延納制度

延納制度

 相続した財産に現金が少なく不動産が多い場合など、申告期限内に一括納付ができないときに、相続税を分割して(1年に1回)支払うのが「延納制度」です。

延納期間中は利子税(相続財産に不動産が占める割合や延納期間によって、年3.6%〜年6.0%)がかかります。昨今のような低金利時代においては、特例利率が適用されます。

相続税の付帯する加算税、延滞税及び連対納付責任額については、延納の対象にはなりません。

延納できる期間は原則として5年以内ですが、相続財産の中で不動産等(不動産、立木、借地権、同族会社の株式等)の占める割合が大きい場合は、最高20年まで認められます。

延納ができる要件

 ・相続税が10万円を超えること

 ・納期限までに金銭で納付することが困難であること

 ・相続税の納付期限までに、「金銭納付を困難とする理由書」に金額を計算の上、「延納申請書」と共に提出し、担保を提供する(延納税額が100万円未満で、なおかつ、延納期間が3年以下の場合は、担保は必要ありません。

延納することができる金額(延納許可限度額)

 延納許可限度額は、以下の計算式によります。

 延納許可限度額=①納付すべき相続税額−②現金納付額

 ②現金納付額(納期限に金銭で納付することが可能な金額)

  下記のa−b−cで計算します。

  a 納期限において有する財産

   以下の3つの資産を合計したもの

   ・現金

   ・預貯金

   ・その他の換価が容易な財産の価額に相当する金額

    (納税者固有のものも含みます)

  b 申請者および生計を一にする配偶者その他の親族の3ヶ月分の生活費

   「生活費」として認められる1ヶ月の金額は、相続人が10万円、配偶者その他の親族は4万5千円です。

  c 申請者の事業の継続のために当面(1ヶ月分)必要な運転資金(経費等)の額

  上記計算の根拠となった資料等の写しを「金銭納付を困難とする理由書」に添付します。

■延納の許可までの審査期間

 延納申請書が提出されると税務署長は、要件の調査結果に基づいて、延納申請期限から3ヶ月以内に許可または却下されます。なお、延納担保などの状況によっては、許可または却下までの期間を最長で6ヶ月まで延長される場合があります。

■延納の担保

 以下のものに限られています。

 ・国際及び地方債

 ・社債、その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの

 ・土地

 ・建物、立木、登記された船舶等で保険に付したもの

  ※登記された船舶等:登録を受けた回転翼航空機(ヘリコプター、複合ヘリコプター、オートジャロ)、登録を受けた自動車、登記を受けた建設機械を含みます。

  ※建物の保険には、共済を含みますが、月掛の保険や共済は含みません。

  ※建物が火災等で消滅した場合には、税務署の速やかに連絡をするる必要があります。

 ・鉄道財団、工場財団、鉱業財団などの財団

 ・税務署長が確実と認める保証人の保証

 担保に提供することができるのは、相続により取得した財産だけでなく、相続人の固有の財産、第三者または法定代理人等の同意が得られている財産であれば担保として提供することができます。

 延納申請者の提供する担保を、税務署長が適当でないと認めるときは、変更を求めることになります。

■延納の担保に不適格な財産

 1.不動産

  ・担保権が設定されていたり、処分が禁止されている不動産

  ・売却できる見込みがない不動産

  ・抵当権を設定できない不動産

  ・権利の帰属について争いがある不動産

  ・共有不動産で共有者全員から担保も承諾が得られないもの

  ・違法建築、土地の違法利用のため建物除去命令等がされているもの

  ・境界が明らかでない土地

  ・隣接する不動産の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産

  ・他の土地に囲まれて公道に通じない土地で、通行券の内容が明確でないもの

  ・借地権の目的となっている土地で、当該借地権を有するものが不明であることその他これに類する事情があるもの

  ・他の不動産(不動産の上に存する権利を含む)と社会通念上一体として利用されている不動産若しくは利用されるべき不動産または2以上のものの共有に属する不動産

  ・耐用年数を経過している建物

  ・敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産

  ・その管理または処分を行うために要する費用の額が収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産

  ・公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産

  ・引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産

  ・地上権、永小作権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定されている不動産で次に掲げるものがその権利を有しているもの

   ①暴力団員でなくなった日から5年を経過しないもの(以下「暴力団員等」という)

   ②暴力団員等によりその事業活動を支配されている者

   ③法人で暴力団員等を役員とするもの

 2.株式

  ・譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続きが定められている株式で、当該手続が取られていないもの

  ・譲渡制限株式

  ・質権その他の担保権の目的となっている株式

  ・共有に属するもの(共有者全員がその株式について物納の許可を申請する場合を除きます)

  ・暴力団員等によりその事業活動を支配されている株式会社または暴力団員等を役員とする株式会社が発行した株式

 3.上記以外の財産

  ・遺族国庫債券(※)などの国債

   ※国債は一般的に担保になりますが、遺族国庫債券等一部の国債には担保制限があります。

  ・共同相続人の間で所有権の争いがあるもの

■延納のメリット・デメリット

 1.メリット

  ・相続税の納付を年賦で納付することができて、一時に多額の相続税を払わずに済む

  ・不動産を売らないでおくことができる

 2.デメリット

  ・延納期間中は延納税額に利子税(※)がかかる

■延納期間と利子税

 延納期間中は延納税額に対して利子税がかかります。

 延納期間は原則5年ですが、相続財産に占める不動産の価格の割合によって5年、10年、15年、20年に区分されます。

 延納の利子税の割合は、分納の期間の開始の日の属する月の2ヶ月前の月の末日を経過する時の日本銀行が定める基準割引率に4%を加算した割合が年7.3%に満たない場合は、次の算式により計算される割合(特例割合)が適用されます。

 利子税の割合×(日銀が定める基準割引率+4.0%)/7.3%

             (0.1%未満の端数切捨て)

相続財産のうちの不動産の割合 区 分 延納期間(最高) 延納利子税割合(年割合) 特例割合(年割合)
75%以上 ①動産等に係る延納相続税額  10年  5.4%  1.3%
②不動産等にかかる延納相続税額(③を除く)   20年  3.6%  0.8%
③計画伐採立木の割合が20%以上の場合の計画伐採立木にかかる延納相続税額  1.2%  0.2%
50%以上75%未満 ④動産等に係る延納相続税額  10年  5.4%  1.3%
⑤不動産等に係る延納相続税額 (⑥を除く)  15年  3.6%  0.8%
⑥計画伐採立木の割合が20%以上の場合の計画伐採立木にかかる延納相続税額  20年  1.2%  0.2%
50%未満 ⑦一般の延納相続税額(⑧⑨⑩を除く)  5年  6.0%  1.4%
⑧立木の割合が30%を超える場合の立木にかかる延納相続税額(⑩を除く)  4.8%  1.1%
⑨特別緑地保全地区等内の土地に係る延納相続税額  4.2%  1.0%
⑩計画伐採立木の割合が20%以上の場合の計画伐採立木にかかる延納相続税額  1.2%  0.2%

※平成28年1月1日現在の「延納特例基準割合1.8%」で計算されています(国税庁ホームページより)。「援農特例基準割合」の変更があった場合には、上の表の「特例割合」も変わります。

※延納税額が150万円未満の場合(上記②、③及び⑥に該当する場合は200万円)は、「延納税額÷10万円」で算出される数字が延納期間となります。

延納利息が多額になる場合は、金融機関での借り換えも検討すべきです。

■特定物納制度(延納から物納への変更)

 延納の許可を受けた相続税について、その後の資力の変化等により、に延納条件に基づいて納付することが困難となった場合には、申告期限から10年以内で支払い期限が過ぎていない分に限り、分納期限が未到来の税額部分について、延納から物納への変更を行うことができます。

財産の収納価額は特定物納申請時点のものとなります。特定物納許可後には物納の撤回はできません。

申請は、特定物納申請書と、物納手続き関係書類を所轄の税務署長に提出することで行われ、3ヶ月以内に可否が判断されます。

特定物納が許可された場合、物納許可税額に対して、特定物納申請日前の分納期限の翌日から特定物納許可に係る納付があったものとされる日までの期間について、当初の延納条件による利子税を納付する必要があります。

物納制度と特定物納制度の相違点

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