認められること
  2. 次のいずれかに該当すること

  ・すい臓を一部除去した

  ・BT-PABA(PFD)試験で異常低値(70%未満)を示した

  ・糞便中キモトリプシン活性(FCA)で異常低値(24U/g未満)を示した

  ・アミラーゼ又はエラスターゼの異常低値が認められた

 「内分泌機能の障害」は、次のすべてに該当するものが当たります。

  1.  異なる日に行った経口糖負荷試験によって、境界型又は糖尿病型であることが2回以上確認されること
  2. 空腹時血漿中のC-ペプチド(CDR)が0.5/ml以下(インスリン異常低値)であること
  3. Ⅱ型糖尿病に該当しないもの

  ※境界型:耐糖能を調べる75g経口ブドウ糖負荷試験で、糖尿病方とも正常型とも属さないタイプのこと。

  ※Ⅱ型糖尿病:血中にインスリンは存在するが、肥満などを原因としてインスリンの働きが悪くなるか、膵    臓のβ細胞(インスリンが作られる)からのインスリン分泌量が減少し、結果として血糖値の調整が上手く   いかずに糖尿病になったケース。Ⅱ方糖尿病は自覚症状に乏しいことが多い。糖尿病と診断される人の   95%がⅡ型糖尿病である。

   ちなみに、Ⅰ型糖尿病とは、インスリンの絶対量が足りないために糖尿病になってしまうケースです。

  ※アミラーゼ:膵液や唾液に含まれる消化酵素です。

 ◆脾臓の障害

 13級  脾臓を失ったもの

 ◆腹壁瘢痕ヘルニア等を残すもの

 9級  常時ヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの、または立位(りつい)でヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの
 11級  重激な業務に従事した場合等腹圧が強くかかるときにヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの

 ※腹壁瘢痕ヘルニア:腹壁の瘢痕部(傷口)が癒合しないで、内臓が脱出するもの

 ※鼠径(そけい)ヘルニア:俗に言う「脱腸」のこと

 ※禁制型尿リザボア:腸管(回腸)を使用して、体内に蓄尿できるパウチを作成し、失禁防止弁を有する脚を介して腹壁にストマを形成すること。

(4)泌尿器の障害

 ◆腎臓の障害

  腎臓の障害は、腎臓を失っているものと失っていないものとに区別され、糸球体濾過値(GFR)により等級  が認定されます。

GFRの値 31〜50ml/分 51〜70ml/分 71〜90ml/分 91ml/分
 腎臓を亡失 7級 9級 11級 13級
 腎臓を失っていない 9級 11級 13級

 ◆尿路変向術を行ったもの

 5級  非尿禁制型尿路変向術を行ったが、尿が漏出しストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パッド等の装着ができないもの
 7級  非尿禁制型尿路変更術を行ったもの
 禁制型尿リザボアの手術を行ったもの
 9級  尿禁制型尿路変更術を行ったもの(禁制型尿リザボア及び外尿道口形成術をのぞきます)
 11級  外尿道口形成術を行ったもの
 尿道カテーテルを留置したもの

※非尿禁制型尿路変向術:ストマから流れてくる尿を袋(パウチ)にためる手術。

※尿路変向術:膀胱を摘出した後に、新たな尿の出口を作る手術。

※ストマ:腹部に尿を排泄するために設けられた排泄口のこと。

※パッド:尿漏れ用パッド

※禁制型尿リザボア:腸管(回腸)を使用して、体内に蓄尿できるパウチを作成し、失禁防止弁を有する脚を  介して腹壁にストマを形成すること。

◆排尿障害を残すもの

 9級  残尿が100ml以上のもの
 11級  残尿が50〜100ml未満であるもの
 尿道狭窄のため、糸状ブジーを必要とするもの
 14級  尿道狭窄のため、シャリエ式尿道ブジー第20番(ネラトンカテーテル第11号に相当)が辛 うじて通り、時々拡張術を行う必要のあるもの

※糸状プジー:尿道を広げるために使用する糸状の医療器具

◆頻尿を残すもの

 11級  頻尿を残すもの

頻尿:排尿の正常な回数は1日7回くらい、1回の排尿量は多いときで300ccと言われています。1日に約1500ccの尿が排出されます。

次のいずれにも該当する場合は頻尿と認められます。

  1. 器質的病変による膀胱容積の器質的な減少又は膀胱もしくは尿道の支配神経の損傷が認められること
  2. 日中8回以上の排尿が認められること
  3. 多飲等の他の原因が認められないこと

◆尿失禁を残すもの

 7級  持続性尿失禁を残すもの
 切迫性尿失禁又は腹圧性尿失禁のため、終日パッド等を装着し、かつ、パッドをしばしば交換するもの
 9級  切迫性尿失禁又は腹圧性尿失禁のため、常時パッド等を装着しているが、パッドの交換を要しないもの
 11級  切迫性尿失禁又は腹圧性尿失禁のため、パッド等の装着は要しないが下着が少し濡れるもの

(5)生殖器の障害

 7級  両側の睾丸を失ったもの
 両側の卵巣を失ったもの
 常態として精液中に精子が存在しないもの
 常態として卵子が形成されないもの
 9級  陰茎の大部分を欠損したもの
 (陰茎を膣に挿入することができないと認められるものに限る)
 勃起障害を残すもの
 射精障害を残すもの
 膣口狭窄を残すもの
 (陰茎を膣に挿入することができないと認められるものに限る)
 両側の卵管の閉鎖又は癒着を残すもの、景観に閉鎖を残すもの又は子宮を失ったもの
 (画像所見により、認められるものに限る)
 11級  狭骨盤または比較的狭骨盤が認められるもの
 13級  1側の睾丸を失ったもの
 (1側の睾丸の亡失に準ずべき程度の萎縮を含みます)
 1側の卵巣を失ったもの

※「勃起障害」とは、次のいずれにも該当するものをいいます。

 ア.夜間睡眠時に十分な勃起が認められないことがリジスキャンによる夜間陰茎勃起検査により証明され   る。

  ※リジスキャン:睡眠中の陰茎勃起現象を調べるために、陰茎根部と陰茎冠状溝部似2箇所にループを    装着して一定時間ごとにループを締めて陰茎の勃起時間、周囲長、硬度等を計測してパソコンに表示す   る装置。

 イ.支配神経の損傷等勃起障害の原因となりうる所見が次に掲げる検査のいずれかにより認められる。

  a.会陰(えいん)部の知覚、肛門括約筋のトーヌス・自立収縮・肛門反射及び球海綿体筋反射にかかる     検査(神経系検査)

   ※トーヌス:筋の伸張に対する受動的抵抗、または筋に備わっている張力のこと。筋緊張。

   ※球海綿体筋反射:男性では亀頭部、女性では陰核を刺激することによって、肛門括約筋の収縮を評     価する検査。

  b.プロスタグランジンE1海綿体注射による各種検査(血管系検査)

   ※プロスタグランE1:海綿体に注射すると、血液の流入が増加して陰茎の勃起を引き起こします。

※「射精障害」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

 ア.尿道または射精管が断裂している。

 イ.両側の下腹神経の断裂により当該神経の機能が失われている。

 ウ.膀胱頚部の機能が失われている。

8 脊柱、体幹骨

 脊柱は、上から順に頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙骨、尾骨、計26個の椎骨がそれぞれ椎間板を挟んで連なっています。障害等級表上の脊柱の障害には、仙骨、尾骨を含みませんが、仙骨の障害については、骨盤骨の障害に含めます。

 脊柱の後遺障害は、変形障害と運動障害に分類されます。

等  級 障 害 の 程 度
脊柱 変形障害

第6級の5

第11級の7

脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの

脊柱に変形を残すもの

運動障害

第6級の5

第8級の2

脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの

脊柱に運動障害を残すもの

その他の体幹骨

第12級の5

第12級の8

鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

長官骨に変形を残すもの

 脊柱及びその他の体幹骨の障害については、上記の等級表のとおり、等級が定められています。

◆脊柱の障害

①変形障害

 脊柱の変形障害については、「脊柱に著しい変形を残すもの」、「脊柱に変形を残すもの」、及び、第8級に準じる障害として、「脊柱に中程度の変形を残すもの」の3段階で認定されます。

 変形障害の認定要件

等級 後彎の程度 側弯の程度
第6級 脊柱圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少(*1)し、後彎が生じているもの。  
脊柱圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少(*2)しているもの。  コブ法による側彎度(*3)が50度以上のもの
8級 脊柱圧迫骨折等により1個以上の前方椎体高が減少し、後彎が生じているもの。  
   コブ法による側彎度が50度以上のもの

環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、次のいずれかに該当するもの。このうち①及び②については、軸椎以下の脊柱を可動させずに回旋位または屈曲・伸展位の角度を測定する。

①60度以上の回旋位となっているもの

②50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの

③側屈位となっており、エックス線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位意となっていることが確認できるもの

 
 第11級 脊柱圧迫骨折等を残しており、エックス線写真・CT画像またはMRI画像により確認できるもの。(変形の程度は問わない)
脊柱固定術が行われたもの。(移植した骨がいずれかの脊柱に吸収されたものを除く)
3個以上の脊柱について、椎弓切除術(椎弓の一部を切離する脊柱管拡大術を含む)等の椎弓形成術を受けたもの。

*1 「前方椎体高が著しく減少」とは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さ以上であるもの 

*2 「前方椎体高が減少」とは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であるもの

*3 エックス線写真により、脊柱のカーブの頭側及び尾側においてそれぞれ水平面から最も傾いている脊椎を求め、頭側で最も傾いている脊椎の椎体上縁の延長線と尾側でもっとも傾いている脊椎の椎体の下縁の延長線が交わる角度(側彎度)を測定する方法

②運動障害

 脊柱の運動障害は、脊柱圧迫骨折、脊柱固定術など器質的変化が存在することを前提とします。

 程度によって、6級と8級が該当します。

等級 障害の程度
第6級 脊柱に著しい運動障害を残すもの
第8級 脊柱に運動障害を残すもの

●「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは

  • 頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  • 頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな気質的変化が認められるもの

 のいずれかにより、頚部及び胸腰部が強直したものをいうとされています。

●脊柱に運動障害を残すもの」とは

 (a)下記のいずれかにより、頚部及び胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの

  • 頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  • 頚椎または胸腰対に脊椎固定術が行われたもの
  • 項背(うなじと背中)腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

 (b)頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたもの

◆その他の体幹骨の障害

 その他の体幹骨の後遺障害としては、鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨の変形障害があります。

 骨盤骨には仙骨を含めますが、尾骨については、後遺障害評価の対象とされていません。

 その他の体幹骨の変形障害が認められるためには、「著しい変形障害を残すもの」でなければならず、「著しい変形障害」とは、裸体になったとき、変形が明らかにわかる程度のもので、X線写真で始めて発見できる程度のものは該当しません。

後遺障害等級第12級5号  鎖骨、胸骨、ろく骨、肩甲骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの

肋骨の変形は、その本数、程度、部位等に関係なく、肋骨全体を一つの障害として取り扱います。

9 上肢の障害

◆上肢の障害等級

第1級3号 両上肢をひじ関節以上で失ったもの 
第1級4号 両上肢の用を全廃したもの 
第2級3号 両上肢を手関節以上で失ったもの 
第4級4号 1上肢をひじ関節以上で失ったもの 
第5級4号 1上肢を手関節以上で失ったもの 
第5級6号 1上肢の用を全廃したもの 
第6級6号 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 
第7級9号 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 
第8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 
第8級8号 1上肢に偽関節を残すもの 

第10級10号

1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの 

第12級6号

1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 

第12級8号

長管骨の変形を残すもの 

第14級4号

上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 

◆欠損障害

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかを指します。

  1. 肩関節で肩甲骨と上腕骨が離断したもの
  2. 肩関節と肘関節の間で上肢を切断したもの
  3. 肘関節で上腕骨と撓骨(とうこつ)及び尺骨が離断したもの

 ※撓骨:前腕に存在する管状の長骨のうちの1本。親指側の骨が撓骨。他を尺骨という。

「上肢の用を全廃したもの」とは、3大関節(肩関節、肘関節、手関節)のすべてが強直し、かつ、手指の全部の用を廃したものを言います。

「上肢を手関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかを指します。

  1. 肘関節と手関節の間で上肢を切断したもの
  2. 手関節で撓骨及び尺骨と主根骨が離断したもの

 ※手根骨(しゅこんこつ):手の関節基部を形成する8個の短骨の総称

◆機能障害

 機能障害とは、「上肢の用を廃したもの」「関節の用を廃したもの」「関節の機能に著しい障害を残すもの」「関節の機能に障害を残すもの」をいいます。

「上肢の用を廃したもの」とは、3大関節のすべてが強直し、かつ、手指の全部の用を廃したものをいいます。上腕神経叢の完全麻痺もこれに含まれます。

「関節の用を廃したもの」とは、次のいずれかを指します。

 1.関節が強直したもの

  肩の関節については、肩甲上腕関節(肩甲骨と上腕骨との間の関節)が癒合し骨性強直していることがX線写真により確認できるものを含みます。

 2.関節の完全弛完成麻痺、またはこれに近い状態にあるもの

  ※これに近い状態:他動では稼動するものの、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%以下になったものをいいます。

 3.人工関節・人口骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の2分の1以下に制限されているもの

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかを指します。

 1.関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの

 2.人工関節・人口骨頭を挿入置換した関節のうち、上記3以外のもの

「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されているものをいいます。

◆変形障害

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかを指し、常に硬性補装具を必要とするものです。

  1. 上腕骨の骨幹部又は骨幹端部(以下「骨幹部等」という。)に癒合不全を残すもの
  2. 撓骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもの

  ※骨幹部:管状骨の骨端以外の主要部 「偽関節を残すもの」とは、次のいずれかを指します。

  1. 上腕骨の骨幹部等に癒合不全を残すもので、上記1以外のもの
  2. 撓骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもので、上記2以外のもの
  3. 撓骨又は尺骨のいずれか一方の骨幹部等に癒合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

 ※儀関節とは、一般に、骨折等による骨片間の癒合機転が止まって異常可動を示すものいう。しかしながら、近年においては、例えば、回内、回外運動の改善や手関節の安定を図るため、尺骨の一部を切り離し、尺骨の遠位端を撓骨に固定したり、切離して骨を尺骨の遠位端及び撓骨に固定する「カパンジー法」と呼ばれる手術が行われている。これらは、障害の改善を図るものであることから障害認定においては、カパンジー法による尺骨の一部離断を含め、骨片間の癒合機転が止まって異常可動を示す状態を「癒合不全」とした上で、長官骨の保持性や支持性への影響の程度に応じて等級を認定することとしている。

「長官骨に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものを指します。

 なお、同一の長官骨に以下の1から6の障害を複数残す場合でも、第12級の8に認定されます。

 1.下記のいずれかに該当する場合であって、外部から想見できる程度(15度以上屈曲して不正癒合したもの)以上のもの

   ①上腕骨に変形を残すもの    ②撓骨及び尺骨の両方に変形を残すもの(ただし、撓骨又は尺骨のいずれか一方のみの変形であっても、その程度が著しいものはこれに該当する。)  2.上腕骨、撓骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの  3.撓骨又は尺骨の骨幹部等に癒合不全を残すもので、硬性補装具を必要としないもの  4.上腕骨、撓骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの  5.骨端部を除く上腕骨の直径が2/3以下に、又は撓骨もしくは尺骨(それぞれの骨端部を除く)の直径が1/2以下に減少したもの  6.上腕骨が50度以上外旋又は内旋変形癒合しているもの    この場合、50度以上回旋変形癒合していることは、次のいずれにも該当することを確認することによって判定する。   ①外旋変形癒合にあっては肩関節の内旋が50度を超えて稼動できないこと、また、内旋癒合にあっては肩関節の外旋が10度を超えて稼動できないこと   ②X線写真等により、上腕骨骨幹部の骨折部に回旋変形癒合が明らかに認められること  ※ 上腕骨に一定以上の回旋変形癒合が存する場合には、自然肢位から肘関節90度で、正面から両上肢(両上腕骨の全長)を撮影したX線写真等により、左右の上腕骨の骨頭及び頚部が異なる形状となっていることが確認できること  なお、長官骨の骨折部が良方向に短縮なく癒合している場合は、その部位に肥厚が生じていても長官骨の変形としては取り扱わない。

 

10 手指の障害

◆手指の後遺障害等級

第3級5号 両手の手指の全部を失ったもの
第4級6号 両手の手指の全部の用を廃したもの
第6級8号 1手の5の手指またはおや指含み4の手指を失ったもの 
第7級6号 1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
第7級7号 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの 
第8級3号 1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの 
第8級4号 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの 

第9級12号

1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの 
第9級13号 1手のおや指を含み2の手の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指を用を廃したもの 
第10級7号 1手の親指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの 
第11級8号 1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの 
第12級9号 1手のこ指を失ったもの 
第12級10号 1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの 
第13級6号 1手のこ指の用を廃したもの 
第13級7号 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの 
第14級6号 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 
第14級7号 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 

◆欠損障害

 「手指を失ったもの」とは、母指では指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を失ったものとされていて、次の場合が該当します。

  1. 手指を中手骨(ちゅうしゅこつ)又は基節骨で切断したもの
  2. 近位指節間関節(母指の場合は、指節間関節)で、基節骨と中節骨とを離断したもの

 ※中手骨:手のひらの手根骨と指骨の間にある五本の管状骨

「指骨の一部を失ったもの」とは、1指骨の一部を失っている(遊離骨片(こっぺん)の状態を含む)ことがX線写真等により確認できるものをいいます。(下記の機能障害のうち、「手指の用を廃したもの」を除きます。

◆機能障害

 健側(障害のない側)と患側(障害のある側)の可動域を比較することにより後遺障害の等級が決まります。

 「手指の用を廃したもの」とは、次の場合が該当します。

  ・手指の末節骨の2分の1以上を失ったもの

  ・中手指節関節または近位指節間関節(拇指の場合は指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの

  ・母指の撓側(とうそく)外転又は掌側外転のいずれかが健側の2分の1以下に制限されているもの

  ・手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したもの

 「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」とは、次の場合が該当します。

  ・遠位指節間関節が強直したもの

  ・屈伸筋の損傷等の原因が明らかで、自動で屈伸できないもの又はこれに近い状態にあるもの

 

11 下肢の後遺障害

 下肢の障害については、欠損障害、機能障害、変形障害、短縮障害について、次のとおり等級が定められています。

◆欠損障害

 第1級5号  両下肢を膝関節以上で失ったもの
 第2級4号  両下肢を脚関節以上で失ったもの
 第4級5号  1下肢を膝関節以上で失ったもの
 第4級7号  両足をリスフラン関節以上で失ったもの
 第5級5号  1下肢を足関節以上で失ったもの
 第7級8号  1足をリスフラン関節以上で失ったもの

※「下肢を膝関節以上で失ったもの」:股関節において、寛骨と大腿骨を離断したもの、股関節と膝関節との  間において切断したもの、膝関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したものが該当します。

※「下肢を足関節以上で失ったもの」:膝関節と足関節との間において切断したものと、足関節において、   脛骨及び腓骨と距骨とを離断したものが該当します。

※「リスフラン関節以上で失ったもの」:足根骨において切断したものとリスフラン関節において中足骨と足根  骨とを離断したものが該当します。

◆機能障害

 第1級6号  両下肢の用を全廃したもの
 第5級7号  1下肢の用を全廃したもの
 第6級7号  1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
 第8級7号  1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
 第10級11号  1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
 第12級7号  1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

※「下肢の用を全廃したもの」:3大関節(股関節、膝関節、足関節)のすべてが強直したものをいいます。3大関節が強直したことに加えて、足指全部が強直した場合もこれに含まれます。

※「関節の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

 ①関節が強直したもの

 ②関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの

 ③人工関節・人口骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健康な方と比べての稼動域の1/2以下  に制限されているもの

※「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

 ①関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

 ②人工関節・人口骨頭を挿入置換した関節のうち、「関節の用を廃したもの③」以外のもの

※「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものをいいます。

◆変形障害

 第7級10号  1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
 第8級9号  1下肢に偽関節を残すもの
 第12級8号  長官骨に変形を残すもの

※偽関節:関節がない部分に関節様のものができてしまった症状です。通常の骨折は時間の経過と共に修復機転が進行して治癒しますが、骨癒合プロセスが完全に停止したものです。儀関節に対して、骨癒合プロセスが遅れてはいるが停止していない状態を遷延治癒(せんえんちゆ)と呼びます。

※「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、常に硬性補装具を必要として下記の3つに当てはまる場合です。

  1. 大腿骨の骨幹部に癒合不全を残すもの
  2. 脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもの
  3. 腓骨の骨幹部等に癒合不全を残すもの

※「偽関節を残すもの」とは、上記のうち、常に硬性補装具を必要とするもの以外のものをいいます。

※「長官骨に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。これらの変形が同一の長管骨に複数存する場合もこれに含まれます。

   1. 次のいずれかに該当する場合であって、15度以上屈曲して不正癒合したもの。

   a 大腿骨に変形を残すもの

   b 脛骨に変形を残すもの

    (腓骨のみの変形であっても、その程度が著しい場合にはこれに該当します)

   2. 大腿骨もしくは脛骨の骨端部(こつたんぶ)に癒合不全を残すものまたは腓骨の骨幹部に癒合不全を残すもの

   3. 大腿骨または腓骨の骨端部のほとんどを欠損したもの

   4. 大腿骨または脛骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの

   5. 大腿骨が外旋45度以上または内旋30度以上回旋変形癒合しているもの

◆短縮障害

 第8級5号  1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
 第10級8号  1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
 第13級8号  1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

「下肢の短縮」については、上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)と下腿内果下端間の長さを健側の下肢と比較することによって等級を認定します。

測定に当たっては、事前に両端部に印をつけ、巻尺は屈曲しないように注意します。

12 足指の後遺障害
欠損障害

 5級8号  両足の足指の全部を失ったもの
 8級10号  1足の足指の全部を失ったもの
 9級14号  1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
 10級9号  1足の第1の足指または他の4の足指を失ったもの
 12級11号  1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったものまたは第3の足指以下の3の足指を失ったもの
 13級9号  1足の第3の足指以下の1または2の足指を失ったもの

※「足指を失ったもの」とは、中足指節関節(足の指の付け根にある関節のこと)から失ったものをいいます。

◆機能障害

 7級11号  両足の足指の全部を失ったもの
 9級15号  1足の足指の全部を失ったもの
 11級9号  1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
 12級12号  1足の第1の足指または他の4の足指の用を廃したもの
 13級10号  1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
 14級8号  1足の第3の足指以下の1または2の足指の用を廃したもの

※「足指の用を廃したもの」とは、第1指では、末節骨(指の先のつめのついた部分の骨)関節の2分の1以上、その他の4本の指では、遠位指節間関節(指先の関節)以上を失った場合をいいます。


13 非器質性精神障害(うつ病、PTSD)

 非器質性精神障害とは、脳組織の器質的損傷を伴わない精神障害として、高次脳機能障害や身体性機能障害と区別されます。

非器質性精神障害も後遺障害として認定される可能性があります。

非器質性精神障害が後遺障害として認定されるためには、厚生労働省通達の「障害等級認定基準」に該当する必要があります。

精神障害が発症した場合には、速やかに専門医の治療を受けることが、交通事故との因果関係を判断数るために重要なポイントになります。

該当する等級 認定基準
 第9級10号  通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当程度に制限されるもの
 第12級相当  通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの
 第14級相当  通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの

■うつ病

交通事故が原因で精神状態に変調をきたし、うつ病を発症することがあります。精神科や心療内科に相談してください。

わが身に起こるものとは考えていなかった交通事故というものが我が身に降りかかったとき、大小の違いはあっても、人は衝撃を受けます。何割かの人は深く考え込んでしまってうつ病を発症してしまうのです。

うつ病は加害者にも被害者にも発症する恐れがあります。

現在、うつ病は脳内の神経伝達不足により引き起こされると言われているのにもかかわらず、仮病、詐病を疑われることが多くあります。保険金の支出を抑えようとする保険会社の思惑も見え隠れするのですが、残念でなりません。

■PTSD

心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder)は、死に至るような衝撃的で強烈な恐怖体験をすることで、フラッシュバック等さまざまなストレス障害を引き起こす精神障害のことです。

精神的に崩壊するベトナム戦争の帰還兵が続出したことが社会問題となり、PTSDの研究が進んだといわれています。日本では、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件などで病名が注目されました。

外傷後、数週間〜数ヶ月を経て発症するそうです。

PTSDの判断基準として、世界保健機構の「ICD-10」と、米国精神医学会の「DSM-Ⅳ」があります。「ICD-10]よりも、「DSM-Ⅳ」のほうが、個人的体験によるPTSDの罹患の可能性を認めています。

DSM-Ⅳの診断機銃区機軸は、A=体験、B=再体験、C=逃避状態、D=覚醒状況の異常の4項目に分類されています。

●PTSDの主な症状

①再体験

 フラッシュバック:突然事故の光景がよみがえる。

②回避・麻痺

 回避:被害にあった場所に近づかない。事故の体験を話したがらない。

 麻痺:苦痛に対する防御として、感情や感覚が麻痺し、事故の記憶を一部失う。

③過覚醒

 交感神経が異常に昂ぶり、不眠、イライラ、集中力の低下等の症状が続く。

交通事故によりPTSDの立証できれば、後遺障害が認定される可能性がありますが、自賠責は、PTSDに対して否定的です。

理由は以下の点です。

1 PTSDかどうかの判断の難しさ

2 PTSDと自己の因果関係の立証の難しさ

3 被害者の心因的要因の有無

4 同じような体験をしても、PTSDを発症する人としない人がいる

被害者の性格(ストレスに対する耐性力の強弱)や家族暦などさまざまな素因も影響しますので、後遺障害認定においては難しい問題も抱えています。

次に、交通事故との因果関係を証明する上で最も重要であるのは事故による負傷の程度でしょう。被害者が打撲傷、座骨骨折した事案では「通常よくある交通事故にあったものであり右の恐怖体験(ベトナム戦争での戦闘の体験、バスジャックにあって生き埋めの危険にさらされた子供の体験等)とは同質とはいえないから被害者の症状はPTSDとはいえない」(東京地判 兵背6年7月28日)とされていることに留意する必要があります。

交通事故意外にもPTSDを発症・拡大する要素がなかったかも考慮する必要があります。

損害保険料率算出機構が認定するPTSDの後遺障害等級の多くは12級です。

14 高次脳機能障害

1 総論

2 用語の説明

脳各部の働き

①海馬

主に記憶を作るところです。特に新しい記憶に関係があります。

②頭頂葉

言語による表現、行動、空間認知(どこにいるのかわからない)などに関係があります。

③前頭葉

行動を起こすこと(運動・意思など)に関係があります。

3 立証方法

4 症状

5 各種検査

スペクト検査(単一光子放射型コンピュータ断層撮影)

スペクト検査(SPECT=Single Photon Emissi Computed Tomography)は脳や心臓の血流を調べる検査です。血流が豊富なところは赤く、少ないところは青や黒く写ります。脳の機能が低下すると、血流が低下します。他に、臓器の形、腫瘍の有無などもわかります。

スペクト検査は約40分〜50分、音楽を聴いてゆったり寝ている間に、身体を中心にカメラを回転させて撮影を行い、CTのような断層像を得る静かな検査です。注射の痛み以外は特に痛みはありません。

ごく微量の放射性薬剤を静脈内に少量注射し、その分布の速度や集まり具合を特殊なカメラで撮影します。特殊なカメラで脳の断層撮影をします。放射線物質と聞くと、被爆などを連想する人もいると思いますが、スペクト検査の被爆量はレントゲン検査による被爆量とほぼ同量であり、時間と共に放射能は減り、数時間〜数日でなくなります。心配しすぎないことです。

15 遷延性意識障害

 遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)とは、重度の昏睡状態を指す病状です。

◆定義(日本脳神経外科学会)

  1. 自力移動が不可能である。
  2. 自力摂食が不可能である。
  3. 糞・尿失禁がある。
  4. 声を出しても意味のある発語が全く不可能である。
  5. 簡単な命令にはかろうじて応じることも出来るが、ほとんど意思疎通は不可能である。
  6. 眼球は動いていても認識することは出来ない。

 以上6項目が、治療にもかかわらず3ヶ月以上続いた場合を「植物状態」とみなす。

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